選挙の敗北でレームダック状況の朴政権の今後を考える~反北、反日がさらに激化か
しかし、その2年弱の任期で「歴史的業績」をあげるには非常に大きいハンディとなる選挙での与党の大敗でした。
最低限、現状維持、できれば少なくとも過半数の議席を得るというのが「歴史的業績」の条件でもありました。
与党セヌリ党から公認を得ることができず無所属で立候補し当選した議員のなかから7人が復党。
それを足しても、130議席に届かない状態です。完全な大敗です。
朴大統領が目指したのは以下のものと言えます。
1.経済大国としての発展
2.生活大国としての発展
3.中国との関係強化
4.北朝鮮への太陽政策からの新たな展開
5.反日政策
6.アメリカと距離を置いた関係
このほとんどがうまくいっていません。
1と2はセットといっていいでしょう。
韓国のこの20年の発展はすばらしいものでした。
1988年にソウルオリンピックを開催した頃は、まだ非常に不安定な国というイメージでした。
1990年代に入り、徐々に経済発展の速度をあげ、アジア通貨危機などを経験するものの、低迷する日本を尻目に、韓国は奇跡の経済発展を実現しました。
しかし、この経済発展は、海外からの投資をもとに比較的安かった労働力と相対的に高いレベルの人材能力・技術力で成し遂げたものでした。
自己資金比率は低く、いわばバブル経済的な側面もありました。
円高ウォン安という状況もプラスに働きました。
ちょうど、朴政権に入った頃に歪みが問題化したとえいます。
労働力も高くなり、強い労働組合との関係もあり、企業は不況に適応ささせることが困難になりました。
安い中国製品と技術力の日本製品との間で、厳しい状況に置かれつつあります。
企業の多くにかつての勢いがなくなり、日本が経験した「失われた20年」をこれから経験するのではないかと言われる状態になっています。
中国との関係強化は、朴政権の目玉とも言えました。
経済発展も中国との関係から伸ばそうという意図がありました。
しかし、肝心の中国経済が低迷しはじめ、中国への傾倒はむしろマイナスの部分が大きくなりつつあります。
北朝鮮をめぐっては中国の方針とずれる部分も出てきました。蜜月時代が終わりつつあると言っていい状態です。
北朝鮮に対しては太陽政策的な宥和外交を行ってきました。
「信頼のプロセス政策」という朴大統領の北朝鮮外交は、南北の対話と信頼をベースにするものでした。
しかし、朴大統領の期待を裏切るような形で金正恩第一書記は核実験やミサイル実験を実行します。
そして朴大統領を敵視するメッセージを出し始めます。
結局、宥和路線は頓挫します。
朴大統領は南北対話において歴史的な成果をつくろうとしたと思われますが、これはほぼ失敗です。
相手が悪かったといえるでしょうか。
反日政策はほぼ一貫していました。
中国の反日と歩調を合わせるような形で、いわゆる「歴史問題」や慰安婦問題で日本を攻め続けました。
国際的にも日本への批判を公言しました。
これは韓国にとっても日本にとってもナイーブな問題です。
簡単に解決する問題ではありません。
この反日政策が長引くと、さすがに日本は韓国に距離を置くようになり、企業も撤退し始めます。
政冷経熱といわれましたが、政治の冷え込みも長期に渡ると、経済にも影響します。
ワールドカップを共催し、日本では韓流ブームまで起きた頃が思い出せないくらいの変わりようです。
しかし、この状態からの脱却として安倍首相と朴大統領は慰安婦問題で合意を交わしました。
ただこれも思ったようには進んでいません。
中国寄りの外交は、アメリカからの不信も引き起こします。
アメリカにとって韓国は米韓相互防衛条約を持つ米韓同盟の関係のはずです。
将来の敵国ともなりうる中国との関係を強めることは、アメリカにとっても好ましいものではありません。
歴史的にも朝鮮半島は中国の支配下にあった時もあります。朴大統領の中国に傾倒する外交は見直しを迫られました。
いうならば、すべての方向がうまくいかないか、根本的な見直しを迫られています。
残された時間は2年弱。しかも来年には大統領選が本格化しますから思い切ったことはできません。
そこに今回の選挙での敗北。しかしせっかくの大統領のポジションですから歴史的な業績は築きたいはずです。
できることはかなり狭まりました。経済政策でまとまった政策は打ち出せないでしょう。
さらに混迷すると考えられます。
できるとすれば外交です。しかし、建設的なことは今のレームダック状況ではできません。
そうなると私は、北朝鮮への厳しい外交政策と日本への厳しい外交政策の可能性が高くなったのではないかと思います。
徹底的に金正恩第一書記と安倍首相を批判し、韓国の愛国心を沸き立たせるという方向です。
残された2年間は思い通りには政策展開はできません。
建設的な政策ではなく、破壊的な政策しかできないのではないかと危惧します。
何も大したことをせずに、フェードアウトするという性格でもなさそうです。
破壊的政策が韓国をさらに追い詰めることに繋がらないことを祈ります。
できれば最後に建設的な政策展開ができればいいのですが。。。
最後の花道は冬季オリンピックです。
今の状況だとこれにも黄色信号は点っています。花道となるかどうか、です。