へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

オレ、何かしたか?

2022-01-18 12:16:17 | へちま細太郎

細太郎です。

はるみは、無言でテーブルにどんぶりをどんと音を立てて置いた。おれとたかのりとたかひろは、やっぱり無言でどんぶりを見た。うまそうな…
「なんだよ~これっつ!!」
おれは、思わずどんぶりを指さしてはるみに怒鳴った。
「ごはんの上におかゆのっけんなよ」
「『究極超人あ~る』を読んでたら出てきたのよぉ~おかゆライス~」
「あのなあ」
はるみはにこやかに言うが目が笑っていない。
「あ、でも、七草かゆっぽいし、ね?味ついていそうだし…」
場をとりなそうとするも、はるみは笑っていない目で、
「でしょう?昨日、お餅たべたんでしょう?もたれちゃって大変よね?」
「うっ」
誰だよ、こいつに昨日のことチクったのは。
「聞いたのよ~、鈴木涼子子持ちで嫁いびりされているんだって?そういえばさあ、よしこちゃんたちに聞いたのよ~、すごい噂になってたって~。私たち情報おそくなあい?孟宗に進学したの間違ってたかしら~」
「だからあ、何で怒ってんだよ!昔のことじゃないか!」
「むかし~?その割には、後ろ姿目で追ってたじゃないの!!」
「そんなことしたかよ!」
「してたっ!!」
「してねえ」
俺たちは、たかひろたちの前だってことを忘れて言い争い。何で、俺がりょうこちゃんの後ろ姿を追ってたんだよ、してねえよって、してたか?
たかひろとたかのりは、交互におれとはるみを目でおいつつ、
「これ、食わねえと怒られっかな」
「食っちゃおう、まずくてもうまいって言おうぜ」
とこそこそ言っている。
「無理して食べなくたっていいわよっ!!」
それに気づいたはるみがふたりを怒鳴りつけ、
「私はぁ~あんたとぉ~鈴木涼子がぁどんな関係だったかんてぇ気にしてないからぁ~許せないのはぁ~目で追ったって事実なのよぉ~まだぁ気があるんじゃないのぉ」
「ねえよっ!!あいつは俺がいながらきょうすけに心変わりしたんだっ!!許せっかよ、バカ!!おまえだって秀にいちゃんに気があったろおがあ!!」
と言ったところで、しまった!と思った。おめえやべえぞ、とたかのりが視線で訴えている。たかひろは、救いようがねえという表情を浮かべていた。
「はあ?誰が滝沢先輩に気が合ったって言ったのよ!」
「だって、お、おまえ、秀兄ちゃんが好きでチアに入ったんだろ~が!おまえ、それで性格よくなって…」
オレ、何を言い始めたんだ?
ん?という表情をたかひろがした。眉をあげたのはたかのり。
「おまえみたいな、性悪女、俺がつきあわなきゃ誰がつきあうんだよ~、それが秀兄ちゃんに矯正されてさあ、こんな悔しい思いしたの、初めてだぞ」
「あ?」
「なんだ、それ」
ふたりが呆れたようにつぶやいている。
「何言ってんのよっ!!バカじゃないの!!」
「うるさい!!俺は、おまえと結婚しようってそう思ってつきあって…」
一瞬沈黙がした。はるみが無表情になっている。
「悪趣味」
たかひろがつぶやいた。
「昔だったらそうだ」
たかのりがそれに答えた。
「で、バカだ、こいつは」
たかひろの言葉に、はっとなる俺。
頭まっしろ…
そしてはるみが動いた。
「ばかああああああああああ」
と同時にどんぶりが顔面にはりついた。
「細太郎君なんて、大っ嫌い!!」
おれ、何かしたか?
「したよ」
呆れたようなたかひろの声が、聞こえてきた。
「つくづく救いようがねえな」
「うん」

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