韓国、与党に亀裂 文書漏洩問題
「非朴」派、大統領に離党要求
2016/11/8付
日本経済新聞 朝刊
【ソウル=峯岸博】大統領文書を友人に漏洩した問題で、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を支える与党セヌリ党内の亀裂が表面化した。
朴大統領と距離を置く「非朴」派の実力者、金武星(キム・ムソン)前代表は7日、朴氏に離党勧告を突きつけた。野党も大統領の「棚上げ」を狙って勢いづき、朴氏は一段と追い詰められつつある。
「国民が委任した大統領が崔順実(チェ・スンシル、容疑者)一家の不当な利益追求に利用された」。
ソウルで記者会見した金前代表は大統領を公然と批判。「党の支持基盤である保守層の壊滅を防がなければならない」と強調した。
金氏は次期大統領選の与党候補の一人に名前が挙がる非朴派の領袖格。
この日は党指導部の最高委員で唯一の非朴派議員も辞任を表明した。女性や若手の政治家からも離党要求が出ている。
政党の基盤を失えば、朴氏は窮地に追い込まれる。
野党が検討する大統領の弾劾訴追案の発議は国会議員(定数300)の3分の2の賛成が必要。
171人の野党系議員(無所属を含む)だけでは届かないが、与党議員129人のうち50人程度は非朴派とみられる。うち30人程度が同調すれば可決に持ち込める。
先週末の世論調査で大統領の支持率は5%にまで低下。ソウル中心部で5日に開いた朴氏退陣を求める集会には市民らが大挙参加した。
朴大統領を擁護するのは李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表らセヌリ党の「親朴」派などにとどまる。
事態打開へ向けて、3日に就任した韓光玉(ハン・グァンオク)大統領秘書室長は7日、セヌリ党の李代表と会談。
朴氏の意向として(1)8日か9日に与野党3党の代表と会談を望んでいる(2)2日に指名した金秉準(キム・ビョンジュン)首相候補の人事撤回も議題にできる――と伝えた。
7日発表の世論調査によると、朴氏が捜査の受け入れを表明した4日の国民向け談話の後、セヌリ党支持層の大統領支持率は上昇した。
朴氏は世論を見極めつつ、野党が求める首相候補の指名撤回や、与野党合議による挙国一致内閣の受け入れも視野に入れて事態打開を図る考えとみられる。
勢いづく野党は二正面作戦を描く。まず首相指名の撤回と挙国一致内閣の実現で、朴大統領の権限骨抜きを狙う。
最大野党「共に民主党」の報道官は7日、朴氏が要求を受け入れない限り会談に応じない考えを示した。
朴氏が要求を拒めば、弾劾訴追案の発議を検討する。
ただ即時の発議にはためらいがある。
仮に可決して職務停止に持ち込んでも、可否を審理する憲法裁判所が罷免に値しないと判断すれば野党が逆境に立つ。
弾劾可決の唯一の例だった2004年の盧武鉉大統領のケースは後に棄却され、大統領が職務復帰した。
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