マイクロソフト日本法人代表執行役の樋口泰行さんの著。
氏のキャリアとしては、マイクロソフトや前々職の日本HP社長のものよりも、前職のダイエー社長としてのものが有名で、私もその時代に氏の存在を知りました。
産業再生機構や投資ファンドに請われ、ダイエーの社長に就任したものの、再生機構の方向転換による丸紅との方針の違いもあり、志半ばでダイエーを去られた方です。
私は、氏の松下電器、ボストンコンサルティング、アップル、コンパック(後にHP)という華々しいキャリアや、ハーバードでのMBA取得という肩書きよりも『現場重視』の姿勢に強く感銘を受けています。
何よりも、ダイエーの社長在職中にすべての店長と直接対話を行い、閉鎖店舗を回り、社員・パート全員に自らの言葉で問いかけ、説明を行うという姿勢が強く印象に残りました。
今の日本のリーダに欠けているのは、簡単でいて一番難しい、現場を知るということだと思っています。
そんな中、この連休を利用して、ダイエー時代の氏の経験とそこから得た教訓をつづった本書を読みました。
率直な本書の感想としては、「物足りない」「残念」というものでした。
導入部はダイエー再生に足を踏み入れる前後の熱い想いが伝わって来ましたが、途中からはGMSの置かれている現状の解説書、変革者の指南書的趣向が強い気がします。
もっと、ダイエー再建に傾けた情熱と悪戦苦闘ぶりを期待していただけに、ちょっと残念でした。
とはいえ、(キャリアもレベルも能力も違いますが)新しい道に踏み出す時の葛藤という意味では、自分に当てはまる部分も多く、また日ごろ思っている「自分は変人である」という思いが本書のタイトルや主旨ともダブっており、背中を押してくれた気がしました。
リーダーシップ論としてではでなく、人生論として読めた1冊でした。
『よく知人などから「なぜつらい道をあえて選ぶのか?」と聞かれることがある。ダイエーに行ったのもそうだし、閉鎖店舗を回ったのもその1つだろう。その理由は、私自身が天邪鬼ということもあるが、苦しみを乗り越えた先に必ず報酬が待っていると信じているからである。もちろんそれは金銭的な報酬ではなく、きわめて精神的なものである。』
私ですか?
私は金銭的な報酬も欲しいです。もちろん。
でも、一時的なものならいりません。仕事だけではなく、人間関係や人生そのものもそうですね。