中東・中近東という地域に限らず
さまざまな国や民族の栄枯盛衰が繰り返され、それぞれが欲望と不満をかかえています。
資源などの地理上の条件、歴史形態、宗教や縄張り意識がからんでくると、現在の国家形態が妥当かどうかさえ言えなくなります。
もしも「相互の依存と協力の中で全体の繁栄を図る」とする秩序しかない
と思う人が圧倒的に多くても、必ず出てくる異論をもつ人たちの心ない攻撃からその方向を守らねばならず、そしてその守りの姿勢が間違いなく「一部の人たちの独断」を生んでしまい、異論・批判→強硬な反論→暴動・反乱→無差別テロ、へと発展してゆきます。これが人類の歴史でした。この発展の経過が、現在の姿でもあるのでしょう。
閉ざされた「国」という社会の中で行なわれる「自国中心の歴史教育」が、徐々にその姿を変えていかねば、この対立は延々と続き、「相互の依存と協力の中で全体の繁栄を図る」ことは夢物語のまま終わってしまいそうです。
現在の混迷する世界情勢を理解するに、この地域への理解が欠かせなくなった、くらいなら、そう言えると思われます。
ここでは便宜的な日本語として「中東」と称することにします。
「似ているようにみえ、異質な部分もある」というイスラム教とキリスト教の対立に、混迷の原点があるのでしょうか。
過激派が、驚くほど増えましたね。いま多くの場合、「イスラム過激派」と称されます。
このイスラム教とキリスト教の対立は
- そうとう昔からあったのでしょうが、ちょっと前までは、それよりも深刻で世界を二分していた「米ソ」の冷戦というのがあったため、宗教対立が見えなくなってしまい、地下に潜ってしまいました。そういえば「米ソ」両国とも、その程度に差こそされ、キリスト教一派だと言えますが、例によって互いにぬぐえない不信感がありました。
- この冷戦対立が終焉を迎え、ようやくまともな国際環境になるのではないかという安堵感があったのも束の間、今度は蝶番(ちょうつがい)がはずれてしまった時のように、音を立てて「無理があった秩序」が崩れてゆきました。これを鎮圧しようとする試みが、さらに破壊を招き、今やどこで自爆テロがおこるか分らない時代となりました。
- アフガニスタンやイラクでの紛争、さらにはアラブの春以降、シリアの内戦を経て、対立はより激しく進化しています。
こう見てくると
- 現在の混迷を鎮めるために「テロ」対策さえすればいい、というわけでもないことがわかりますが
- しかし、本格的な世界秩序をどう構築するかの検討と同時に、当面のテロ対策も進めなければならない
ようです。
いまEUが大問題をかかえています。
アメリカへの一極集中を避ける意味で、苦労の末に統合し、なおかつまだくすぶり続けるEUですが、なんのことはない、EUが域内の問題を解決しようとすると、EUの利益だけしか追求できなくなり、その結果、いま不遇の状態にあると認識したイスラム圏の中から、陰湿な超過激派が生まれた、とも言えます。
欧米諸国の中には、まだまだ「植民地」意識が、どこかに残っていて、自分たちだけが「選ばれた国」であると見る癖が抜けないようです。
もちろん、すべてのイスラム教徒が危険ではありません。
それまでも激情的なカトリック信者やキリスト教徒一派、仏教集団、ヒンドゥー教徒が見られました。
そういう意味では、どんな宗教であれ、どこかに必ず
「結束」を口実とした「過激さ」
が潜んでいます。「自分だけに正義がある」と思い込む過激な信念でした。
これはどんな国でも見られる
「愛国」を口実とした「過激さ」
にも共通しています。日本近辺を見渡せば、すぐに分りますね。
そしてやっかいなことに
この「過激さ」を忌避する「無抵抗主義」「軍備なき平和」が、周辺で弾圧国家を生む原因となる
ことが多いのでした。
つまり
A国が「結束とか愛国」を捨てて過激になるのを止めると、必ず近隣に「結束とか愛国」でもって弾圧するB国が台頭するもので、まるで自国が軍事的に「有利になった」かのように勘違いし、その軍事力でA国の周辺領土を奪い、攻撃し始める
ということです。
こういうとき、B国は「A国を解放」してあげた、と言うのですが、その実体が「占領」なのはもう衆知のことでした。中国のチベット占領、ロシアのウクライナ領クリミア半島占領、のことを思い出しましょう。
こういうことがあるため、国は「非武装中立」をいやがり、「武装中立」さえも、強力な警察や軍隊を有するコスタリカやスイスなどの例外だけとなり、普通はどこかの軍事同盟に入りたくなる、というわけです。
そうなんです
同じキリスト教圏でも、米ソ〔今では米露〕間のぬぐいがたい不信感から対立が続いています。ですから兄弟宗教とはいえユダヤ教・キリスト教・イスラム教の関係になると、もっと根深い対立があるでしょうし、そこに仏教やヒンドゥー教などが加わると、もうわけがわからなくなります。
人の「心のよりどころ」となるはずの
「宗教」に金と権力がからんでくると、もう手が付けられなくなる
という見本でした。
さてここでは、よく目にするイスラム教の過激集団を集めてみました。
繰り返しますが、かれらによって「まともなイスラム教徒」が迷惑をしている一面もあることを、知っておきたいものです。別に取りあげたからといって、私がこれらの一派を徹底的に排除しようとしているのではなく、もしも本当に危険な組織ならば、言論でもってその根絶に協力したい、と思っています。
以下は
よく話題になるイスラム教の、過激派・原理主義者・ジハード主義者・テロ集団・解放戦線などのうち、思いついたものだけを取りあげました。詳しくは、まだまとまりが見られないものの、こちらをどうぞ。
なお
これらの組織間では、互いに対立することもあれば提携することもあり、問答無用の過激さもみられ、しかも異教徒のみならず、同宗教なのに同調しない穏健派を攻撃することもあるため、この組織間の関係さの度合いについて、いまのところ私は、理解していません。
IS(イスラミック・ステート)
ご存じ、シリアとイラクの国境付近で「勝手に国家を樹立」した超過激派組織で、残酷な斬首(ざんしゅ)の動画をインターネットで流すことで知られています。
今や、難民が流れ込む欧米やロシアを含む各国がシリアやイラクでIS空爆を実施しており、ISの本拠地はシリア・イラクから、さらに東へ移動するものと思われます。
似ていますが、ISSとは「国際宇宙ステーション(International Space Station)」のことであり、ISとはまったく関連がありませんので、お間違えないように。←誰がまちがうというの?
ハマース(パレスチナのガザ地区)
かなり危険な暴力的組織だとみている国もあります。
ヒズボラ(レバノン)
ヒズボラがシリアのアサド政権を支援しているので、シリアとイスラエルの爆撃合戦〔産経新聞 2015.8.21〕が起こっています。シリアにイスラエルまでが関係してくると、複雑な関係が一層わからなくなります。
ボコ・ハラム(ナイジェリア)
200人以上の女子生徒を拉致したことで知られました。
クルド・ヒズボラ(トルコ)
他国によって勝手に「国のないクルド人」とされた人たちについて知ることが、知恵の輪の輪郭を知ることになるかも。
クルド人は、前からトルコ国内でトルコと対立してきましたが、ISとも敵対しています。またトルコはISとも敵対しています。
最近トルコが空爆したのは、①シリアのIS基地、②イラクのクルド人拠点、とのこと。
一方、アメリカなどはISと戦うクルド人を援護しているらしい。
トルコとアメリカは、同盟関係であるにもかかわらず、対クルド人では逆の対応をしていることになります。もちろんこれらは、外から見た場合の無責任な断定的な見方に過ぎず、実際には同じ名前でも実際には別組織なのかも知れず、またこれらの連携・対立構造は、時々刻々変わる可能性があります。
トルコ・クルド人・アメリカ・シリア・IS・イスラエル・レバノンなどの関係は、もう複雑すぎて私の理解のレベルをはるかに超えています(笑)。
アルカーイダ(多国)
ここから分派・分裂した組織もあるようです。
タリバーン(パキスタン・アフガニスタン)
かなり前に大きく扱われ、今では縮小されているように見えますが、まだ安心できません。
モロ(フィリピン)
分裂しており、一部はフィリピン政府と和解か。
武装イスラム集団(アルジェリア)
軍との対立があり、かなり暴力的。
アル・シャバブ(ソマリア)
海賊との関係など不透明な点が。
カフカース首長国(ロシアのチェチェン)
ロシア国内で数々のテロを実施しているもよう。
これらを見ていると
- 治安の悪い国では、必ず国軍との対立が問題になる。
- たとえ同じ名前で、かつて共闘していた事実があっても、何かのきっかけですぐに離反する世界ですから、今では関連がないこともあり注意したいものです。
- イスラム過激派と称されるものの、イスラム教とはなんら関係がない場合があります。いわばイスラム教の名前で暴力を正当化しようとしていますが、イスラム教徒はもっと声を上げるべきでしょう。
- 多くの場合イスラム過激派は、反政府的な暴力に走りがちで、これは非イスラム圏の国がイスラム教徒を弾圧支配している場合に、より顕著です。
さて、あと10年くらいでは、イスラム教の問題は解決しそうにありませんが、どうしたらいいでしょうか。
まずは私たちが詳しく知ることから始めるしかありません。それが遠回りのようで、案外近道なのかも知れませんから。
その意味で、イスラム過激派をまとめてみたのには、ほんの少しでも意義があろうかと思うのです。たとえまちがった解釈があったとしても・・・・・・。