2016-09-22 05:00:00
韓国、ベトナム残虐事件に頬被りし「反日騒ぎ」する身勝手
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
韓国メディアには、いまでも「日帝」とか「日王」という言葉が登場する。日本が悪逆非道の存在として描かれているのだ。
日韓併合時代が、つい昨日まで続いていたようなイメージで語られている。
その執念深さに辟易する。日本は35年間の統治に対して、1965年に11億ドル(当時は1ドル360円)以上の「協力金」も支払っている。
それでも、繰り返される韓国の「反日」は、常識を超えたものだ。日本を揺さぶれば、何らかのメリットが得られることを知っているからだ。
韓国の対日姿勢とベトナムの対米姿勢には、大きな差を感じる。
ベトナムにとって米国は、熾烈なベトナム戦争を戦った「許せざる敵」に当たる。
その米国に対して、恨みがましいことは呑み込んで、未来志向で対応している。
一方の韓国は、日本が戦争を仕掛けた訳でない。逆に、日韓併合によって日本は財政負担を負った関係にある。
朝鮮のインフラ投資を行い近代化に努力したが、「日帝」(日本帝国主義)や「日王」(日本の天皇)という言葉によって常時、恨み節を炸裂させている。
どう見ても「未来志向」という感覚は感じられない。あるのは、「仇敵」という認識だけだ。
ベトナムは、中国に1000年、フランスに100年の統治を受けてきた。
米国とは1964~73年にベトナム戦争を経験した。
こうした一連の苦い経験を持ちながら、ベトナムは自国の近代化に向けて黙々と努力している。ベトナムが誇りを内に秘めて、声高に相手を罵倒しない理由は何だろうか。
それは、中国・仏国・米国に対して、いずれも戦闘で勝利を収めていることだろう。
中国には「面従腹背」しながらも、中国が海の大軍を送れば「機略」によって滅ぼすという戦果を挙げてきた。
川に乗り入れた中国船に対し干潮を利用して航行不能にさせて、その隙を衝いて火を放ち大勝するなど機略に富んでいた。
仏国とは、ベトナム戦争で撤退させ、その後を受けて登場した米軍には神出鬼没な戦いで翻弄した。かつて中国の大軍を川で打ち破った機略と同じである。
ベトナムは心底、中国を許していない。
過去の1000年にわたる支配。中越戦争(1979年)で奇襲攻撃を受けて追い払ったこと。
また、南シナ海では島を奪われている。こういう過去を持つだけに、TPP(環太平洋経済連携協定)の原加盟国12ヶ国の一つとして名を連ねている。
中国と異なる経済圏で金輪際、中国の影響を遮断したい。それが民族の悲願となっている。
ベトナムは、こうして中国に「魂」を売らずに独立を保ってきた。
それに対して、韓国はどうか。中国から同じ1000年の支配を受けて儒教に染まり、「事大主義」で魂まで売ってしまったのだ。
この違いが現在、はっきりと出ている。韓国は、米韓軍事同盟があるにもかかわらず、中国寄りのポーズを取るなど混乱している。
今ようやく、北朝鮮の核実験で目が覚めつつあるところだ。この姿勢が、いつまで保つのかは疑わしい。
韓国の「事大主義」は、骨の髄までしみ込んでいる。潜在的に中国贔屓である。
1000年も支配された中国に「媚び」を売る。ベトナムから見れば、考えられない行動であろう。
韓国は中国へなびいていることもあり、日本を仇敵と位置づけている。もし、中国の存在がなかったならば、ここまで長く「反日」を続けなかったであろう。
韓国は、「国民情緒法」と揶揄されるほど、「超法規」の行動をとる。
日韓基本条約を踏みにじって新しい対日立法を行うなど、感情過多民族の名に「ふさわしい」振る舞いをしている。
ベトナムが、怒りをジッと胸の奥にしまい込んでいるのに対して、韓国は解決済みの事柄すら蒸し返して騒ぎ立てる。このように、両国には大きな差があるのだ。
韓国軍は、米軍支援の名目でベトナム戦に参戦している。
その際、ベトナム国民に多くの残虐行為を働いた。
それにも関わらず、韓国政府は、一度もベトナムに謝罪していない。
日本には慰安婦問題で賠償しろ、謝罪しろと迫ってくるが、自らの冒した罪には知らん顔をしている。この矛盾はなんなのか。余りにも「二枚舌」過ぎるのだ。
日本へ謝罪を迫るならば、韓国もまた、ベトナムへ謝罪すべきことだろう。
あるいは、戦闘中の行為は法的責任を問われないという理屈ならば、慰安婦問題も日中戦争中の出来事である。中国の南京虐殺も戦闘中の行為である。
戦闘行為という名目ですべてが赦される訳でないのだ。非戦闘員への殺戮行為は禁じられている。韓国軍は、ベトナム戦でこの項目に違反した。
『日本経済新聞』(9月13日付夕刊)は、「ベトナム 恨まず未来へ」と題して、韓国軍の記憶は慰霊碑にという記事を掲載した。
(1)「ベトナムが未来志向でベトナム戦争の傷痕を癒やそうとしている。
激戦地の中部で40件以上起きた韓国軍による虐殺はいまでも住民の記憶に残り、被害者の実名を書いた慰霊碑が各地で建てられている。
その一方で、韓国は2年連続で対越投資トップとなり、ベトナムからの出稼ぎも増えている。
雑な気持ちが入り交じるなか、住民の多くは『悲劇は忘れないが、相手を恨まない』と考えている。
ベトナム中部クアンナム省フォンニ村。飼料工場に勤めるグエン・フー・チュンさん(31)は慰霊碑の前で手を合わせた。
その碑には『1968年2月12日、南朝鮮(韓国)の兵隊によって74人の人民が虐殺された』と刻まれている。
奥にあるもう一つの碑には74人全員の名前と生年が書かれている。『40歳だったひいおばあちゃんの姉は、赤ん坊2人を抱いたまま撃たれた。
親戚3人を殺された怒りはあるけど、憎しみを行動には移さない』。チュンさんは淡々とした表情で語った」。
ベトナムの人々が、慰霊碑を建てて犠牲者の霊を祀っているのは、仏教が国民の8割を占めているという事情とも絡んでいる。
その点では、日本と同じである。日本でも海外の激戦地で散った日本兵の霊を慰めるべく、戦後一貫して海外各地で慰霊碑を建てて「不戦の誓い」をしてきた。
韓国は、この日本の姿を真面目に受け取っていないのだ。韓国が、ベトナムに謝罪しない裏には、真の反省がない結果かも知れない。それは、同時に日本の反省を理解できないことにもつながっているのだ。
儒教国では、犠牲になった人々の霊を敬う習慣がないのだろうか。
南京虐殺事件も、中国政府が慰霊し始めたのはつい2年前である。
この事件を政治的に利用する手前、何もしないわけにいかなくなっただけなのだ。
国民党政府も共産党政権も、南京虐殺事件は無関心であった。政治的に利用するだけである。これでは、亡くなった人々の霊は浮かばれない
(2)「韓国軍によるものとしてベトナム政府が認めているだけで43カ所、被害者は1000人以上。
米軍は、500人以上が死んだ『ソンミ村虐殺事件』を起こしたが、判明件数は8件と少なく、同事件以外の被害者は計137人と少ない。
韓国軍の虐殺はベトナム人の記憶に強く焼き付いている。韓国軍によって430人が虐殺されたビンホア村でも慰霊碑の記述は生々しい。
子供は182人、妊婦は7人――。首を切られたり、火に投げ入れられたりと殺害の方法まで記述してある。被害者の子孫は住み続けており、悲劇の記憶は受け継がれるが、そこに憎しみはない」。
ベトナム政府が認めた韓国軍による虐殺は43カ所、被害者は1000人以上に上がっている。
米軍も有名な「ソンミ村虐殺事件」で500人以上の生命を奪ったが、件数は8件である。韓国軍の虐殺が圧倒的に多いのだ。
(3)「韓国の民間団体は遺族を積極支援しており、学校が寄贈された村もある。
ズイチン村のチャン・フックさん(61)は『韓国の学生が慰霊に来る。若い世代のためにも、しこりを残してはいけない』と話す。
叔母が殺された光景は脳裏から離れないが、もう恨みはない。住民が口をそろえて言う不満は、『韓国政府による賠償がない』こと。
ビンホア村のチュオン・バン・チュックさん(57)は、『お金が欲しいからではない。私の母と妹のように無念の死を遂げた人たちを慰霊するために使いたい』と話している」。
韓国では、民間の慰霊団が訪問し、遺族を積極的に支援しているという。
だが、韓国政府は、「黙り」を決め込んでいる。
日本に対して慰安婦問題で追及するならば、自らもベトナムに対して謝罪すべきである。
韓国政府の「ダブル・スタンダード」は赦されないのだ。
ベトナムと韓国は、過去1000年以上も中国の支配を受けてきた。
ベトナムはその怒りを胸に納めているが、韓国は事大主義ですり寄っている。
韓国には普遍的な「道理」が存在せず、感情のままに揺り動かされているのだ。一本筋の通った行動を期待したいのだが。
(2016年9月22日)