1週間以上前のことで恐縮ですが
アメリカ大統領選挙があり、ご存じの通り、トランプが勝ちました。
候補者の双方にいやな汚点・欠点があり、これが原因で投票を棄権した人もいるらしく、残念ながら消去法という低レベルの大統領選挙となりました。
共和党のトランプは
既成政治家に失望した多くの有権者の支持を受けましたが、いかんせん、暴言・失言の満載、人格的な問題があったのかも知れません。
民主党のクリントンは
従来の路線から軌道を修正して若干有利とみられましたが、従来の政治家タイプの例に漏れずウソが目立ったのでしょうか。
この結果
アメリカの選挙民は、暴言・失言を許容し、ウソにうんざりし、共和党員が民主党候補者へ投票した例もあるようでしたが、それ以上に民主党支持者が共和党候補者へ投票したようです。
この結果、トランプが選挙人の過半数270を越えて、新大統領に選ばれました。実際の就任は2ヶ月後になる見込みです。
2016/11/16現在の開票結果では、MI(ミシガン:選挙人16)の未開票を残してはいますが、トランプ290・クリントン232となっています。:NHK集計
余談ですが(あんたの話はすべて余談ぢゃ)、2桁の州略号MI(ミシガン:Michigan)は紛らわしく、MO(ミズーリ:Missouri)、MN(ミネソタ:Minnesota)などと区別しにくいですね、どうでもいいことですが・・・・・・
それよりも選挙後1週間も経過するのに未集計の州があること自体がアヤシい!
またMLB球団などの略号もあるし、国の略号もISOとIOCでは異なるようですから、困ったものですね(笑)。
おもしろいけれども複雑なのが「選挙人」というアメリカの制度でした。
州として誰を選ぶかにこだわっていて、実際の投票で少しでも上回ったほうが、全国の有権者数の比率で割り当てられた選挙人なるものをすべて獲得する、という「総取り制度」になっているようです。
「自分の州は、これこれの党を支持する」、と明確に主張したいので「総取り」としたのでしょう。
ただしアメリカ全体としてはこれを人口比で決めざるを得ず、そのためその「選挙人」数を人口比率できめたのです。
この結果、州ごとに選挙人を総取りし、国全体としては選挙人の多さで当選者を決めることになりました。
その仕組みからして
獲得した選挙人の数が、必ずしも得票数と一致するとは限らない
という事態は、常に想定されていました。
今回は
あくまでも数学的なシミュレーションで、そういう事態を再現しようとしました。
この結果、私の手法ではかなりの確率(10%以上)で、両者が一致しないことを見つけました。
ただし80~90%は「獲得した選挙人の数の大小が、獲得した得票数の大小に一致しています」が、10~20%程度で「逆の事態」がおこった、ということです。「常に一致しない」ということではないことを、事前にご了解下さい。
いくつかその例をみましょうか。
まずは実際の選挙結果から〔ただしMI(16)のみ未開票〕
出典:
http://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/
これに計算を少し加えたのが上の表です。
獲得した選挙人の数ではトランプが過半数を超えていますが、アメリカ全体の有権者の得票数からすれば、僅かにクリントンが上回っています。
ただしニューヨーク・タイムズによれば
Popular Vote As of Wednesday, Nov. 16.
For Clinton 50.4% 61.8 million
For Trump 49.6% 60.8 million
===========================================
0.8% 1.0 million
としており、NHK報道による私の計算結果と若干異なっております。
また時事通信でもこれと同じで
敗者が100万票以上リードしていて、「大統領選挙人制度の見直しを求める声が出ている」としています。
次に私のシミュレーション結果
選挙人の獲得数と実際の得票数が、A候補とB候補で
一致する場合を2例
一致しない例を1例
あげています。
上の表についての補足は次の通りです。
- 4州の人口を、勝手に私が決めました。全体が3億人になったのに特別な意味はありません。
- 選挙人定数が500なのに、なぜ有権者数に比例した選挙人の合計495と一致しないかと言えば、それは選挙人の比例割り当てで、計算上の誤差があったからです。厳密に人口比で選挙人を割り当てることは、選挙人の数をもっと増やさない限り、できそうにありません。
- 網かけ部分の実際の投票数を乱数で決めており、ExcelではF9で再計算(再度乱数を発生)させることができます。
試行回数ですが
F9を50回押したとき「得票数が選挙人と不一致」となったのは12回、つまり24%の確率で「選挙人の数の大小が得票数の大小と一致しない」事が分りました。
別の施行では50回のうち6回、つまり12%の確率で「選挙人の数の大小が得票数の大小と一致しない」事が分りました。
大ざっぱな結論ですが、
1~2割程度の確率で、選挙人数ではある党が優勢なのに、得票数では別の党が優勢
ということがあるようです。
どうやらこれは、アメリカの大統領選挙制度がもつ根本的な宿命のようです。
興味をもったかたは、ぜひとも似たようなシミュレーションをしてみて下さい。
なぜもうちょっと早く公表しなかったのかというお叱りがありそうです。たしかに早めに完成しておりましたが、そのほかにやるべきことが多すぎたため、選挙後10日近くも経過してからの発表となりました。遅くなっても~しわけごぜーませんですだ(笑)。
これについて
時事通信の伝える「民主党内では、選挙結果は民意を反映していないと批判し、大統領選挙人制度の見直しを求める声が出ている」には、負けたからと言ってそんなことを言うのだろう、という冷静な反応を私は示しておきます。
そんなのは、制度そのものから分っていたのですね。
これを機会に「どうすればよいか」をよく考えることでしょう。
これに関連しますが、先にイギリスで国民投票(2016/06/23)があり
イギリス全体の票集計でEU離脱が決まった
のですが
スコットランドとしては「EU残留」へ投票した人が多かったとのこと
これらにみられる共通点は
アメリカ大統領選挙では、州ごとの選挙人獲得ではトランプが勝ったが、アメリカ全体の票ではトランプは負けた
イギリスの「EU離脱か残留か」の国民投票では、スコットランドは国として残留を選ぶ人が多かったが、スコットランドが属するイギリス全体ではEU離脱が多かったため、スコットランドの意に反してEU離脱となった。
このため前に行なった「スコットランドはイギリスに残留すべきか独立すべきか」という住民投票〔2014/09/18〕は、イギリスがEUに残留するという前提で行なわれており、結果的にイギリス残留が決まった〔55%-45%で残留〕が、イギリスがEUを離脱するというのなら再度住民投票をすべきである
ことに見られます。
これについての私の見解は次のようなものです。
アメリカの大統領選挙で
総得票でトランプが負けたのだから選挙のやり直しだというのは論外。今回の選挙を認めて、冷静に「制度の見直し」に着手するのがよい。
イギリスの場合
国民投票〔2016/06/23〕では、イギリス全体では52%-48%でEU離脱になったのですが、スコットランドではEU残留を希望した方が多かった、と言います。
一方その2年ほど前のスコットランド住民投票〔2014年9月18日〕では55%-45%でイギリス残留が決まったようです。しかしこれも細かく見るとスコットランド内のある州では独立派が多かったかも知れず、州ごとのアメリカ大統領選挙の時のような選挙人形式にしたいのでしょうか。そんなことをするとますます混迷を極めるはずです。
つまり
アメリカの大統領選挙の場合、選挙人という複雑で問題のある方式をやめ、アメリカ全体の得票で決めるべき。←別に反トランプでも反クリントンでもありません。
イギリスの場合、イングランドやスコットランドといった国の連合というものに、そもそもの原因があり、これを解決するほうが先決。もし今のままを続けるならば、イギリス全体の得票で決める今の方式に賛成する。←別に反イギリス(イングランド)でもないし反スコットランドでもありません。
ということにしておきます(笑)。
さてさて、皆様はどう思われましたか。