韓国経済の「時限爆弾」!家計債務また増加、つぶせない住宅ローンバブル
産経
韓国経済の時限爆弾と同国メディアが呼ぶ家計の借金がまた膨らんだ。
家計債務の累計は、今年6月現在で1257兆ウォン(約113兆円)にのぼり、この半年で約50兆ウォンも増え、最高額を更新。
1年では約120兆ウォン以上増えた。
低金利の中、無理をしてでもマンションを購入しようと借金をする家計が増えているとみられる。
韓国政府としては、家計債務の圧縮を加速させたいが、住宅投資を冷え込ませる恐れがあり、いまだ抜本的な改革に踏み出せないでいる。
景気悪化で返済延滞が続出すれば、韓国経済への亀裂は避けらず、問題先送りへの懸念は強い。
借金膨張のわけ…建設会社仲介、元本不払い、チョンセ崩壊
家計債務の残高が1000兆ウォンにのったのは2014年末。
家計債務は、右肩上がりに膨らみ、韓国経済の大きな重しになっている。
なぜ、家計債務がここまで膨らんだのか。大きな原因は、住宅購入を容易にさせているローン制度にあるといわれる。
その代表格は集団ローンと呼ばれる仕組みだ。
建設会社が購入者の保証人のような形になり、銀行が資金を貸し付けつけるもの。
融資の審査が甘く、家計の身の丈を超えた多額の借金を作りやすくなると問題視されている。
ローン返済の仕方も日本とは異なる。
日本では、借金の元本を縮小して将来負担を軽くするため、前倒し返済する家計は多いが、
韓国では元本返済を猶予してもらい、利息だけを支払う方式を選ぶ家計が約7割にのぼるといわれ、
統計上の債務総額を膨らませる結果を生んでいる。
元本返済期限が迫れば、借り換えをして猶予期間をのばし、元本の支払いを逃れているので、家計債務が減りにくい構造にある。
韓国では土地・住宅価格の上昇神話が根強く残り、将来の一括返済をもくろむ家計が多いといわれる。
また月払いの家賃負担をなくす伝統的なチョンセという仕組みで借りられる物件が減ったことも影響している。
大家が借り手から多額の資金を預かり、金融市場や住宅投資で運用し、
月々の家賃をなくす制度だが、近年は低金利と景気低迷で運用先がなく、月払いの家賃に切り替えが進んでいる。
月々の家賃払いの負担感が住宅購入を後押ししている可能性がある。
韓国発の金融危機の火種
韓国での住宅市場の活況は、景気拡大によって生み出されたものではなく、官制市場の側面が強い。
放置しておくことは、金融危機の病巣を広げるのと同じ。
右肩上がりの成長が確実に見込める時代なら問題はないが、
中国の成長鈍化は鮮明で、同国との経済関係を強めてきた韓国の先行きには不透明感が増している。
韓国の家計債務問題は、
リーマン・ショックを引き金となった米国の住宅ローンバブルの崩壊になぞられ、
「韓国版サブプライムローン問題」に例えられる。
いつ、何をきっかけに債務不履行が続発し、金融システム不安につながるかはわからず、韓国はアジア発の金融危機の火種を抱えている。
韓国政府も対策に手をこまねいているわけでない。
住宅の担保価値を重視する傾向にあった住宅ローンの審査基準のガイドラインを昨年末に改め、借り手側の所得などの信用力を重視するようにした。
韓国・ハンギョレ紙(日本語電子版)によると8月、韓国政府は新たな家計負債の管理策を発表した。
それによると、公共宅地の供給量を縮小、建設会社が宅地購入する際の保証条件を厳しくするのが柱だ。
しかし、これらの対策が、家計債務圧縮の特効薬になるとみる向きはない。
朝鮮日報(同)は、「政府は安全な道を選んだ」と指摘。
住宅供給を絞り込んで、ローンの自然減を誘う「生ぬるい対策」に終始していると伝えた。
ハードランディングは、不動産市況を冷え込ませ、景気後退の底を深くする恐れがある。
このため、韓国政府は、慎重なかじ取りを余儀なくされている。
住宅市場や家計を守るために、危険水域にある債務問題の悪化を食い止められないという「ジレンマ」(朝鮮日報)に陥っており、打開策に苦慮しているようだ。(9月6日掲載)