へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

京さん、大いに泣く

2011-08-25 02:45:51 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

今日は、いつも通りに須庭寺の境内でリカとシャカイが駆け回り、ぼくは線香臭い中で座禅。
後ろには副住職さんが警策を持ってうろうろ。
毎朝来るように、と副住職さんの命令で、ぼくたちは座禅を組まされているんだけど、他のやつらは来なくなってしまった。
で、ぼくと藤川先生だけが毎朝こうして座禅会。
と、本堂の前の階段のところで激しく泣く声。
あの声は…。
ぼくは振り向きたい気満々だったけど、その気配を察知した副住職さんはぴたりと警策を肩にあててきた。
ひええええ。
ぱしいいいいいんっと、肩を打つ音が響き渡る。当然、ぼくの痛い音だ。
「ひどいわあ、裏切り男の息子がまさか宗家に出入りしているなんて知らなかったわよおおおお」
裏切り男?息子?
「最近、よく出入りしとるぞ、サッカー部員と友達らしくてな。孝太郎と並ぶとどっちがイケメンだかわからん」
住職様の声だ。
「イケメンはわかっているわよお。彼だって、息子に負けないくらいのイケメンだったからよおおおお」
「もう20年も前の話じゃろうが、忘れとらんのか」
「他に恋したら忘れてたわよおおお。じじいどもがよってたかって、私を寺なんかに押し込めるからよおおおお」
尼御前様こと藤川京さんが得度した理由は、失恋だったんだっけ。そうか、相手は水嶋先輩のおとうさんだったのか。
水嶋先輩のおうちに、婿養子に入ったんだ、京さんを捨てて…。
複雑だなあ。。。
と、思ったらまた肩に警策が…。
「聞き耳を立ててるんじゃない」
という凄みのある声が聞こえてきたと思ったら、
ぱしいいいいいいいいんっ
痛ええええよ