②韓国、中国に奪われる工業品シェア「対中輸出」5年ぶり減少
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
2014-12-18
日韓経済人会議は7年間も中断したままとなってきた。ようやく、今年になって再開された。韓国が日本軽視であった証拠である。
④ 「最近では、韓中の技術格差も縮まってきている。
韓中の技術格差は2010年には2.5年とされていたが、12年には1.9年に縮まった。
さらに中国政府は今年に入り、人民元安誘導策を取っており、為替レートを武器にする意向を明確にしている。
韓国企業は、技術面で中国に差をつけるような革新的な製品を開発しなければ生き残れない。
政府も新たな製品・サービスの開発の障害となる規制を洗い出し、撤廃・緩和すべきだ。
主力製品まで中国製に負ければ、韓国製造業の崩壊スピードは急激に早まるだろう。われわれはこのことを肝に銘じ、警戒心を持たなければならない」。
中韓の技術格差が縮小している背景には、韓国からの技術漏洩も絡んでいるはずだ。『中央日報』(12月8日付け)は、『韓国経済新聞』記事を次のように転載した。
「韓国中小企業研究院は、報告書の『中小企業の技術保護支援政策の現況と課題』で、次のように指摘した。
研究所を保有する中小企業が、2011年から2013年までの3年間にこうむった技術流出の被害額は、6兆2574億ウォン(約6757億円)に達した。
これは全体の中小企業の年間研究開発費の58%に相当する。
技術流出後の売上減少額は、1企業あたり年間売上の20.4%に該当する25億4000万ウォン(約2億3500万円)にも上った。
中小企業が技術保護のために年間投資する費用は、1企業あたり平均3530万ウォン(約381万円)に過ぎなかった。
ただし技術保護支援事業の恩恵企業の最近3年間の技術流出比率は8.1%で未恩恵企業(10.7%)よりも低かった」。
この記事には、技術漏洩先がどこの国であるかは伏せている。
だが、これまでの「習性」から見て、中国企業がその漏洩先であろう。
2011~13年までの3年間で、被害総額は6757億円に達している。
中小企業の年間研究開発費の58%にも達するという。韓国の中小企業にとって死活問題である。
技術流出後の売上減少額は、1企業当たり2億3500万円である。決して小さい額ではない。
ちなみに、技術保護のための年間投資費用は、1企業あたり約381万円である。雀の涙程度とは言え、ようやく絞り出した投資費用の成果(売上)が、技術漏洩で失うことは何とも痛ましい限りである。
中国企業もあこぎなことをするものである。韓国は、日本を見限って馳せ参じた中国企業に、まんまとしてやられているのだ。
韓国は、中国が人民元安誘導策を取っていると判断している。
これが、韓国の対中輸出の障害になっていると読んでいるのだ。
ここで、中国の人民元相場の推移を見ておきたい。
中国は、完全な変動相場制でない。政府が管理する管理型変動相場制である。
2012年5月1日、米1ドル=6.37元の安値をつけたあと「元高」に転じた。
14年1月1日、1ドル=6.06元と最高値をつけたあと「元安」に舵を切り替えた。
4月1日には6.22元、11月1日は6.14元。そして、12月9日は6.19元である。中国は管理型変動相場制ゆえに、他国からは常に為替操作を疑われている。
12月9日は、上海総合株価指数が前日比5.4%安(163.989ポイント下落)の2856.27ポイントと、09年8月31日以来の安値で終えた。これも特記すべきであろう。
私は、中国株について懐疑的な内容のブログを書き続けている。
それが、「的中」したような動きである。中国経済のファンダメンタルは、きわめて脆弱なのだ。
この中国株の急落から類推できることは、元安相場の本格的な展開である。
韓国にとって、対中輸出は一段と困難が予想される。
中国経済について、私は「泥舟経済」と批判している。
経済規模は世界2位であるが、実態は空洞化している。
これまでの超高度成長は、「人海戦術」経済の結果である。
豊富な労働力が生み出した「力業経済」である。決して、「技術革新」が生み出した「スマート経済」ではない。
この一点を理解すれば、中国経済についての過大な評価は、きわめて危険である。
韓国は、その危険性をまったく予測できなかった。お気の毒と言うべきだろう。
泥舟に乗り込む韓国の不運
『人民網』(12月8日付け)は、次のように伝えた。
⑤ 「中国社会科学院財経戦略研究院が、このほど発表した『中国マクロ経済運営報告2014~15』は、来年の中国の経済成長には引き続き下方圧力がかかると見通した。
中国は今、『新常態』の経済周期における谷間の段階にあり、経済は全体としてみれば引き続き低迷状態にあり、
回復上昇のための持続的なエネルギーが不足し、未来の経済成長ペースには依然として大きな下ぶれ圧力がかかることになる。
今年第4四半期(10~12月)のGDP増加率は7.3%前後で、通年では7.4%、消費者物価指数(CPI)の通年の上昇率は2%になる見込みだ。
来年のGDP増加率は7%、CPI上昇率は1.9%と予想される。全体としてみれば経済成長は安定を維持し、合理的な範囲で推移している」。
中国指導部は、来年の経済政策の基本方針を決める中央経済工作会議を12月9日から開催した。
結果は、来年3月に発表される。注目されるのは、来年の経済成長率目標を7%以上か以下にすることだ。
無理な経済成長率目標を立てることは、中国経済の均衡を破壊するリスクを孕む。
そうなると、7%以下が妥当な線である。「見栄」も手伝い7%台にするのか。
実態は、ここの記事に書かれている通りである。最早、見栄を張る限界を過ぎているからだ。
中国社会科学院(政府系シンクタンク)の来年の経済見通しでは、「GDP増加率は7%、CPI上昇率は1.9%」と予想している。
政府系シンクタンクだけに、暗い話は書かずに、さらっとたした内容である。
わずかに「引き続き低迷状態にあり、回復上昇のための持続的なエネルギーが不足し、未来の経済成長ペースには依然として大きな下ぶれ圧力がかかる」としている。
この原因は、不動産バブル崩壊の後遺症が尾を引くことである。
いつの間にか、「不動産バブル崩壊」が暗黙裏ながら既成事実として語られている。私が一人で悪戦苦闘しながら、「不動産バブル」を言い始めて4年の歳月を経たのだ。
⑥ 「中国銀行がこのほど発表した『2015年経済金融展望報告』も、15年は成長のエネルギーの切り替え、『過剰な生産能力の削減』圧力の大きさ、不動産市場の調整、負債比率の高止まりといった要因が経済成長を制約するとの見方を示した。
来年のGDP増加率を約7.2%、CPI上昇率を約2.4%と見込み、通年の経済運営は引き続き『低成長+低インフレ』の組み合わせになると予想している」。
国有銀行の中国銀行は、来年の経済が不調である理由を明記している。
「過剰な生産能力の削減圧力の大きさ、不動産市場の調整、負債比率の高止まりといった要因が経済成長を制約する」と明快である。
これらの現象を生み出した「構造式」は次のようなものであろう。
過剰債務=過剰投資=過剰生産能力がこれだ。過剰債務がすべての出発点である。
不動産バブルもこの過程において発生した。政治が介入する不完全な市場経済。社会主義市場経済とは、こういう代物である。
「低成長+低インフレ」こそ、ディスインフレからデフレへの過渡期現象である。
「中所得国の罠」が現実的な問題として、中国経済を脅かし始めていることは明らかである。
つまり、1人当たり名目GDPは、2万ドル以上になれない宿命を負う経済である。
韓国は、こうした「中所得国の罠」にはまり込みかけている中国と、反日の「盟約」を結びかけたのである。
余りにも先見性がないと言うほかない。
相手は専制政治国家である。
民主主義国の日本を袖にした振る舞いである。朴大統領の眼力に狂いはなかったのか。
(2014年12月18日)