Sちゃん(小4):
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の オープニングの曲を、発表会での演奏曲に決めて練習しています。
冒頭の、山々にこだまするホルンの響きから 徐々に拡がってくるアルプスの風景・・・
そして流れ出す、マリアの歌うメインテーマとそれに重なるエコー。
今 練習しているのは、この辺りです。
「私、今日、ちょっとアレンジしてきました。先生に言われてない弾き方なんだけど」
楽譜を譜面台に置いたSちゃんは 生真面目に言いました。
「そうなの?じゃ、それ、弾いてみて」
重々しくうなずいたSちゃんの演奏を聴いてみたところ、とくに音やリズムが変わったり、別な音が加わったりしてはいないようです。
「なるほど・・・で、どこをアレンジしたの?」
と聞いてみると、Sちゃんはもう一度「その部分」を弾いて、言いました。
「このところで・・・こういうふうに、だんだん強くしてみたの」
なあんだ。クレッシェンドして弾いてみたってことなんだ。
「ああ、そうなのね。いいじゃない?そのほうが、ずっとよくなったね」
Sちゃんは、満足そうにうなずきました。
「じゃ、もう一度、初めから弾いてみて・・・だけど、音、ずいぶん飛ばしてたよ。ほら、ここのところ、メロディーの下に、もう一つ音が入ってるでしょ。ここも。それから、ここは、こう指を置き換えて、そして余った指で、こっちの音を弾く」
「ああー、そうだった。でも難しい~」
「そりゃそうさ。大人の楽譜だもん」
「えー」
「子ども用の『小学生のためのやさしいピアノ』とかの楽譜じゃないんだからね。子どもが弾きやすいように、音を減らしてあげましょうとか、指がうごきやすいように 音を変えておきましょうとか、そういう気配りは一切ないから」
先生は、そう言ってSちゃんを脅しつつ 実は彼女のプライドをくすぐっています。
「見てわかるように、これは大人のための、ほら、歌詞だって英語で書いてあるでしょ。映画の曲を、そのまま楽譜にしたものだから。指の都合は一切考えてないよ。音の都合だけ。きれいな音を、きれいに再現することへの配慮しかないからね。だからオクターブだって、複雑な和音だって、平気でいっぱい出てくるからね、言っとくけど」
「大人のなんだー」
「そうさ。だからそのつもりで!」
「はあーい」
さあ、たっぷりプライドをくすぐってあげたSちゃん、来週、大人っぽくがんばってくるかな?
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の オープニングの曲を、発表会での演奏曲に決めて練習しています。
冒頭の、山々にこだまするホルンの響きから 徐々に拡がってくるアルプスの風景・・・
そして流れ出す、マリアの歌うメインテーマとそれに重なるエコー。
今 練習しているのは、この辺りです。
「私、今日、ちょっとアレンジしてきました。先生に言われてない弾き方なんだけど」
楽譜を譜面台に置いたSちゃんは 生真面目に言いました。
「そうなの?じゃ、それ、弾いてみて」
重々しくうなずいたSちゃんの演奏を聴いてみたところ、とくに音やリズムが変わったり、別な音が加わったりしてはいないようです。
「なるほど・・・で、どこをアレンジしたの?」
と聞いてみると、Sちゃんはもう一度「その部分」を弾いて、言いました。
「このところで・・・こういうふうに、だんだん強くしてみたの」
なあんだ。クレッシェンドして弾いてみたってことなんだ。
「ああ、そうなのね。いいじゃない?そのほうが、ずっとよくなったね」
Sちゃんは、満足そうにうなずきました。
「じゃ、もう一度、初めから弾いてみて・・・だけど、音、ずいぶん飛ばしてたよ。ほら、ここのところ、メロディーの下に、もう一つ音が入ってるでしょ。ここも。それから、ここは、こう指を置き換えて、そして余った指で、こっちの音を弾く」
「ああー、そうだった。でも難しい~」
「そりゃそうさ。大人の楽譜だもん」
「えー」
「子ども用の『小学生のためのやさしいピアノ』とかの楽譜じゃないんだからね。子どもが弾きやすいように、音を減らしてあげましょうとか、指がうごきやすいように 音を変えておきましょうとか、そういう気配りは一切ないから」
先生は、そう言ってSちゃんを脅しつつ 実は彼女のプライドをくすぐっています。
「見てわかるように、これは大人のための、ほら、歌詞だって英語で書いてあるでしょ。映画の曲を、そのまま楽譜にしたものだから。指の都合は一切考えてないよ。音の都合だけ。きれいな音を、きれいに再現することへの配慮しかないからね。だからオクターブだって、複雑な和音だって、平気でいっぱい出てくるからね、言っとくけど」
「大人のなんだー」
「そうさ。だからそのつもりで!」
「はあーい」
さあ、たっぷりプライドをくすぐってあげたSちゃん、来週、大人っぽくがんばってくるかな?