へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

江戸時代からのライバルって…

2011-08-05 12:28:27 | へちま細太郎

こんちは、へちま細太郎です。

一昨日から奥八慈温泉に来ている。
2泊3日の予定が、まったくのびっちりの作業ばっかりで、のんびりも受験勉強もできない。
着いた早々、ヤンキー副住職はやくざもどきの風貌をさらけ出して、周辺のゴミ拾いや草むしりに追い立てた。
「何で僕がこんなことを…」
といいつつも、麦わら帽子に首タオルの作業着姿に地下足袋を履いた水嶋先輩は、どこでこのスタイルを用意できたんだかぜつみょうに似合っていた。
しかし、それでもナルシストぶりを発揮しながらも手際のいい草むしりをする。
「まったく、おめえはよ、正直に告白したら農家の後継ぎだって」
「豚も飼ってますっていえよ」
「庭に鶏も放し飼いにしていますっていえよ」
「GWは田植えで忙しいです」
「夏休みは自然農法のアヒルの世話も忙しいです」
(仮)有岡軍団さんたちに冷やかされながらも、まったく意に介さず、わざと麦わら帽子をさりげなくあげて汗を拭く。
「そんなチャチャを入れている暇があったら、自分の分をきれいにしたらどうだ。ぼくなんか終わっちゃうけどな」
が、そんな中で(仮)有岡軍団Aさんが、
「そんなセリフは俺の手際の良さをみてからいえ、美都地区一の豪農の俺にかなうわけがないだろ」
と、同じく麦わら半分の後ろは布という、農業スタイルばっちりの麦わら帽子をかぶったスタイルだけど、首に巻いた手ぬぐいで汗をごしごしとぬぐった。
「ふん、タオルだなんて、農業スタイルに反しているぞ」
「何をいっているんだ、こちらの方が汗をぬぐいやすいんだ」
聞いているぼくらは唖然。
最初冷やかしていたほかの(仮)有岡軍団さんも呆然。
「美都地区第2位の豪農の水嶋家をなめんなよ」
「ハン、先祖代々の恨み」
「江戸時代からのライバル」
…………。
本日はここまでにいたしとうございまする。


負けたとは言わない根性

2011-08-04 08:48:52 | へちま細太郎

鳥羽伏見でござる…。
誰だと聞かれても、困るがな。

それがしのご先祖さまである、通称関ヶ原のおじさん殿と、常々鎧かぶと殿がうらやましゅうてかなわぬと話しておったところ、
「ひとつわれらも楽しみなどもとうではないか」
と、遠きじじ殿の関ヶ原殿が申すので、それではと校内をさまよっておるうちに、何やらタコ壺のあたりが騒々しい。
「借金抱えて自己破産
「株主総会で文句を言われたくせに何をいっとんだ」
「老害じじいがいなくてええやないか、公平やで」
「かわいそうになあ、ぼくのところはそんな心配ないし」
ああ、これはいつもの東京乳酸菌と新聞と鉄道会社の三つ巴の口合戦であるな。
「やかましいわい
おお、これはマリをすりこぎでうっては走り、という一人以外は走らなくていいという、楽しき合戦のことである。
「うん、これはよいかもしれぬ」
「そうでござるな」
というわけで、匿名希望の東山にくっついて三連戦とやらを見に行くことにしたのだ。
「くたばれくたばれジャイアンツ
「地獄におちろ、ジャイアンツ
ここでも、口合戦である。
「ジャイアンツとは何でござるかの」
「敵陣のことでござるかの」
「くたばれ~ゴミ売」
ほええ、なんというヤジであるかの。
そろそろ戦も終盤を迎えたころであるか、カ・ッキーンというよき音がし、矢のような球が観客席に飛び込んだ。
あ~
東京どうむとやらがすさまじい歓声で崩壊すると思うたが、しかしこれは鉄道会社が負けたということらしい。
「負けやないで、ホームラン打たしてやったんや、気の毒やろ、借金かさんでな」
何をいっているのかさっぱりわからぬが、こういうことらしい。
ゴミ売り・・・あ、いや負けが込むと「借金生活」というロクでもない表現をする苦しい戦運びをしているじゃいあんつとやらに、要するに虎模様の陣が勝ちを譲ってやったということらしい。
あっぱれなり、敵に塩を送るとは、見上げた根性なり。
しかし、それにしてもの、負けは負けなのであるが、こういう面白き表現をして次の戦に備えるとは、よき心構えと申すものだの~。
面白いので、明日も見に参ろう。
しかし…
くたばれ読売とはよにもすさまじき口合戦だの~。
ほ~ほっほっほっ


水嶋先輩がやってきた

2011-08-03 22:59:08 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

荷物はコンパクトにまとめてこその、できる男。
ぼくとたかのりたち5人は、先輩たちに引き連れられて、
「いやあ、すまんね、ぼっちゃんたち」
と、奥八慈温泉のご主人が運転するマイクロバスに詰め込まれて、2台連なって須庭寺を出発した。
マイクロの後ろからは、750ccバイクにまたがった副住職さんがついてきた。
「やくざみてえだなあ」
スキンヘッドにグラサンに皮ジャン姿は、どうみても僧侶には見えない。
「まあ、もともとがもともとだけにねえ」
一番後ろの座席の背もたれに前足をかけてリカは伸び上って外の景色を見ていた。
「シャカイは元気か」
子犬はいつの間にかシャカイという名前で呼ばれていて、(仮)有岡軍団さんのひざに乗って爆睡中。
「センスのないネーミングだ」
どうしてだかついてきた水嶋先輩が、相変わらずのイケメンぶりを発揮して飽きれた視線をぼくに向けた。
「先輩たちが勝手につけたんだよ」
文句を言うと、
「ま、そういうことにしておこう」
あ~、この人が浪人中だなんていうことも、ファッションのひとつみたいだ。
「ところで、温泉に行って何をするのかな」
知らねえでついてきたのかよ。
「犬の散歩だけではないことは確かだねえ」
ぼっつりつぶやき、ため息をついたが、どうもこの人は間が抜けている。でも、この間の抜けたところも魅力なんだけど。
そのうちバスの中でカラオケ大会が始まり、
「ギザギザハートの子守歌歌いま~す」
と、水嶋先輩は、おどけた声でノリノリ。
「いいぞ~」
「例のやれ~」
「キャンたまぶくろが延びすぎてえ15で地面に~♪」
げっ
水嶋先輩くらい、顔と中身が違う人はいないだろうな~。


須庭寺の集会

2011-08-02 12:35:31 | へちま細太郎

こんちは、へちま細太郎です。

昨日やってきた子犬を囲んで全員が腕組みしては首をひねる。
「やっぱ、田吾作だろ」
「いや、ここは一発“犬”」
「なんの芸もねえな」
「芸は、お手とお座りさえできればいいの」
「若干ずれてね?」
「社会」
「はい?」
「リカだから次は社会」
「ああ、それ悪くないね」
「英語もなんだし、国語もなんだし、算数・数学もちょっとねえ」
「社会かあ」
「美術や家庭科っていうのも…」
「体育がねえじゃねえか」
「社会はごろがいい」
ぼくは、須庭寺の本堂の縁側に転がって、惰眠中。
子犬は、リカや須庭寺に集まってきた(仮)山下軍団さん、(仮)有岡軍団さんたちに囲まれて尻尾を振って愛想を振りまいている。
「しかしよ~、ここのヤンキー副住職、いつまでこき使うわけ?」
「しょうがねえよな、あいつの族仲間は、いまだ震災の建て直しやらで忙しいみてえで」
孝太郎さんは、全員から一万円を徴収して、
「おまえらわりいな」
「いいって、奥八慈温泉は世話になっている」
「1泊2食付きで2泊で1万円は、安すぎだよ」
「昼は、魚でバーベキューなあ」
と、ここで僕は孝太郎さんに思いっきり蹴飛ばされ、
「ただで泊まらしてやるから、おめえらも来い」
と、有無を言わさず命令された。
「え~!!」
リカと子犬は大喜びだ。何なんだ。


8月になった

2011-08-01 15:44:08 | へちま細太郎

暑中、お見舞い申し上げます。
へちま細太郎です。

夏休み前の猛暑もなんのその、涼しさ百倍、被害増大な夏休みになってしまった。
福島や新潟の人たちは地震や放射能、津波に洪水と水害や放射能の影響で、大変だなあとのんきな日々を過ごしている僕は、対岸の火事に見えてしまう。
ところが、遠い親戚には被災した人もいるし、山奥の実家に避難してきた人も大勢いる。
ほんとは、とても他人ごとではないのだ。
ましてや、奥八慈温泉は毎年お世話になっているだけに、閑古鳥の鳴くような経営状態にけっこう悲しい思いもしている。
バカ野郎、いまさら放射能がなんだってんだ、反対するなら電気消しちまえ、とぼくは思う。
でもさ、なんだかんだいっても人間って、便利なように便利なようにって科学技術も発展してきているけどさ、ほんとは窮屈な生活を強いられているんじゃないかと思っている。
今までだって、水力も火力も発電してきて成り立っているんだから、元に戻せばあ、と思うんだよな。
ま、決めるのは今の大人たちなんだろうけど、責任もって橋渡しをしてくれよなあ、とうちわを片手に机にへばりつく僕。
う~ん、、、高校はとりあえず県立を第一志望にして、落ちたら孟宗でもいいや、と最近は高を括り始めた。
美都第一高も余裕だと思うんだよね、県下ではトップの高校だけど、孟宗の中学でトップクラスだと余裕だっていうし。。。
一応、藤川先生や広之おにいちゃんの母校でもあるし、受けてみっかなあと思う。
あ、おとうさんは国立大学の付属高校だよ、何なのそこまでいって、高校の事務のおじさんじゃ割に合わない。
う、扇風機からの風が途絶えた、なんだよ~、と振り返ったら1階から上がってきたリカが陣取っていた。
「げ」
ぼくは、どうしてだ?なんなんだよ、と1階におりてみたら、もう1頭犬がいた。
「何これ」
ぼくは小さくじゃれつく子犬から上手に逃げながらおばあちゃんを探すと、
「誰かうちに捨てていったから、飼うわ」
と、返事が返ってきた。
「ひえええええ」
悲鳴を上げれば、ミッフィーがもふもふとなんのこっちゃという表情をして、エサを食べていた。
暑苦しい~。。。