へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

アルカサル

2007-10-17 23:15:49 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

うちへ帰ってきたらおばあちゃんが、ぐすぐす泣きながらマンガを読んでいました。
 「どうしたの?」
ふだん涙なんか見せないおばあちゃんが泣いているので心配になって聞くと、
「何でもないの、お話に感動して泣いているの」
と言いました。 おばあちゃんが感動して泣くなんて、どんなマンガなんだろう。
「スペインという国は知っているよね」
「うん」
「その国は、もともとカスティリアとアラゴンという2つの国だったのね」
「うん」
「そのカスティリアという国に14世紀にペドロ1世…マンガではドン・ペドロ1世と読んでいるんだけど、その王さまの短いけど波乱に満ちた人生を描いているの」
「どんな王さま?」
「残念ながら日本ではあまり資料がないんだけどね、この作者はスペインまで調べに行ってきちんと描いているんだよ」
ぼくは、パラパラとマンガをめくってみましたけど、ぼくがみるような絵じゃないから難しいです。
「ドン・ペドロはお母さんの違うお兄さんがいて、そのお兄さんは国王になる資格がなかったけど、お父さんにはとてもかわいがられていたのね。だけど、ドン・ペドロはお父さんにはかわいがってはもらえなかったけど、国王になる資格はちゃんと持っていて、お父さんが死んでしまったことから兄弟同士で、国王の座をめぐって争いが始まったんだよ」
「ふうん」
「ドン・ペドロは国王としては、どうなのかな、いい王さまだったのかどうかはわからなかったけど、国のためには敵が勝つことを望むような人だった、と書いてあるよ」
ぼくは、だんだん難しくなってきたので、どう返事をしていいかわからなくなりました。
夜になって藤川先生が帰ってきて質問してみると、
「ああ、青池保子の“アルカサル…王城”だね。俺も好きだなあ、このドン・ペドロ」
と、すぐ話題にのってくれました。
こんなところが、藤川先生を好きな理由なんだな。
「簡単に言うとな、“潔い”んだ。悪ければ悪いといい、正しいと信じればそれを貫く。戦争ばかりして裏切り者には容赦なく、逆に信じればとことん信じる。国王としてはどうというよりも、男として好きだ、こういうやつは」
藤川先生は自信をもって教えてくれました。
「そうかあ」
ぼくは半分はわかったような気がしました。
と、その時、マンガを読んでいたけんちゃん先生が、
「いいなあ、このドン・ペドロの娘、殺された父親の名誉を回復して、なおかつ父の敵の子供と和解をするんだから」
と、感慨深そうに感想を述べました。
「やっぱ、上にたつ人間はこうじゃないとな。やっぱり立派な国王なんじゃないのか?娘みりゃわかるよな」
「うんうん」
2人は頷きあっていました。
そうかあ、“潔いかあ”…。
でもぼくは、その言葉の意味を理解できるほど、まだまだ大人じゃありません。
いつになったら、おとなになるんだろう。

コメント
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