へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

今年の藤川先生

2010-01-04 23:16:13 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。
藤川先生が帰ってきた。
「う~ん」
剛おにいちゃんが唸った。
「あんた、ほんとミーハーヤンキー直んないね」
「志は高く持たんといかんぜよ」
羽織り袴に革靴の藤川先生は、大河ドラマ影響のようで、右手は懐に差し込んだまま怪しげな土佐弁を喋っている。
「確か年末は伊予松山だったような気がする…」
ぼくは“坂の上の雲”のガイドブックを取り出してみせた。
「土佐も伊予も同じ四国じゃけぇのぉ」
って、広島弁入ってない?
懲りてないなあ。剛おにいちゃんは、
「まあバカ殿らしくていいんじゃない」
と、あくびをしてボリボリとお尻をかいた。
「結婚したら、そんなかっこできないねえ」
「独身最後の正月だから好きにさせてくれ」
と、今度は鼻くそをほじくる。
「何っ、結婚?」
藤川先生が寝転がる剛おにいちゃんのそばに座り込んだ。
「いつどこでみつけたんだ」
「見つかる時には見つかるんだよ」
剛おにいちゃんは勝ち誇った表情で藤川先生を見上げた。
「くそ~っ」
藤川先生は勢いよく立ち上がり、
「日本の夜明けは近いぜよ」
と、わけのわからないことを叫び、
「何で俺が結婚できないんだあっ」
と、今度はまた力なく座り込んだ。
これだもん、みつかりっこないよな。
ぼくは、ガイドブックをめくって、本木雅弘の写真にウィンクした。