平成太平記

日常の出来事を書く

朴大統領の支持率低下~袋小路に入り込んだ朴政権

2016年09月06日 17時24分44秒 | Weblog

朴大統領の支持率低下~袋小路に入り込んだ朴政権

「ハンギョレ」(日本版8月27日)が世論調査専門会社の韓国ギャラップが公開した世論調査の結果を報道している。

韓国ギャラップの「資料によると、

23~25日、全国の成人男女1001人を対象にした電話アンケート調査(信頼水準95%、標本誤差プラスマイナス3.1%ポイント)では朴大統領の職務遂行を肯定的に評価した回答者は全体の30%で、先週より3%ポイント下落」している。

朴大統領の任期は2018年2月までで残りは1年半になった。

朴大統領が就任してからしばらくの間は、親中反日路線を明確にして、国民からの支持率もかなり高いものがあった。

2014年のセウォル号転覆事故くらいから朴大統領支持率は下降傾向にあるが、最近は経済の低迷、THAADをめぐる中国との関係悪化、北朝鮮からの挑発などがあり、さらに低迷傾向にある。

国民のムードを変えうるリオ・オリンピックでも期待通りのメダル獲得とはならなかった。

韓国は夏季オリンピックでは最近は好成績を続けてきていて、日本のメダル数を引き離していたが、リオでは日本のメダル数を下回った。

経済低迷など複合的要因から韓国に不満が充満しつつあるのは確かだ。

韓国は地政学上、非常に微妙な場所に位置している。

中国、北朝鮮、日本、ロシアに取り囲まれている状態だ。

これにアメリカが加わる。国の勢いがあるときにはこれはプラスに働き、こうした国々すべてと関係を持てるというメリットを得る。

しかし、状況が悪循環してくると、どの国についても批判される非常に難しい選択を迫られることになる。

朝鮮戦争はまさにこの典型的なもので、中国、ロシア、アメリカが覇権をめぐって激しく対立し、結局、朝鮮半島は分断され、さらに複雑な国際関係になった。

少し話は外れるが、トルコも地政学的に似たところがある。

イスラム圏、ヨーロッパ、ロシア、アメリカのいずれとも関係を持つことができることはいい時にはプラスだが、状況が緊迫するとどちらを向いていいいのかわからなくなる。

現在、韓国を取り巻く環境は厳しいものがある。

国際関係的に孤立化が進んでいる。

朴大統領就任直後は、太陽政策的アプローチで南北関係の改善が期待されたが、最近では北朝鮮の威嚇は激化しつつある。

核弾頭やミサイル開発などがどんどんと進んでいる。

通常兵器であれば韓国の優位は不動だ。

技術的にも南北格差は広がり、「北の遠吠え」の感覚でいたのが、核弾頭技術やミサイル技術がここまで改善されてくると本格的な脅威に変わりつつある。

「ソウルを火の海にする」というプロパガンダを笑って済ませるわけにはいかなくなった。

親中路線にも陰りがみえる。

朴大統領の親中路線は経済的面が優先されたもので、もともと対北朝鮮対策としてはかなり無理があるものだった。

アメリカは北朝鮮と対立しており、その背後の中国とも潜在的には対立関係である。

韓国は安全保障の視点から明確な「味方」がわからなくなってしまった。

THAAD配備の混乱がこの状況を象徴的に表している。

中国が猛反対し、中国との関係が危うくなる一方で、アメリカも親中路線をとってきた韓国を完全にサポートするわけではない。

日本とは反日政策から関係は悪化したままだ。

ロシアは北朝鮮との関係もあり、韓国とは距離がある。

日本を除くすべての国とうまくやっている」と思っていたのが「日本を含むすべての国とうまくやってけない」可能性が浮上してきた。

これを任期残りの1年半で修正するのは至難の技だ。

経済的にもかなり厳しくなっている。

韓国経済はこの10年に目覚しい発展を遂げた。

発展途上国から先進国への華麗なまでの変身を遂げ、サムスンは徐々に勢いを落とす日本企業を尻目に世界のトップ企業の一つに発展した。

この急激な変化が日本軽視、反日感覚につながったのだろう。

しかし、韓国経済は外国資本に支えられた部分が大きく、状況が悪化すると外国資本の流出などから一気にさらに悪化していく構造だ。

中国との貿易は韓国経済において非常に重要になり、それが極端なまでの親中路線の選択にもなった。

しかしその中国経済も停滞しつつあり、対中国の貿易額も縮小しつつある。

韓国経済は思われている以上に深刻な危機に見舞われている。

韓国が嫌々ながらも日本に通貨スワップ再開の申し入れをしている。かなり追い詰められている。

こうした状況を国民は徐々に感じ取っている。

朴大統領路線への不信感が広がりつつあるとみることができる。

任期が少なくなり、朴政権はレームダック状況に陥りつつある。

あと1年半はレームダック状況を解消するには短すぎるが、レームダック状況が続くとすると非常に長く、国への悪影響は大きい。

朴政権は非常に頑強な姿勢の中国政府と打開策を考えるよりも、比較的にやりやすい日本との関係を改善しながら打開策を練る方向に転換しつつあるように思われる。

ただこれは短期的には国民の支持率を下げかねない。

朴政権の反日政策は国民感情にまで浸透してきており、すぐに変化させるのは難しい。

朴大統領に残された選択肢はあまりない。

朴大統領の3年半の間の主だった業績をあげることは難しい。

親中路線で中国との関係強化が最大の業績であったはずが、中国関係が崩れるとそれを業績にあげることさえできなくなった。

袋小路に入りつつあるといっていいだろう。

安倍首相と行った元慰安婦問題の「合意」も、韓国内での反発もあり、今のところ関係改善の切り札とはなっていない。

朴大統領の今後の業績は平昌オリンピックの開催となるかもしれない。

その成功さえ、今の状況からは確約されたものではない。

このような状況下、朴大統領は安倍首相とさらなる思い切った案を出せるか。

今となっては日本はポスト朴政権を念頭においた政策になるかもしれない。

 


習近平国家主席と李克強首相の間で、経済政策をめぐる対立が激化している。

2016年09月06日 16時53分09秒 | Weblog

※週刊ポスト2016年9月9日号

中国の経済実態は、発表と現実がかい離していて本当のところがわからないと言われるが、最近、よく言われるのは経済危機を迎えつつあるということである。

経営コンサルタントの大前研一氏が、中国の危機は日本にとってどんな意味があるのかについて解説する。

 * * *

いま中国では、習近平国家主席と李克強首相の間で、経済政策をめぐる対立が激化している
という

 
国有企業保護政策を維持して権力掌握を進めたい習主席に対し、

李首相が「ゾンビ企業(経営の行き詰まった国有企業)の淘汰」など「痛みを伴う構造改革」を提唱しているからで、

習主席の側近が「今年前期の景気は良好」とする李首相の見解を真っ向から否定し、

「(このままなら)中国経済は『V字回復』も『U字回復』もなく『L字型』が続く」と痛烈に批判したと報じられたのである。

この景気判断については習主席のほうが正しいと思う。

たとえば、

今年6月に中国社会科学院の学部委員で国家金融・発展試験室の理事長を務める李揚氏が「2015年末の時点で、

中国の債務残高は168兆4800億元(約2600兆円)で、GDP(国内総生産)の249%に達し、うち企業分が156%を占める」と発表した。

発言の趣旨は、中国の債務はコントロール可能な範囲で、債務リスクに対応するための十分な資金があることを理由に

「債務危機は存在しない」と強調するものだったが、この数字は経済規模が違うとはいえ日本の借金1000兆円の2.6倍だから、やはり寒気がするような規模である。

李氏は「借金より資産のほうが多い」から安心と言うが、実は中国の借金が正確にはいくらあるのか、誰もわかっていないと思う。

中国の借金には、大きく四つの要素がある。

「国営企業」「民間企業」「地方政府」「国」である。

249%のうち企業分が156%ということは、地方政府と国が残りの100%近く、という計算になる。

だが、すでに本連載で指摘したように、

これまで地方政府の富の源泉だった農地を商業地や工業団地に用途変更して利益を得る不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトはことごとく行き詰まり、

地方政府は莫大な借金を抱えて収拾がつかない状況に陥っている。

おまけにアリババ(阿里巴巴)などのネット通販隆盛の影響で多くのショッピングモールはテナントが入らなくなって「鬼城(ゴーストタウン)」化しているため、

地方政府が商業地などの開発によってけるという従来の仕掛けは、もはや機能しなくなっている。

では、これから中国はどうなるか? 

これもすでに本連載で書いたように、

中国政府が人件費を市場に委ねず強制的・人為的に毎年15%ずつ引き上げてきたせいで中国企業の競争力は低下したのだが、

だからといって賃下げは人民の反発が怖いからできない。

となると、おのずと為替は元安に向かうので、変動相場にするしかなくなる。

変動相場制にしたら一気に元安が進み、現在の1ドル=6.6元が半分の1ドル=13元くらいまで下がらざるを得ないだろう。

そうなれば輸出競争力は回復するかもしれないが、経済はハイパーインフレになって人民の生活は困窮する。

実際、長い休止期間を経てトレーディングを再開したアメリカの著名投資家ジョージ・ソロス氏も「中国経済は危機を避けられない」と明確に予測している。

中国経済が破綻すれば、世界経済は大混乱する。

もしかすると、1929年に当時の新興経済大国アメリカのバブル崩壊が引き起こした大恐慌のような状況になるかもしれない。

ただ日本は、

オーストラリアやブラジルなどの資源国に比べれば対中輸出に依存していないし、

元安によって中国から輸入している食料品、電気製品、衣料品などが安くなり、

中国に進出している日本企業のコスト競争力も強くなるから、日本にとってはマイナスよりもプラスのほうが大きいだろう。

中国経済の破綻に備えつつ、危機を好機に転じるという発想と準備が重要だ。


家計の負債に依存する韓国 負債の急増は経済縮小に向けた時限爆弾

2016年09月06日 16時39分23秒 | Weblog

【断末魔の中韓経済】

家計の負債に依存する韓国 負債の急増は経済縮小に向けた時限爆弾

2016.09.05

ZAKZAK夕刊フジ

理解していない人、あるいは理解「できない」人が多いのだが、経済とは「誰かの負債」の膨張なしでは成長できない。

理由は、経済成長とは消費や投資という「支出の合計」であるGDP(国内総生産)の拡大を意味しているためだ。

誰もかれもが貯蓄を増やし、負債を減らすのでは、確実に消費・投資という支出が減る。結果的に、GDPは成長しない。

資本主義経済において、負債(借入)を増やし、投資をすることで経済成長を牽引するべき存在は、もちろん「企業」である。

ところが、現在の日本は企業までもが負債を減らし、内部留保(貯蓄)を貯め込んでいるため、経済成長が抑制されている。

企業が貯蓄を増やす環境下で、誰が負債を増やし、経済を下支えしているかといえば、実は政府である。

日本は徴税権や通貨発行権という強権を持つ政府が負債を増やし(不十分だが)、企業の貯蓄率上昇をカバーし、何とか国民経済を成り立たせている。

企業でも、政府でもない存在、すなわち家計は、最も脆弱(ぜいじゃく)な経済主体だ。

「寿命」がある家計は、基本的には貯蓄を増やし続けるのが、普通の国民経済だ。

ところが、現在の韓国は最も脆弱なはずの家計が負債を増やし、経済を支えている。

韓国の家計の負債は2015年末時点で1207兆ウォン(約110兆9800億円)に達し、過去1年間で122兆ウォン(約11兆2100億円)も急増した。

15年10-12月の四半期だけで、41兆1000億ウォン(約3兆7800億円)も増えたのだ。

 

 

 


内憂外患の朴槿恵政権、対日正常化の本気度

2016年09月06日 15時27分25秒 | Weblog

内憂外患の朴槿恵政権、対日正常化の本気度

拓殖大学大学院特任教授 武貞秀士
2016年09月01日 09時20分

「未来志向」を打ち出した朴槿恵大

  • 「光復節」の式典で演説する韓国の朴槿恵大統領(ロイター)
    「光復節」の式典で演説する韓国の朴槿恵大統領(ロイター)
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 「歴史を直視する中で、未来志向的な関係を新しく作っていかなければならない」

 8月15日の「光復節」の式典で朴大統領が行った演説では、「未来志向」という言葉が目を引いた。

「未来志向の関係」という言葉の前段には「歴史を直視する中で」という文言があるので、「日本人は歴史を直視していない」という朴大統領の日本に対する認識に大きな変化があったわけではない。

 ただ、これまでの「光復節」の演説とは違い、慰安婦問題や過去の歴史に言及せず、「過去の反省」「歴史認識」といった言葉は皆無だった。

朴大統領が「未来」を意識した演説を行ったのは初めてのことだ。

朴大統領が未来に目を向け、日韓関係改善の可能性を探り始めたのだと私は解釈している。

 朴大統領の支持率は、2014年4月のセウォル号事故で多数の高校生が命を落とし、危機管理体制の不備が明らかになった時に急落した。

その後、持ち直していたが、このところ30%台前半に低迷している。韓国ギャラップが今年7月下旬に実施した調査では31%だった。

 北朝鮮は今年1月に核実験を強行、2月には長距離弾道ミサイルを発射した。

相次ぐ挑発に朴大統領は北朝鮮批判の姿勢を強めた。

すると、南北協力の象徴である開城(ケソン)工業団地が北朝鮮によって閉鎖され、以来、北朝鮮との関係は険悪な状態が続いている。

  • 8月24日、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射したことを伝えるテレビのそばをソウル市民が通り過ぎてゆく(AP)
    8月24日、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射したことを伝えるテレビのそばをソウル市民が通り過ぎてゆく(AP)

 北朝鮮の核開発に対処するために米国の要請を受け入れて、米軍の地上配備型迎撃システム「最終段階高高度地域防衛」(THAAD)の配備が決まった。

これに対し、朴政権と良好な関係を続けてきた中国が韓国批判に転じ、中韓関係はぎくしゃくしたものになっている。

 8月15日の演説で朴大統領は、在韓米軍の防衛ミサイル配備を批判する世論に対し、「国民の生命を守るための自衛権的措置であり、政争の対象にならない」と述べ、THAAD配備の方針に変わりはないことを強調した。

これに対し中国は、THAAD配備に反対する姿勢を一層鮮明にしている。あちらを立てればこちらが立たずといった状況で、米中の間に立つ韓国の苦悩は深い。

対中関係が行き詰まり、対日改善に活路

 朴政権下で韓国経済は下降線をたどっている。

韓国経済は12年を底に緩やかに回復していたが、韓国内の消費減速が足を引っ張っている。

頼みの輸出も、通貨ウォン高などが響いて15年は前年比7.9%減。

この年の経済成長率は2.6%だった。

16年の実質GDP成長率は、企画財政部(韓国の行政機関、財務省に相当)が3.1%、韓国銀行は3.0%を予想しているが、いずれも韓国にしては低い数字だ。

来年12月には大統領選挙がある。

韓国では大統領の再選は禁じられており、朴大統領としては同じ保守系の候補が当選するためにも、国内外の難問を解決していくほかない。

経済分野のてこ入れ、社会秩序の回復、米国との同盟強化は不可欠だ。

同時に韓国経済の再建のためには中国の助けを借りたいし、日本の経済協力もほしい。停滞していた日韓関係の修復に着手せざるをえない状況となっている。

中国は米国との同盟を強化する韓国を許す気配がない。

13年2月の政権発足後、朴大統領は米国訪問の後に北京を訪問し、中国との戦略的協力パートナーシップの強化を約束した。その約束に反するというわけだ。

 難問山積の朴政権にとって、強気な中国との関係改善に比べれば、日韓関係の改善は取り組みやすい分野ではある。

日中韓の協議では3か国の協力を確認しており、その趣旨に照らし合わせれば、中国が日韓関係の改善に反対することはできない。

米国も日韓関係の改善を強く望んでいる。

 日韓両国の間に刺さったトゲであった慰安婦問題でも、ようやく進展があった。

慰安婦問題に関する日韓合意に基づいた韓国の「和解・癒やし財団」が7月に発足した。

日本は人道的支援としての財団に対する10億円の拠出を閣議決定し、日韓両国は日韓合意の履行を確認した。

元慰安婦への補償問題は韓国の国内問題となり、その過程を日本は見守ることになる。

「勝ち馬に乗る」生き残り術

  • 8月24日、日中韓外相会談が東京で開かれた。会談の冒頭、撮影に応じる(左から)中国の王毅外相、岸田文雄外相、韓国の尹炳世外相(代表撮影)。会談では3か国が経済やテロ対策などの分野で協力することを確認した
    8月24日、日中韓外相会談が東京で開かれた。会談の冒頭、撮影に応じる(左から)中国の王毅外相、岸田文雄外相、韓国の尹炳世外相(代表撮影)。会談では3か国が経済やテロ対策などの分野で協力することを確認した

 政権発足から3年が過ぎ、朴大統領は未来志向で日韓関係を構築し直し、同時に米韓同盟を強化することで、北朝鮮の相次ぐミサイル発射に対処しようとしている。

韓国の政策の修正の背景としてはいくつか指摘することができる。

THAAD問題では中国から圧力を受けた後、「中国の怖さ」を実感しているのだろう。

また、北朝鮮の核兵器開発を深刻にとらえている米国が、韓国のあいまいな対中、対北朝鮮姿勢を許容しなくなっている。

それに加えて韓国は、日韓関係の悪化が自国経済に与える影響を無 視できなくなった。

 韓国の知日派と話をすると、「日本における最近の対韓イメージ悪化に驚いた」という。

「嫌韓本」が売れ、韓国への日本人観光客が減少し、日韓貿易が縮小しつつある。

安倍政権のもとでは協議することが難しい国との関係改善は後回しにするという姿勢が鮮明になり、韓国としても放置できなくなったのだろう。

 では、日本はどうすべきか。

粛々と日韓関係改善の方策を実行していくほかない。

中国に接近し、日本批判を続けた韓国とは関係を途絶せよといった極端な意見もある。

しかし、韓国も、中国の力を借りて日本の歴史認識をただすことが米韓同盟にはマイナスとなり、韓国経済にもよい影響をもたらさないことを理解し始めた。

日本の技術力、国際的評価、経済力に韓国は太刀打ちできないといった指摘も韓国内からは聞こえてくる。こちらから関係を途絶するようなタイミングではない。

 日本、米国、中国の間に立つ韓国が見せる政策のブレは、その地政学的条件からきている。

米韓同盟があるのに中国と戦略的協力パートナーシップを結ぶことは、矛盾ではないかと我々は思うが、地政学的条件のもとでの「韓国式」生き残りバランス外交である。

 13世紀、朝鮮半島の高麗はモンゴルに征服されたあと、モンゴル支配下で安全を確保するために、船を建造して壱岐対馬を攻略して、九州征服を試みた。

19世紀、清国が輝いていた時に李氏朝鮮は清国に歩み寄った。

日清・日露戦争に勝った日本が輝いた時には、大韓帝国は外交・軍事権を日本に渡し、1910年の併合条約に至った。

戦後、日本の資金と技術がのどから手が出るほどほしかった韓国は、65年に日韓基本条約を締結した。

 そして、日本の国際的影響力が低下して中国が輝いた2012年、李明博(イミョンバク)大統領(当時)が禁じ手の竹島上陸を敢行した。

今、中国経済に暗雲が漂い始め、中韓関係がギクシャクした結果、韓国は日韓関係を改善する方向に向かい始めた。

この韓国の選択は半島に位置する国家としての真剣なものである。

いま韓国は真剣に日韓関係の修復を望んでいる。

常に「勝ち馬」を探し、「勝ち馬」に乗る戦略は、何千年も続いてきた朝鮮半島の民族の生き残りの戦略なのである。日本人には違和感があるが。

一筋縄ではいかない日韓関係

  • 8月27日、ソウルで開かれた日韓財務対話。金融危機などで外貨が不足した際に融通し合う通貨交換(スワップ)協定の再締結に向けた議論を始めることで合意した(ロイター)
    8月27日、ソウルで開かれた日韓財務対話。金融危機などで外貨が不足した際に融通し合う通貨交換(スワップ)協定の再締結に向けた議論を始めることで合意した(ロイター)

 何千年も続いてきた朝鮮半島の民族の生き残りの戦略が絡むので、日韓間の摩擦はいずれまた起こる。

盗難にあった対馬の仏像は今も返却されていない。

竹島は不法に占拠されたまま、この夏は韓国の国会議員が島を訪問した。

日本大使館前の慰安婦像はそのままだ。むしろ慰安婦像の数は増えつつある。

 日韓関係は一筋縄ではいかない。

日韓の間の誤解を根本的に解決する方法は見つかりそうにない。

今までの日韓関係がそうであったように、韓国経済が回復してきて、自信を回復すれば、また日本バッシングが始まる。

 ただし、日韓の軋轢(あつれき)を緩和する方法はありそうだ。

日本経済に回復の兆しが生まれ、ハイブリッド自動車などの分野で世界をリードするようになると、韓国は日本を見直し始めた。

リオデジャネイロ五輪で日本がメダルラッシュに沸き、韓国勢が不振に終わった時、韓国は日本のスポーツを評価し始めたではないか。

日本が輝きを取り戻せば、韓国の側から日韓関係の改善に向けた動きが出てくる。

日本人の過度の自己卑下は国際的摩擦を起こしてきた。

モスクワで開かれたある国際会議で、私は「ポツダム宣言を根拠にした議論はやめよう。

日本は確かに先の戦争では負けた。しかし、冷戦という戦争の時代の経済戦争に勝った。

敗者としていつまでも、国際秩序での管理対象におくのは、やめてほしい」と発言したら、反論したロシア人はいなかった。

日本が弱くなれば、対馬と尖閣諸島は外国のものになる。

慰安婦の像の数は増える。

良くなったり悪くなったりの日韓関係に一喜一憂することはない。

日本は産業やソフトパワーの分野で足腰を強くする努力を淡々と続ければいいのである。

その兆しを読み取った韓国が日韓関係改善の方策をとり始めた。

ただし、韓国は今後も、日本の教科書の記述、閣僚の靖国参拝を批判し、旭日旗を非難するだろう。

日本人は歴史認識を転換すべきという論調を繰り返すに違いない。

韓国人にとって日韓関係の改善とは、日本が韓国の歴史認識に合流することを意味することなのだから。

知日派であり長い間、研究分野にかかわり、今も、日韓関係の分野で発言を続けている韓国の学界の重鎮が、昨年、ある会合の夕食会の席で私の隣に座った時に言った言葉が印象的だった。

「武貞さん。自分の夢はね。韓国が日本を併合して、日本総督府を作って、皇居前に日本総督府の建物を建造し、自分が日本総督に就任することなんだよ」。

酒の席ではあるが、そこで本音が出るのが韓国社会だ。

つまり、韓国の戦後の歩みとは、文化的に劣ると思っていた日本に、35年間も統治された悔しさを晴らすための日々だったのだ。

その悔しい思いは、35年間、韓国が日本を統治して初めて晴らすことができるという発言である。

やはり日本は前に進む努力を怠ってはならない。それが東アジア安定の鍵にもなる。

プロフィル

武貞秀士(たけさだ・ひでし)
 1949年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了。韓国・延世大学韓国語学堂卒業。
75年から防衛庁防衛研修所(現・防衛省防衛研究所)に教官として36年間勤務。
 
在職中に米スタンフォード大学、ジョージ・ワシントン大学で客員研究員、韓国・中央大学で教授を務める。2011年に防衛省を退官した後、延世大学教授などを経て拓殖大学大学院特任教授に。専門は朝鮮半島の国際関係論、日本の防衛問題。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『東アジア動乱 地政学が明かす日本の役割』(角川oneテーマ21)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか