へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

副住職、百合絵さんにパンチをくらう

2016-02-16 21:31:35 | へちま細太郎

 

またも、副住職だ。

布川のやつに、
「ところで先輩、うちに帰って娘さんたちの看病しないんですか?」
と言われ、のんきにコーヒー飲んでいたせいで、何できたのか忘れてしまったのを思い出した。
あのハゲ散らかしなんかこなきゃ、とっとと帰っていたのに…。
と、医局を飛び出し、愛車にまたがり須庭寺に向かい猛スピードでバイクを走らせた。
途中、パトカーに捕まったが、
「なんだ、おまえか」
と、交通課に巣くっている万年巡査に呆れられた。
「万年じゃない、俺は警部補だ、ばかたれ。おまえこそいい年して何やってんだ、ボーズだろうが」
と、さらに頭をぽかりとやられた。
「娘が心配なのはわかるが、事故ったら元も子もない」
といいながら、交通切符を渡してきた。
「相変わらず、読めねえ字だな」
ミミズののたくったような字が、懐かしくもある。
「安全運転で帰れよ、自分の葬式はあげられんぞ」
余計なことを…。
自宅に着き、慌てふためいて娘の部屋に飛び込み、寝ているここみとここあの肩を揺さぶる。
「しぬんじゃないぞ~、俺が代わりになるからなあ」
あんまり大声で喚いたもんだから、娘たちが目をさまし、こともあろうに悲鳴をあげ、黙って入ってきたもんだから、ことみのやつにぐーぱんちをくらった。
「何しに帰ってきたのよっ
「やかましいわっ心配だからにきまってるからだろっ
「心配してもらわなくて結構よっ
ことみのキンキン声がますます娘たちに恐怖を募らせたか、二人はふらふらになりながら部屋を飛び出していってしまった。
「あ」
慌てて追いかけようとしたら、
「お二人ともいけません」
と、のんびりした百合絵さんの声が聞こえた。
「二人が心配…」
と、いった瞬間、顔面に衝撃が走り、目から火花が散った。
「おわああ~」
左頬を押さえてうずくまると、
「病人を前にして、何をしているのっ
と怒鳴りつけられた。うずくまった目の前に聖書があった。
「神の前に、ざんげしなさい」
げっ。背後にことみが口を押さえて立ちすくんでいる気配を感じ、百合絵さんの後ろにくそじじいがやはり立ち尽くしていて、こうつぶやいく声が聞こえた。
「死んだばあさん、そっくりだ」
あ~、そ~かよっ

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俺はこれでもモテるんだ

2016-02-16 17:32:37 | へちま細太郎

副住職だ。

病院にいる布川から、娘たちがインフルエンザにかかったのに、先輩がこないなんて珍しいですねえ。。。と、電話がきた。
「なに~?」
俺は、愛車をかっ飛ばして病院にかけつけた。
「バカですか?入院するわけないじゃないですか」
「バカ野郎!!治るまで入院させろ!!万が一なんかあったらどうするんだ!!責任とれるのか!!」
「だあから、そこまで重症じゃないし、ことみさんも百合絵さんもいるから大丈夫じゃないですか。百合絵さんて、ああみえて、看護師の資格持っているらしいですよ。百合絵さん、修道院で子供たちの面倒をみていたから、混雑する病院の廊下もてきぱきとやってくれて、実に助かりましたよ」
あの百合絵さんが?普段は、ぽ~っとしていて何を考えているんだかわからんお姫様なのに?
「先輩、悪い癖ですよ、人を外見で判断しちゃ」
布川の野郎、エラそうに俺に説教かます気か。
と、そこへ、ハゲ散らかしたキモイ白衣の男がやってきた。
こいつは、この病院の中の医者でも、キモすぎて40過ぎても独身だ。女性看護師にもモテないし、患者にも避けられている。
「おや、これはこれは副住職、何しにきた?」
誰に対してもエラそうなタメ口なのも、嫌われる理由だ。
「俺はおまえに用事はない」
「義理チョコのおこぼれをもらいにきたのかと思ったね。期待しちゃだめ、ここの看護婦は、ケチだから」
何言ってんだ、コイツ…。
布川も口をきく気もなそうそうで、けっという表情で飴を2個も口に放り込んだ。いざとなったら、飴でごまかす気とみた。
それでもおかまいなしに、キモ男は、
「日曜日にわざわざ出勤してやったのに、誰も何にも言わねえし。義理でもくれるだろう、ふつう。。。他の科の机の上にはこれ見よがしにチョコがあって、何で外科にはないんだ?」
いや、あんたの机の上だけだろう。
「おかしいだろう?なんでくれねえんだ?」
いや、あんただからだろう。。。
「で、俺が何かいいかけると、避けるんだよね。たぶん、足りなくなってバツが悪くなったのかね」
俺も、布川もあぜん。。。
キモ男はぶつくさ文句をいいながら、どっかいっちまった。
「いや、なんだ、あれは…」
「毎年ですよ。鏡みたことないんですかね」
「あそこまでハゲ散らかして、顔も不気味なやつ、他にはいねえし、あれで医者っていうことだけが取り柄なんだろうが…」
「あの人ねえ、登録しているみたいだけど、医者だっていうだけで申し込みが殺到しているみたいで、みんなあの顔とハゲ散らかした頭で逃げていくみたいですよ」
俺は布川を見て、
「何で知ってんの」
と聞いたところ、
「ゾクのホレ、左官やって会社作って仕事しまくりで会社大きくしたやついたでしょ?あいつ、結婚するのも忘れて彼女作るのもそっちのけで、親の介護もして一人きりになっちゃって、自分で探すのもめんどくさいからって、結婚相談みたいなところに登録したら、あいつがいたわけよ」
と、笑いながら話している。
「ああ、田中か、で、あいつ、相手見つかったのか?」
「そっこ~で見つかりましたよ。ブサメンだけど、誠実が服きて歩いているようなやつじゃないですか。結婚決まりそうだって、連絡来ましたよ」
「そうか、よかったな」
同じような不細工でも、内面次第でこうも違うのかね?
「あら?副住職さんじゃないですか?ちょうどよかった、お茶の時間ですけど、あまったチョコで悪いんですけど、どうぞ」
と、若い看護師が顔を出して、チョコの箱を差し出してきた。
「コーヒーもありますよ」
う、最近、若い女の声をきいていないから、嬉し…いや、華やかな気分だ。
と、そこにさっきのバカが顔を出し、
「あ、チョコ」
と言うなり手を伸ばしてきたが、
「もうありません」
と言いわれてやんの。
「あ、なんだそれ」
キモ男は、怒り狂うも、それっきり看護師は顔を見せなかった。
さもありなんだな。


 

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