軍事も金融も「従中」一直線
真田:今回のスワップ交渉開始の合意は「米国の圧力の結果」と見る人がいます。
しかし、米国が2008年、2011年と同様、今度も日韓スワップを認めるかは分かりません。
韓国の対中接近に不信感を強めているからです。
鈴置:朴槿恵大統領は2015年9月、北京・天安門での軍事パレードを参観しました。
「西側」トップとしてほぼ唯一でした。南シナ海の問題でもオバマ大統領の要請を無視し、中国批判に加わりませんでした。
真田:金融面の対中接近も露骨です。
米国が加盟するなと言ったAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加した。その無格付けの債券も引き受けました。
韓国政府は人民元建ての国債も発行しました。いずれも人民元の国際化への援護射撃です。
米国の金融関係者は「韓国の裏切り」をちゃんと覚えています(「『トランプからの請求書』は日本に回せ」参照)。
鈴置:米国は韓国の態度を見定めてから日本の対韓援助に許可を出してきました。
1997年の危機の際、日銀が韓銀の要請に応えスワップを付けようとした。でも、米国はそれを止めました。
真田:米銀がとっくに逃げ出した後、邦銀は最後まで韓国にドルを供給していました。それも米国はやめさせました。
「危機に陥った韓国は国際通貨基金(IMF)の手で手術する」と米国が決めたからです。
日韓スワップは「米韓」の問題でもあるのです(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。
イラン原油は人民元で決済
鈴置:1992年、当時の金泳三(キム・ヨンサム)政権は中国と国交を樹立。
それだけなら良かったのですが、軍事的にも中国と急接近しました。
1995年前後には「米国や日本の軍事機密が韓国経由で中国に渡っている。
『韓国には気を付けろ』と米国が日本に注意喚起してきた」との情報が永田町や市ヶ谷で流れました。
そして1997年、韓国が通貨危機に陥った際、米国は予想外のことに「韓国を助けるな。IMFに行かせろ」と日本に命じたのです。
真田:韓国の軍事的な離反を米国は決して許しません。
だから今回の日韓スワップを米国がすんなり認めるか、私には疑問なのです。
鈴置:米韓関係は1997年当時の状況と似ています。
真田:ただ、世界における人民元の影響力が危険水域に入ったと米国が判断すれば、話は変わってきます。
ドルの影響力を維持するため米国は「日韓」を含むドルスワップを積極的に認めるかもしれません。
イランが中国向け原油輸出で人民元を決済通貨に使う方向です。
中国がイランに対し「原油を買ってやる。代わりに人民元を使え」と要求したためです。
この点にも大いに注目すべきです。米国はドル支配を揺るがす国とは徹底的に戦います。