へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

水嶋先輩と京さんの関係って?

2011-08-24 02:05:46 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

藤川家の本家は、浪人したサッカー部員の修行の場なんだけど、今年も(仮)有岡軍団さん数名が、ご隠居さんまにしごかれつつ、実孝さんに勉強を教わっていた。
実孝さんは、なんと京都大学の出身らしい。
でもって、なぜか水嶋先輩までこのメンバーに加わって、
「俺も京大に入って“鴨川ホルモー”しちゃおうかな」
と、堂に入った農業スタイルでとうもろこしの取り入れをしていた。
「よせよ、そこまでデキはよくねえだろ」
「おめえがいいのは顔だけだろ」
「失敬な、これでも悠樹先輩の後輩になれそうだぐらいの成績はとれている」
ぼくは、たまたま藤川先生のおともで、大おばあさまに会いにきて先輩たちのこの和やかな光景を目にした。
「すっかり板についているよね。先輩たち、このまま藤川農園に就職しちゃったりして」
「どうもそうなりそうな気配だなあ」
とうもろこしを抱えた先輩たちを、茶室から眺めているとそこへ尼御前さまがやってきた。
「大おばあさまのご機嫌伺いに」
と、普段とは打って変わっての慇懃無礼ぶりをみせている。
「大おばあさまは特別な存在だからな」
藤川先生はウィンクする。
ぼくもうなづいた。だって、このやんごとない血筋のたおやかなおばあさまは、絶対に汚いものを見せちゃいけない気がするんだよね。
「大おばあさん、かぼちゃ似たのをもらってきたから一緒にお茶しようよ」
先輩たちは、ナベを抱えて茶室に前にやってきた。
「あらあら、ずいぶんたくさん似たのね。阿部さんのかぼちゃの煮物は絶品なのよ」
阿部さんと聞いてぼくは、いきなりおなかがいっぱいになった。
先輩たちを眺めていた尼御前さまの表情が、水嶋先輩に視線が止まった瞬間一変した。
気づいたぼくは、面識もないのに変だなあと思った。
「あら、水嶋さんはあんまり日に焼けていませんねえ」
大おばあさまはくすりと笑い、
「こいつ、日焼け止め塗っているんですよ」
「顔が命だし」
「ナルシストだし」
という、先輩たちの言葉に爆笑した。
大おばあさまは、サッカー部の先輩たちにも人気があった。
「水嶋さんは、お宅も農家だし、そのうちそんなことも気にならなくなりますよ」
「若いうちだけですよ~。俺は、うちのおやじのように婿養子のくせに農業もできないやつにはなりたくないもんで」
「水嶋家の婿養子だって~?」
と、尼御前さまが素っ頓狂な声を張り上げた。
「なんだなんだ?」
当の水嶋先輩も(仮)有岡軍団さんたちもびっくりして、尼御前さまを見つめた。
「何、どしたの?」
藤川先生もあぜん。
いったい、なんなんだ?