平成太平記

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韓国、幽霊のように飛び交う亡国論「朴大統領」無策のツケ

2016年09月28日 16時12分52秒 | Weblog

中国派の存在を浮彫

2016-09-28

勝又壽良の経済時評

        

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良 

 

韓国経済は大きな曲がり角に来た。世界有数の海運会社の韓進が倒産したからだ。

倒産前、再建策を巡って政府・銀行・韓進は意見調整したが、最後まで折り合いがつかず、最悪の結果になった。

「倒産」を選んだ政府と銀行は、「韓進の取り扱い貨物量のうち韓国荷主が10%強であるから倒産しても韓国経済には大した影響がない」と判断したもの。

 

この点が大きな間違いであった。韓国の荷主が少ないことは、逆に海外荷主が多いことで、倒産による国際的な影響の大きさに思い至らなかった。

国際物流の一翼を担う韓進の経営蹉跌が、国際的にいかなる波紋を描くか。

こういう問題意識が欠如していたのだ。

物流は金融機関などと並んで国際的な「インフラ」である。

海運会社に国際輸送を委託すれば、それば支障なく目的地へ届けられる。

そういう前提で輸送ビジネスが成立している。

韓国は、その国際的な信頼の絆を自ら断ち切ったに等しい。

「ナショナルフラッグ」(国旗)を立てている海運会社は、もはや単なる「一私企業」でないのだ

危険な「経済音痴」

朴大統領は、いかなる問題意識であったか

『朝鮮日報』(9月14日付)は、次のように伝えている。

 (1)「朴槿恵(パク・クネ)大統領は9月13日の国務会議(閣議)で、

海運最大手、韓進海運の経営破綻(はたん)による物流混乱と関連し、

『企業が積極的に再建に努めず、政府が全てを解決してくれるだろうと考える企業経営方式は決して黙認しない』と述べた。

また『韓進海運は自助努力が全く足りない』と指摘し、

構造調整対象の企業を正しく再建させるためには、

経営者側が懸命な自助努力をして体質改善を図った場合に限り、債権者の金融機関が支援すべきだとの考えを示した。

朴大統領はさらに、韓進海運の事態を機に、企業の無責任さとモラルの欠如が経済全般にどれほど大きな被害をもたらすかを皆が直視すべきだとし、

『海運がまひすれば政府は支援せざるを得ないだろうという気楽な考えが、国内の輸出入企業に大きな損失を与えた』と批判した」。

 一般論として言えば、朴大統領発言は正しいことを言っている。

だが、韓国の大企業=財閥企業は、経済民主化の精神に反しており、所有と経営の分離が行われていない点で、極めて未成熟である。

具体的には、「循環出資」という出資関係による他企業支配は、「ネズミ講」的なものだ。

最初の一社に出資すれば、その会社名で他社の株式を所有して支配する。

この関係を次々と続けて行けば、財閥企業集団が成立するのだ。

この「循環出資は」、既存の財閥には認められて、新規には認可しない措置になっている。

それほど問題のある出資形態が、既存企業に認めていることは極めて不合理である。

この状態を放置して、「企業責任論」を発言しても説得力はないのだ。

朴大統領は、自らの大統領選で「経済民主化」を公約したが、当選後は頬被りしている。

財閥の経営責任を云々する前に、自らの責任を問わなければならない局面だ。

韓国財閥が、これほど不況抵抗力を失っているのは、財閥制度が現代に合わない結果である。

朴大統領は、「海運がまひすれば政府は支援せざるを得ないだろうという気楽な考えが、国内の輸出入企業に大きな損失を与えた」との発言は、責任を転嫁している。

政府こそ、韓進海運の韓国荷主の比率が10%で、残りは海外荷主であることを理由に倒産を容認した。海運業の国際インフラという認識欠如が鮮明である。

 『ブルームバーグ』(9月15日付)は、韓進海運倒産の影響が釜山港に現れている状況を次のように伝え。

 (2)「韓進海運が法定管理(会社更生法に相当)を申請した8月31日以降、釜山港にはコンテナが積み上がり、港はまひ状態に陥っている。

同社の経営破綻により、アジア周辺国で顧客離れの進む可能性が高まっている。

韓進海運の経営破綻は最悪のタイミングで起こった。

9月はメーカー各社が感謝祭やクリスマスの年末商戦に向け店舗の在庫を補充するピーク期に当たる。

貨物の所有者は、商品の代替発送手段の確保に奔走していると港湾当局者は明かす。

地方当局のデータによれば、ソウルから南西約325キロに位置する釜山港は韓国を出入りするコンテナ全体の70%余りを取り扱っている。

韓進海運は先週まで釜山港経由で流入するコンテナの約10%を占めていた」。

 韓国最大の貿易港は釜山である。韓進海運が倒産した以降、釜山港埠頭にはコンテナが積み上がり、港はまひ状態に陥っている。

例年9月は、感謝祭やクリスマスの年末商戦に向け店舗の在庫を補充するピーク期に当たる。

その最盛期に起こった倒産だ。

朴大統領流に言えば、倒産は企業責任であるが、物流業の倒産は荷主への影響が大きい意味で、倒産企業の責任論では片付けられない広範な問題を抱えている。

 (4)「釜山市のキム・ギュオク経済副市長は、『市の最大の懸念は長年にわたるアジアの海洋拠点としての評判を失うことだ。

船舶所有者の釜山港離れが進むかもしれない』と懸念する。

これにより、アジアで競合のコンテナ港に事業がシフトする可能性がある。

釜山市は韓進海運のターミナルがある金海国際空港の近くに新たに港湾施設の増設を計画していた。

IBK経済研究所のチョン・ジュンモ研究員は、『韓国にとって最悪のシナリオは、東京やシンガポール、中国など他の港に顧客が奪われることだ。

低い港湾コストが釜山港の最大の強みだった。韓進海運が撤退すれば韓国輸出企業の負担増にもつながる』と指摘した」。

韓進海運の倒産によって、釜山港がアジアの海洋拠点としての評判を失う。

また、船舶所有者の釜山港離れが進むかもしれないと、地元の釜山市では懸念している。

釜山港の地盤沈下は、東京やシンガポール、中国など他の港に顧客が奪われることを意味する。

つまり、日本・シンガポール・中国などの海運会社によって、韓国企業の積荷は輸送される可能性が強まるのだ

(5)「釜山市では以前から主力産業の造船業の低迷に悩まされてきた。

巨済市に拠点を置く世界2位の造船会社、大宇造船海洋は労働力を20%、生産能力を30%削減する見通しを示しており、

釜山港の企業団体は韓進海運が救済されなければ同市でさらに1万1000人が失業する可能性があると予想している。

造船業の衰退による影響を巨済市で目の当たりにしたタクシードライバーのクォン・オクボンさん(68)は、『失業者は1万1000人を上回るだろう。造船会社の経営悪化で多くのレストランやパブが廃業した。

韓進海運が廃業すれば釜山には大企業がいなくなる』と話した。

レストランやバーが立ち並ぶ釜山の繁華街でコーヒーショップを経営するリー・スーマンさん(57)は、『周辺の消費は縮小し始めている。潮目が変わりつつある』と話した

韓進海運が救済されなければ、釜山港の関連企業は1万1000人が失業する可能性があると予想されるという。

韓進海運は過剰債務に陥っているので、救済不可能説が支配的である。

こうなると、失業者が増えて社会問題化する。

すでに、巨済市に拠点を置く世界2位の造船会社、大宇造船海洋は倒産を免れたものの労働力を20%、生産能力を30%削減する見通しを示している。

この結果、失業者の急増が懸念されるのだ。

こうして大型倒産による失業者増加が、すでに周辺地域の小規模事業に影響を及ぼし始めている。

 朴大統領は、先のように「企業責任論」を主張するならば、「経済民主化」による財閥経営の欠陥を是正するべき政府の責任を明確にすべきであろう。

経済活性化では、財閥解体による中小企業の競争力回復が目的となっている。

底辺企業の底上げを実現できれば、街の零細企業にも光が差すのだ。

 現状では、政府も財閥も「責任」を回避しているので、これが「韓国亡国論」を生み出す背景になっている。

当事者能力の欠如と言っても良いが、確かに亡国論が出てきても不思議はない。銘々が勝手な理屈で責任を逃れようとしているからだ。これこそ、韓国最大の欠点である。

 中国派の存在を浮彫

『韓国経済新聞』(9月14日付)は、「幽霊のように飛び交う亡国論」と題するコラムを掲載した。筆者は、 ユン・ジョンヨン元サムスン電子副会長である。

 (6)「約40年前、日本の有力月刊誌『文芸春秋』で『日本の自殺』という題名の文が掲載されたことがある。

古今東西を問わずすべての国家が外敵によるものではなく内部的な問題で自ら崩壊したという主張だった。

その過程であらわれる崩壊の共通分母は利己主義とポピュリズムの蔓延だった。

かつて500年以上にわたりヘレニズム文明の花を咲かせた初期ローマ帝国の崩壊もまた例外ではなかった。内部で培養された亡国のウイルスが結局は国家をむしばんで滅びるようにしたのだ」。

約40年前に、『文芸春秋』が『日本の自殺』という特集をしたという。その結論は、国家が外敵によるものではなく、内部的な問題で自ら崩壊したという主張だそうである。

筆者の ユン・ジョンヨン氏は、日本の平成バブル崩壊を「国家崩壊」と捉えているのだろう。

もし、そうとすれば見当違いも甚だしい。この議論から言えば、歴史上のバブル崩壊を経験した、オランダ・英国・米国もすべて「国家崩壊」という烙印を押される。

だが、前記三ヶ国はその後も発展している。英国は、第一世界大戦時までは世界覇権国であった。米国もバブル崩壊後の第二次世界大戦を経て、世界覇権国へ駆け上って現在に至るのだ。

 平成バブル崩壊は1990年である。

『文芸春秋』の記事が出たのは約40年前とすれば1970年中頃だ。日本の高度経済成長の最終時期である。

その後、バブル崩壊まで15年を経過している。『文芸春秋』記事が、日本には当てはまらない。

ユン・ジョンヨン氏は、日本を引き合いに出しているが、その適例はむしろ韓国である。

「利己主義とポピュリズムの蔓延という内部的な問題で自ら崩壊する」懸念は、韓国が最も公算が大きい。政府と企業の無責任ぶりが目立つからだ。

 (7)「今日の韓国は対外・対内的な環境が旧韓末(朝鮮時代末期から大韓帝国時代)に大韓帝国が滅びる時と似ていると話す知識人が多い。

なぜそうなのか。今、韓国はあらゆる部門で社会の基本が瓦解していきつつある。

いつになくリーダーシップが切実な時期に政治指導者は詭弁を並べるだけで国家が進む方向は提示できないまま、さまよっている。

国家の中長期ビジョンも新しい成長動力も霧の中だ。

彼らの頭の中には国家はなく、党と自身のための利己主義とポピュリズムだけがあるようだ。

国民が1つになって危機を克服しなければならない時期に国論は一層分裂してばかりいる。

最近では国民と国家の安危と存立が直結した国防安保ですら互いに分裂して争っていると『天人共怒』することだ。もし実際に危機が迫るなら、どうなるのだろうか」。

 韓国の現状は、旧韓末(朝鮮時代末期から大韓帝国時代)に大韓帝国が滅びる時と似ているとの説が、しばしば登場している。

韓国に米国製のTHAAD(超高高度ミサイル網)を設置する問題では、明らかに国論が分裂している。

野党と民主団体は、中国寄りの立場だ。

中国は、自らの安全保障を危険にするという論拠で反対している。

中国は、すでに韓半島や日本を視野に治めた大型レーダー基地を2カ所もつくっている。韓国は、北朝鮮だけ詮索するレーダーである、といくら説明しても聞く耳を持たない強引さである。

韓国の野党と民主団体が、この中国の立場に賛成しているのだ。

韓国の安全保障を棚上げして、中国の利益に奉仕するという異常な行動である。

旧韓末の朝鮮国内は、日本派・中国派・ロシア派の3つに分かれて勢力争いをしていた。

日本派は、明治維新に成功した日本を見本とした近代国家を作ろうとした。

中国派・ロシア派は、近代化を拒否する「守旧派」であった。

朝鮮皇帝のお后が、ロシア勢力と結託して日本派を窮地に追い込む策略を練っていたと指摘されている。これが、旧韓末の政治的な疲弊をもたらし自滅した理由である。

 現在の韓国政治は、日本を徹底的に敵視している。

「反日法」をつくってまで、日本派を根絶やしにする方針だ。その分、中国派を優勢にさせている。

米国との連携派は、中国派によってしばしば追い込まれるが、そのたびに「反日」をテコに勢力回復を図って来た。

日本派は表面的に消えてしまったが最近、ぼつぼつ意見を言う勇気を持ち始めたようだ。韓国の政治と経済の危機が、これまでの沈黙を破って発言させているのだろう。

 韓国政治は、米国派と中国派の間で揺れているように、民主主義国という自覚が薄弱である。

これが、経済政策では政府と企業の無責任体制へとつながっている。

民主主義に基づく確固たる信念があれば、自由主義経済の根幹を守りつつ、企業の国際インフラという認識も育ったであろう。

それが、まるで存在しないのだ。韓国経済は市場経済の「奇形児」とも言える。要するに、中途半端である。

 (8)「このような状況で最初に窒息するのはまさに国家経済の主体である企業だ。

世界的な経営者を何人保有しているのかが国力の尺度になる時代に、韓国はどこへ向かっているのか心配だ。

企業もうまくいっている時に危機に備えなければならない。

この時に油断して備えられないまま危機にぶつかれば対応無策で奈落の底に落ちるほかはない。

世界的な企業もこうした経験を繰り返す。だが韓国企業は未来に対応するどころか四方から加えられる企業たたきに戦々恐々としている状況だ」。

 韓国で、中国派が勢力を持っているようでは、市場経済についての認識が薄い証拠である。

拡に励み、周辺国を格下に見る中国へにじり寄ること自体が、韓国政治の自殺行為であろう。

韓国は中国へ敵対せよと煽るのでなく、民主主義国としての矜持を持つべきなのだ。

専制主義は民主主義の「敵」である。

なぜなら、個人の自由を束縛して軍国主義を煽る危険な存在であるからだ。

韓国の中国派は、そのことの認識が欠落している。

それが、韓国の政治と経済に微妙な影を落としている。

今回のTHAAD問題は、韓国内の中国派の存在を浮彫にしている。韓国の民主主義は中途半端なのだ。

 

(2016年9月28日)