へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

カラスにごちそうさんと言われた

2018-03-13 11:15:35 | へちま細太郎

お久しぶり、父のピカイチです。

さて、進級がかかるこの季節、私立の学校は授業料が完納しないとどんなに成績がよくても進級は認められません。
そんなわけで、学園総合事務局勤務にして課長を拝命しているわたくしめの仕事は、中学・高校・大学の各生徒・学生たちの授業料の総チェックを、各学校の事務へと通達しに回るということだ。
要するに愛車のチャリで学園内を、自力で回るということで、課長とは名ばかりのしょうもない仕事なんだな、これが。
そこで、昼飯を外で食べようと、ちょうどよい時間帯にチャリを走らせ、大学グラウンドの階段のところで一休みしようと考えた。中学、高校と回り、タコ壺に顔を出したまではよかった。そこから中島教授の温室に、むちゃぶりな請求書をよこしたので一言文句を言いに立ち寄ったのがよくなかった。チャリの荷台に備え付けてある書類入れの箱にお弁当を書類ケースとともに入れておいた。そこから書類ケースを取り出し、ふたを閉めずにそのままにしておいたんだ。
「わしは学部長だああああ」
という怒号を粉砕し、外へ出てきて気が付いた。
箱に弁当が入っていない。
「え?」
と確かに入れたよな、と周囲をきょろきょろと見まわしたが、弁当の影も形もない。
そこへ、納得のいかない教授が追いかけてきたが、自分の様子を見て不審に思ったのか、
「どうしたんだ?」
とたずねてきた。
「あ、いや、弁当が…」
「弁当?弁当でどうするつもりだったんだ?何?外でピクニック?」
と、上を見上げ、
「おのれは、バカか?こんなところに弁当をそのまま野ざらしにしておくやつがおるか」
と言い木の上を指さした。
「あ?」
と、憎たらしい杉の木の上を見上げれば、ひらひらと俺の弁当を包んでいた布切れが落ちてくる。
次にはし箱と弁当箱のふたがどこんと落ちてくる。
木の枝には数羽のカラスが止まっており、かあかあかあかあと勝ち誇ったように鳴いているじゃないか。そのうちの一羽が気が付いて、
「かっ」
とバカにしたように鳴いた。
「なんだあ?」
と叫べば、カラスが寄ってたかって俺の弁当と思しき箱にくちばしをつつきこんで何やら食っている。
「ああああああああ!」
俺の叫び声に、
「毎年いるんだ、こういうバカが。。。何年ここに勤めているんだ、ボケが」
カラスが飛んできた。
またカラスが飛んできた。
一羽、二羽と飛んできた。
「俺の弁当がああああ」
かあかあかあかあ、かあかあかあかあ。
あ~、うるせえうるせええ!
俺の脇で教授が馬鹿笑いしている。俺は、カラスにむかって届かない石を投げつけるだけ。
そのうち、食い終わったのかカラスが一斉にとび立ち、そのうちの一羽が足に弁当を持ち、俺の頭めがけて落としてきた。
「ぶわっはっはっはっはっは!」
教授が大爆笑して、
「ここまでやられたドアホはおまえだけだ、ざまあみやがれ」
と、むせながら俺にむかって毒づいてきた。
「くっそおおおおお」
「金なんぞ、出すか~!」
「へっ、そんなことしたら、今のこと全部振れまわってやるからな、覚悟しとけ!」
「ああ、やれるもんならやってみろ」
と、中島教授の温室の前で、大変な目にあってしまったというしょうもない俺だった。
と、話はここで済んでしまえばよかったんだがよ、嵐1号が全部動画でとっていやがって、タコ壺で大鑑賞会が開かれてしまい、怒りのあまりいつになく目が充血してしまった。
カラスの野郎!!


コメント
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