へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

京(みやこ)、タコ壺にあらわる

2010-04-20 23:19:30 | へちま細太郎
藤川京さんは、一応お姫様である。
若いころ婚約者に捨てられ、生きるの死ぬのと大騒ぎをして、周囲を慌てさせた。が、本家の隠居が尼寺でもあるもと山荘の管理をせよ、と強引に出家をさせてしまった。
京が修業から戻った時には、さらにヤンキーの弟も隠居と住職に騙され、入れ替わるように修業へとかりだされていった。
ところで、二人には姉がいた。姉はミッション系の学校に幼稚園から通学し、まさしく、「ごきげんよう」を地で行く生活を送っていたのだ。
「一応ね、私も、学生のころは、十字をきってたのよ~」
タコ壺保健室に不似合いな墨染めの衣の尼御前が、5年ものの梅酒を飲んで笑っていた。
「何しにきたんだよ」
俺に露骨に嫌な視線を向けられても、
「呼び出されたんだよ」
と、まだ居座る不気味な小百合を指した。
「何で」
「さあ」
何でこんな意味不明な人間をどんな理由で呼び出したんだ。
というわけで、タコ壺の主も俺も、とんでもない客に深いため息をついたのであった。
みんなの藤川でしたあ~。