韓国企業は3年間も減益基調
経済時評
高齢者自殺は先進国の4倍も
勝又 壽良
(2013年12月24日)
08年秋から5年にわたる「円高ウォン安」相場で、韓国経済はすっかり立ち直った印象を与えてきた。
韓国を代表する企業のサムスン電子と現代自動車は、海外でもブランドが確立し「好調・韓国経済」というイメージを植え付けた。
韓国経済の台所に回ると、意外な結果が分かってきたのだ。サムスン・現代の両社を除けば、業績不振が続いていたのである。しかも、今年を含め3年もこうした状態が続いている。
この事態を知ってか知らずか、朴大統領は「反日」の砦と化している。
先のバイデン米国副大統領の訪韓でも、「日本が歴史認識を改めなければ」と日韓融和には否定的である。
現在の日本経済の立場から言えば、韓国がソッポを向いていても別段、困ることもない。
だが、安全保障の面から言えば、民主主義陣営として日米韓は結束しなければならない局面にある。とりわけ、北朝鮮の「政治ナンバー2死刑」というショッキングな事態を迎え、前記3カ国の結束はますます重要になっている。
それは、日本よりも韓国にとって重要なはずだ。中国一辺倒というリスキーな韓国外交は、対日関係を犠牲にしている。それだけに、「大丈夫ですか」と聞きたくなるのだ。
韓国企業は3年間も減益基調
韓国紙『朝鮮日報』(12月11日付け)は、次のように伝えた。
① 「韓国株式市場を代表する200銘柄の今年の純利益予測は、合計88兆4000億ウォン(約8兆6000億円)で、前年実績(82兆5000億ウォン)を7.2%上回った。
② しかし、サムスン電子と現代自動車を除けば、残る企業の純利益予測は47兆9000億ウォン(約4兆7000億円)となり、前年実績(50兆7000億ウォン)を5.6%も下回った。
③ 上場企業全体の利益は昨年も前年比で1%増加したが、サムスン電子と現代自動車を除いた利益は2011年が17.2%減、昨年が16.4%減だったたけに、3年連続でマイナスとなる可能性が高まった」。
これまで韓国が、国を挙げて「反日」に取り組んできた裏には、日本経済をしのぐ自信あってのことかと思われてきた。
もはや、日本経済何するものぞ。そういった確固とした自負があって、日本批判をしてきたのかと見られてきた。
現実は、まったく事態が逆であったのだ。韓国株式市場を代表する200銘柄の業績予想では、サムスンと現代を除けば、2011年以来3年連続の減益に落ち込んでいる。
今後も好転する気配はない。さらに、「円安ウォン高」に伴い、本格的な危機がこれから襲来する。
普通の常識なら自国の企業業績が不振であれば、隣国日本の悪口雑言は慎むものだ。
日本での韓国イメージがダウンすると、韓国ビジネスに差し障る。そういう懸念が出てくるからである。ところが、国家元首の大統領が先頭に立っての日本批判である。
信じがたい行動に出たものだと、妙に感心する。無鉄砲と言うか、経済音痴と言うか表現はいろいろだ。
空気が読めないという意味で、「KYの大統領」である。日本国内では、韓国製品への負の影響がすでに出ている。『朝鮮日報』(12月12日付け)は、次のように伝えた。
「韓国と日本の関係悪化により、韓国企業は日本での対消費者間取引(B2C)で打撃を受けていると、早稲田大国際教養学部の朴相俊(パク・サンジュン)教授が指摘した。
朴教授によると、『韓国に対する日本人の親密感が薄れたために、B2Cで被害が特に大きい』と指摘した。ただ、企業相手のB2B事業への影響は限定的という」。
「朴教授によると、この5年間、韓国製化粧品や文化商品の日本での消費はドラマや音楽など韓流人気を追い風に好調だったが、今年は大きく縮小した。
ある企業が消費者を対象に実施した最近の調査では、韓国製品について『機能や品質、価格には満足しているが、韓国製だから購入しない』という回答が10%を占めた。
韓国関連の店舗が多く集まる東京・新大久保でヘイトスピーチ(憎悪表現)を叫ぶデモが始まってから、店の売上高が半減したことが分かった。そのため、韓国製ということが目立たないよう、日本の小売業者に対し販促活動を控える事例もあるという」。
ヘイトスピーチ(憎悪表現)は、困ったことだと思う。
刺激的な発言が、事態をこじらせるからである。日本としてはスマートに対応すべきである。それだけの精神的なゆとりがある。日韓の間が気まずくなっても、日本経済への損害はゼロである。困るのは韓国であり、自分で自分の首を絞めているのだ。日本は傍観していられるゆとりがある。ヘイトスピーチは愚策である。
② 「世界市場で好調なサムスン・現代両社のおかげで、韓国企業の負債比率や研究開発投資など健全性、成長性をめぐる指標が改善したように見えるが、産業界全体が好調であることを反映しているとは言いにくい。
現代経済研究院によると、上場企業全体の負債比率は2008年の103%から昨年には90%に改善した。サムスン電子と現代自を除くと、昨年の負債比率は105%で、依然100%を超えている。
また、上場企業全体の研究開発費の55%を占めるサムスン電子、現代自を除くと、他の上場企業の研究開発費は11年の9兆2000億ウォン(約8990億円)から、昨年の9兆1000億ウォン(約8890億円)へと小幅ながら減少した。
昨年までに韓国の企業・団体が取得した特許(3708件)のうち、両社以外が取得した特許は1925件にとどまる。現代経済研究院のアン・ジュンギ研究員は、『サムスン・現代自の効果を除けば、韓国企業の経営実態は表面上よりも深刻な状況だ。企業発の不況に備えた先手の対策やIT・自動車に続く成長源の育成に向けた政策的努力が急がれる』と指摘した」。
上場企業全体の負債比率は、2008年の103%から昨年には90%に改善した。サムスン電子と現代自を除くと、昨年の負債比率は105%になる。
依然100%を超えているのだ。負債比率とは、負債(他人資本)を自己資本で割った経営比率である。自己資本を負債の担保として考えると、負債比率は100%以下が望ましい。
昨年の負債比率は、サムスンと現代を除くと105%である。当然、負債の担保になる自己資本不足という結論になる。これは、銀行にとっては由々しき話しである。銀行の警戒感が大きくなっていることは十分に想像される。韓国では、家計負債も膨らんでいるのだ。
韓国紙『中央日報』(11月22日付け)は、次のように報じた。
③ 「家計負債が年内に1000兆ウォン(約95兆円)を超える見通しだ。
韓国銀行(中央銀行)が発表した『7~9月期の家計信用』によると、9月末基準の家計信用は991兆7000億ウォンだった。3カ月前より12兆1000億ウォン増えた。
家計信用は、家計が銀行と各種機関から借りた融資金(家計融資)にクレジットカードで買掛購入した金額(販売信用)を合算したものだ。年末資金の需要が多い10-12月期は、通常、融資が増える傾向にあるため、年内の家計負債は1000兆ウォンを超えるものとみられる」。
韓国の名目GDPは、1272兆ウォン(2012年)である。家計負債がこの年末に1000兆ウォンになるとすれば、対GDP比で78,6%になる。
先の負債比率から類推すれば問題ないとは言え、家計は付加価値を生む生産現場でない。その事実を忘れてならない。家計が純粋な消費の場である以上、韓国の家計負債は多すぎるのだ。
韓国『亜州経済』(12月2日付け)は、次のように報じた。
④ 「韓国の65歳以上の高齢者のうち、47.2%が貧困にあえいでおり、OECDの平均値である12.8%を大幅に上回っている。
韓国はOECD加盟国で高齢者の貧困が最もひどい国である。さらに、66~75歳高齢者の平均収入は人口全体の平均収入の62.4%に当たり、これもOECD加盟国平均の90.1%に遠く及ばない。韓国の退職金制度導入の遅れが、主要な原因であると指摘している」。
韓国の高齢者は退職金制度が不完全であるため、老後生活は苦難を極めている。
これまでは、少ない退職金で貸家を購入しその家賃を生活費に充ててきた。住宅バブルの崩壊によって、そのささやかな夢も消えかけている。後には、多額の住宅ローンが残されて、ますます老後生活を圧迫している。
こうした問題は、韓国の経済構造が輸出偏重=大企業優遇=財閥優先という歪な形が生み出したものだ。
1997年の経済危機で、外資が大企業の大株主として名を連ねた結果、利益は大方が配当金に回されている。
従業員の待遇改善策として、退職金制度の充実が必要である。「経済民主化」によって、利益配分の流れを従業員にも手厚くする。そういう配慮がなければ、韓国高齢者の悲劇は今後も続くに違いない。
65歳以上の高齢者のうち、47.2%が貧困にあえいでおり、OECDの平均値である12.8%を大幅に上回る。
韓国は、OECD加盟国で高齢者の貧困が最もひどい国になったのだ。儒教国家の韓国としては、高齢者がOECD加盟国中、「最貧」とはメンツ丸つぶれである。もともと、儒教では高齢者を大事にすることを教え込んでいる。その美風が消えてしまった。
国連人口基金(UNFPA)と国際高齢者人権団体「ヘルプエイジ・インターナショナル」が、高齢者福祉に関する調査報告書を10月1日発表した。
91カ国・地域を対象に60歳以上の高齢者の所得保障や健康状態、雇用・教育、生活環境などを調べ、ランク付けしたものだ。
アジア諸国では日本が10位で最も高く、韓国は67位だった。
韓国はOECD加盟国でもっとも悪いデータであった。世界レベルで67位になるのは当然である。日本の世界10位は、喜んでばかりもいられない。それだけ財政負担が大きいことを示している。今後の財政赤字改善策の過程では、高齢者負担増が課題に出る可能性が高い。
高齢者自殺は先進国の4倍も
英経済誌『エコノミスト』(12月7日号)は、「韓国、高齢者の自殺:生きる力が尽きて」を次のように掲載した。
⑤ 「韓国では2011年、65歳以上の高齢者が4000人以上も自殺した。その割合は1990年の5倍、先進国平均(注:人口10万人当たり)の4倍近くに上った。
こうした『静かな自殺』がティーンエイジャーの自殺ほど注目を集めることは滅多にないと、ソウル大学の精神科教授で、韓国自殺予防協会会長のアン・ヨンミン氏は語る。高齢者による自殺未遂件数は若年層の10倍に上る。自傷行為による健康被害は、保険制度の適用外となることも問題である」。
儒教国家・韓国の倫理では本来、高齢者が大切にされるべき存在だ。
それが今や一転、生活苦から自殺に追い込まれている。先進国の4倍(人口10万人当たり)にもなっているのは、「痛ましい」のひと言につきる。
この悲劇は、前述の通り韓国経済が輸出偏重であって、内需=福祉をないがしろにしてきた結果だ。朝鮮戦争によって全土が焦土と化した。
これが、韓国経済の基盤を脆弱化させた原因である。北朝鮮軍と中国義勇軍がもたらした被害でもある。韓国政府は、その中国に対して何らのわだかまりもなく親近感を持ち、ひたすら日本を批判している。
実に不思議に思えるのだ。なぜ、韓国の高齢者が先進国の4倍もの自殺に追い込まれているのか。その原因のよって立つところを、静かに考えるべきであろう。
⑥ 「地方在住の高齢者のうち、自分の子供と暮らしている人の割合は、昨年、わずか2割となった。1960年代以降、韓国の都市は発展し、若者を引き寄せた。
政府は社会福祉に対する投資するよりも、『家族を犠牲にする道を選んだ』と、ソウル大学の社会学者、ウン・キス氏は話す。政府は賃金を低水準に保ち、教育への投資を促した。親たちは、政府の勧めに従った。儒教の伝統から、老いたら子供に頼れると考えてのことだ」。
儒教では、高学歴者を尊敬する気風がある。韓国政府も大学進学を奨励してきた。現在の大学進学率は71%と高く、日本より20%ポイントも高い。
韓国には、こうした高学歴者を就職させる企業が少ないのだ。大学は出たけれど、就職できない者が毎年5万人にも上っている。
逆に高卒者が3万人も不足するという、「ミスマッチ」が起こっている。
子どもの大学進学費用を親が負担し、子どもの就職難から老後の親の生活もままならない。最後は、高齢者が自らの命を捨てる悲劇を招く。ならば、無理して子どもを大学へやらず、就職させた方が親も助かったはずだ。儒教のもたらす悲劇である。
⑦ 「韓国の国家統計局によると、1988年には子供が年老いた親を扶養すべきと考える韓国人は全体の90%を占めたが、現在は3分の1まで減っている。
だが、1988年に導入された国民年金を受給しているのは、2013年現在、高齢者層の3分の1のみだ。先月、基礎老齢年金プラン(高齢者の所得下位7割に対して、月間20万ウォンを支給)が可決され、65歳から受給できるようになった。そうできる人は仕事に復帰している。駐車場の係員や道路清掃、警備員の仕事に就くことが多い」。
子供が年老いた親を扶養すべきと考える韓国人は1988年、全体の90%を占めていた。それが、現在は3分の1まで減っている。
韓国人のモラル低下の問題ではなく、子どもの世代が生活苦に陥っている証拠であろう。その原因は、すでに指摘したように韓国経済の歪な構造にある。
さらに遡れば、朝鮮戦争に行き着く。人民義勇軍を派遣した中国共産党が、北朝鮮とともに元凶になるのだ。朴大統領は、こうした歴史的過程を無視し一足飛びに日本批判へ矛先を向けている。
朴大統領に必要なことは、韓国社会が直面する諸問題の根源が、どこにあるかという視点である。
日本の植民地政策が元凶であろうか。韓国が中国より早く近代化に成功した理由は、日本の近代化教育が行われた結果である。
朝鮮戦争後の経済復興では、日本の支援があったからである。その日本を恨み敵視することは間違っている。逆に、義勇軍を送って韓国を戦場にした中国へ接近している。価値倒錯と言わざるを得ない。
韓国は、日本の35年間の植民地時代をすべて否定しているが、韓国の近代化で果たした役割も冷静かつ公正に分析する必要がある。
日本は太平洋戦争に負けた原因を分析しており、軍国主義放棄を国是にしている。集団的安全保障が成立したとしても、自衛隊が韓国へ進駐することなど、全くあり得ない話しだ。
第一、メリットが存在しない。なにより、日本国民が猛烈な反対をするに違いない。日本におけるこうした民意の変化を、韓国は正確に把握して欲しいのだ。思いこみや曲解で、日本に反感を持ち続ける。それは、韓国にとって損失になるだけである。