平成太平記

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韓国、FRB量的緩和終了でアジア最大打撃 投資マネー流出危機 IMF試算

2014年10月31日 16時12分08秒 | Weblog

韓国、FRB量的緩和終了でアジア最大打撃 投資マネー流出危機 IMF試算

2014.10.30

産経  ZAKZAK


29日、量的緩和終了の速報が流れるニューヨーク証券取引所のモニター。早期利上げとなれば韓国など新興国への影響も小さくない(AP)

 米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は29日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、市場に大量のお金を供給する量的緩和政策を終了すると発表した。

今後は事実上のゼロ金利政策の解除時期が焦点となるが、米国が早期利上げに踏み切れば、新興国から投資マネーが流出することも予想される。

国際通貨基金(IMF)は「アジアで最も打撃を受けるのは韓国」と試算。為替相場では再び円安ウォン高が加速し始めた。

 FOMCの動向には世界の市場関係者が注目しており、相場への影響も大きい。量的緩和終了を受けて、29日の東京外国為替市場では1ドル=109円近辺まで急速に円安が進んだ。

 FRBは声明で、米国債などの購入規模を現行の月150億ドル(約1兆6300億円)から来月にはゼロにすると正式に表明。

主要政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年0~0・25%に抑え、事実上のゼロ金利を「相当な期間続ける」とした。

 ただ、市場で来年半ば以降と想定されているゼロ金利解除の時期をめぐっては、雇用や物価の動向次第で前後するとも言及。早期利上げの可能性も排除しなかった。

 米国の量的緩和は2008年のリーマン・ショック直後の経済の落ち込みから脱却するために導入され、12年9月から第3弾(QE3)が実施されてきた。

QE3の資金供給額は1兆6000億ドル(約174兆円)を超え、過去2回も含めると総額は4兆ドル(約435兆円)近くに上る。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)米国エコノミストのガイ・バーガー氏は「ゼロ金利の解除、つまり利上げは来年6月という従来の見方に変更はない」としているが、「

気の早い投資家が前のめりで新興国から資金引き揚げに動くのではないか」(米系運用会社)との見方もある。

 昨年5月にFRBのバーナンキ前議長が量的緩和縮小を示唆すると、新興国の株や通貨が急落した「バーナンキ・ショック」も記憶に新しい。

 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は「景気回復の強さを背景に、利上げ時期の前倒しも想定される」とし、「米長期金利が上昇すれば、

日米の金利差拡大を手掛かりに円相場は円安ドル高の流れになる。当面は1ドル=110円を目指し、その後さらなる円安余地を探る展開となるだろう」とみる。

 量的緩和を実施している日本にとって米国の緩和終了は円安要因となり、輸出産業にとっては望ましい方向だ。

一方、ウォン高で輸出産業の業績が悪化している韓国にとっては状況は異なる。29日の為替市場では対ドルではウォン安となったものの、対円ではウォン高が進行したのだ。

 「海外投資家の資金が国外に流出することへの警戒も強い。1990年代に短期資金が流出して通貨危機を招いたトラウマもある」(前出の米系運用会社)という。

 米国が早期に利上げを実施した場合のリスクについて、聯合ニュースなど複数の韓国メディアが報じている。

IMFは韓国のシンクタンク、対外経済政策研究院(KIEP)と共同で開いた会合の中で、アジア・太平洋地域への米国の利上げの影響について試算した。

それによると、米国が早期利上げに踏み切って競争率が低下、金利が急上昇した場合、韓国の年間の国内総生産(GDP)成長率を0・98ポイント下押しする。

これは日本(同0・86ポイント)や中国(同0・79ポイント)を上回り、アジアで最大の衝撃度になるという。

 欧州のデフレ懸念や中国など新興国経済の減速があり、米国も失業率は改善されたが賃金は伸び悩んでいるなど不安要素が多く、イエレンFRB議長も金融引き締めに慎重な“ハト派”とされる。

一方でFRB内には、金融緩和の長期化による資産バブルなどを警戒して早期利上げを主張する“タカ派”もおり、今後攻勢を強める可能性もある。

 米国の景気が減速すれば世界経済に大きな影響が生じるだけに、利上げ観測をめぐって投資家が右往左往することもありそうだ。


朴政権の二股政策は破綻寸前 中国インフラ銀の参加めぐり米中が強烈圧力 

2014年10月31日 11時44分18秒 | Weblog

朴政権の二股政策は破綻寸前 中国インフラ銀の参加めぐり米中が強烈圧力 

産経 ZAKZAK

2014.10.29


24日に北京で開かれたアジアインフラ投資銀行の調印式。韓国は不参加だったが…(AP)

 韓国の二股政策が破綻寸前だ。中国主導で設立を予定する銀行への参加はひとまず見送ったが、中国は韓国を自陣営に引きずり込もうと圧力をかけ続ける。

一方の米国は、韓国の「親中反日」路線が東アジアの安全保障を壊しかねないと警戒を強める。

米中を手玉に取るはずだった朴槿恵(パク・クネ)外交だが、いまや股裂き状態で、経済の失速も止まらない。

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中国の習近平国家主席肝いりで設立を目指す国際金融機関だ。

中国が50%を出資し、本部を北京に置くという事実をみても、中国による中国のための銀行であることは明白だ。

 日米など先進国主導の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)に対抗するとともに、人民元をドルに匹敵する国際通貨に育てる思惑もある。

「国際通貨基金(IMF)や世界銀行体制、そしてADBなど、いわば自由主義体制への中国の挑戦」と嘉悦大の高橋洋一教授は指摘する。

 24日の調印式に参加したのは、中国のほか、インドネシアを除く東南アジア諸国連合(ASEAN)の9カ国、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モンゴル、ウズベキスタン、オマーン、カザフスタン、カタール、クウェートの計21カ国。

 先進国は参加せず、中国は当てが外れた形だ。

融資基準やガバナンス(企業統治)が不透明で、麻生太郎財務相は「融資に対する審査能力はあるのか」と実務能力に疑問を呈した。

調印式に参加しなかった韓国だが、当初は中国の誘いにまんざらでもなかったようだ。

「AIIBの本部誘致を韓国に主張するのが妙手」との報道が出るなど、米中の間で好条件を引き出すカードとして利用すべきだとする論調もあった。

 中国の働きかけも積極的で、中央日報によると、調印式前の21日に訪韓した唐家●(=王へんに旋)(とう・かせん)元国務委員が、朴大統領にAIIB参加を繰り返し要請したという。

 韓国の崔●(=日の下に火)煥(チェ・ギョンファン)経済副首相は、出資形態などの問題が解決できれば「参加できない理由はない」とまで語っていた。

 これに対し米国は、AIIBに参加しないよう韓国に強く要請、米国と中国とどちらに付くのか踏み絵を迫った。

北朝鮮の金正恩体制に不安定な兆候もうかがえるなか、韓国は安全保障で米国に依存するしかない。

有事の際の作戦統制権を米軍主導の米韓連合軍から韓国軍に移管する時期について、韓国は期限を明示せずに延期することを米側に要望していた。

米韓両政府が延期で合意したのはAIIB調印式前日の23日。絶妙すぎるタイミングだった。

 ただ、米国側の韓国に対する視線は厳しくなっている。

米財務省の為替報告書で「実態より為替を安く誘導するため、不透明な介入を続けている」と、中国と並んで韓国を非難した。

 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を名誉毀損(きそん)で起訴し、出国禁止としている件についても米国務省のサキ報道官は「(米政府は)言論と表現の自由を支持する」と強調。

韓国の人権感覚に疑問を呈した。

安全保障でも火種は残る。

米軍の地上発射型「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備について、韓国側は明確な回答を避けている。

中国共産党の機関紙、人民日報系の環球網は、THAADが中国に向けられるとして「中国は韓国の最大の貿易パートナーである。

中国庶民の嫌韓ムードが高まればどうなるか、想像に難くない」と脅しめいた記事を掲載した。

 ただ、中国に依存した朴大統領の経済政策は裏目に出ている。

中国経済の成長鈍化を受けて、7~9月期の輸出は前期比2・6%減に。製造業もマイナス成長となった。

実質国内総生産(GDP)成長率も4四半期連続で0%台と低迷する。



 週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は「韓国がAIIBに参加しても経済的なメリットはほとんどない。

それどころか日米韓3カ国の関係に決定的なひび割れをきたすだろう」と警告する。

 AIIBは15年末までの発足を目指しており、中国は引き続き韓国に誘いの手を伸ばすとみられる。

前出の中央日報は「韓国は今回AIIBの創設メンバーから外れたものの、どのような戦略的選択をするかについて強いジレンマを抱えている」とする韓国外交筋の話を報じた。

外交失敗の傷は小さくない。


韓国、「金融危機時」上回る製造業不振「打開策はあるのか」

2014年10月30日 10時49分57秒 | Weblog

韓国、「金融危機時」上回る製造業不振「打開策はあるのか」

勝又壽良の経済時評

(2014年10月30日)

5大産業に赤信号
利下げも効果薄し

日本経済の代名詞になった「失われた20年」が、韓国でも現実問題として浮上している。

中国経済の成長鈍化とともに、韓国経済が「道連れ」にされる恐れが強まっているからだ。

折角の「反日・親中」で中国へ接近したのも束の間である。とんだ誤算を招いたと言うべきだろう。

これでは、日本の反感を買っただけの無駄な「外交戦略」転換であった。

今年1~7月の対中中間財輸出は、前年同期比0.6%増にとどまった。

中国企業が自力で中間財を生産し始めたためだ。

韓国が中間財や部品を中国に輸出し、中国企業がそれを加工して最終製品を欧米などに輸出する。

こういう貿易モデルが限界に達したのである。

韓国の対中輸出は、今年5~8月に4カ月連続で前年実績を下回っている。

対中輸出の不振を受けて、輸出品の構成を変え消費財やサービス関連に特化すべきだ。

こういう議論が盛んになっている。現実は、簡単に方向転換できるはずもない。

頼みの「中国向け輸出」が、この5~8月連続で4ヶ月も前年実績を下回ってきた結果、にわかに危機感を強めている。

何のために、「反日・親中」へ衣替えしたのか。

皮肉な結果としか言いようがないのだ。

輸出が不振とあれば、いよいよ「失われた20年」が現実問題として登場する。

日本企業と違って、黙々と研究開発に打ち込む情熱もない。困ったときは、日本から技術を買ってくれば良い。こういった、過去の習性が働き出すのである。

5大産業に赤信号
『朝鮮日報』(10月21日付け)は、次のように伝えた。

① 「携帯電話端末、造船、石油化学、自動車、テレビなど韓国経済を支えてきた主力5大産業が揺らいでいる。

これら業種の売上高の伸びや営業利益率はいずれも急落している。全国経済人連合会(全経連)が5大産業の国内企業176社を対象に業績を分析した結果、次のような結果が出た。

(1) 携帯電話端末は、2012年に72%だった売上高の伸びが、昨年は31%に低下したのに続き、今年上半期にはマイナス9.4%に転落した。


(2) 造船業の売上高の伸び率は、12年に2.1%だった。昨年は0.3%増、今年上半期がマイナス0.9%と急落した。営業利益率は12年の4.1%が、昨年は2.0%、今年上半期がマイナス3.6%に悪化した。今年上半期だけで現代重工業グループは1兆3000億ウォン(約1310億円)、サムスン重工業は1000億ウォン(約100億円)の営業赤字を計上した」。

(3)9月の国別船舶受注量で、韓国は中国、日本に次ぐ3位に転落した。世界首位だった韓国の造船業の栄華は終わりを迎えるのではないかとの懸念も聞かれる。

(4)善戦していた自動車産業の売上高増加率は、12年の10.5%から昨年は5.2%、今年上半期は1.5%と低下を続けている。

② 韓国銀行が最近公表した、『2013年企業経営分析』によると、昨年の韓国の大企業による売り上げ増加率は、前年比で0.3%にとどまった。

これは世界的な金融危機の影響で企業活動が低迷した09年(0.7%増)をさらに下回る数字だ。

デロイト・コンサルティングのキム・ギョンジュン代表は、『韓国製造業の売上伸び率は0%台に転落したのは衝撃的だ』と語った。

③ 「こうした現象は世界経済の低成長が長期化していることに加え、経済が復活する日本と躍進する中国に挟まれた『サンドイッチ効果』などが原因に数えられる。

さらに2011年以降は30大企業グループ入りを果たす中堅企業がなく、経済的な躍動性が低下していることも影響している」。

全国経済人連合会(全経連)が5大産業の国内企業176社を対象に業績を分析した結果によれば、韓国企業は「敗色濃厚」である。

企業にとって「売上高」は収入源である。

その増加率が業種によっては微増どころか、マイナスに転じるという危機的な局面を迎えた。

昨年、韓国大企業の売上高増加率は、前年比0.3%にとどまった。

これは世界的な金融危機の影響で企業活動が低迷した2009年(0.7%増)をさらに下回る。

09年は、前年9月の「リーマンショック」の直撃を受け、世界的な不況に落ち込んだ年である。

昨年の韓国大企業の売上高は、この金融危機時をも下回る増加率である。事態は深刻だ。

09年当時は、世界経済危機によって「円」は国際的な避難通貨として買われ、「異常円高」になった時期である。

むろん、「ウォン安」であり韓国企業の輸出は伸びたが、国内的には混乱した。

昨年は、こうした混乱時の09年時を下回る増収率を余儀なくされた。

驚くほかない。その背景は、韓国企業が日本企業と中国企業に挟まれた「サンドイッチ」状態になった、と分析している。

この分析は正しいだろうか。

表面的に言えば、韓国企業は日中企業の「サンドイッチ」状態である。

韓国企業の技術開発レベルが、中国と接近してきたのであろう。同時に、中国企業は過剰生産によって「コスト割れ」販売をしている可能性が大きい。

「換金」目的で安売りしているので、韓国企業は価格面でさや寄せを余儀なくされている。

日本企業との関係では、「円安=ウォン高」が韓国企業の競争力を削いでいる。

主要100品目中で55品目が日本と競合関係にある。品質面では断然、日本が上回っている。価格面での接近ないし逆転現象が起これば、韓国製品に勝ち目があるはずもない。

こう見ると、韓国企業は袋小路に入ってきた。

以上の要因から見ると、「2013年企業経営分析」において惨憺たる結果に終わった最大の理由は、為替相場が大きな要因を占めていることを示唆している。

現に、韓国貿易保険公社が次のような対応を発表した。

10月16日から年末まで、対日輸出企業に対する為替変動保険料の特別割引率を、現行の20%から50%に拡大する。

為替変動保険は、為替相場が一定水準を上回って変動する場合に保険金を支払うもの。保険料の割引率拡大により、円安に苦しむ対日輸出企業の負担軽減を図る、というのだ。

円安=ウォン高になると、韓国経済は簡単に危機に落ち込むことがはっきりしている。

韓国経済は、超円高の蔭で咲いた「日陰の花」とも言えるのだ。

日本企業が血を吐くような思いで、合理化と研究開発を行って生きてきた。

それと反対に、韓国企業はその蔭で「のうのう」と生きてきたのである。

しかも、日本技術を掠め取るという「違法行為」も重ねてきた。

本来ならば、「反日」などと言える義理ではないはずだ。

国民性の違いからか、そうした配慮は絶無である。

利下げも効果薄し
『朝鮮日報』(10月16日付け社説)は、「過去最低の金利水準、景気回復の炎は再び灯るか」と題して次のように論じている。

④ 「韓国銀行金融通貨委員会は、8月に続き2カ月ぶりに政策金利を年2.25%から2.00%へと引き下げた。これにより、政策金利は世界的な金融危機直後の2009年2月から1年5カ月間続いた過去最低水準に並んだ。

しかし、今回の利下げが景気回復にどれほど効果があるかは推移を見守る必要がある。

韓銀は今回の利下げ効果を見守りながら、必要な場合には政策金利を1%台へとさらに引き下げる意思をはっきりと示すべきだ。

家計債務が再び急増しており、資本流出も懸念される中、政策金利をさらに引き下げることには負担もあるが、今は経済を再生することが最優先課題だ」。

10月15日から、韓国の政策金利は過去最低の年利2.00%へ引き下げられた。

前回は1年5ヶ月続いたが、今回はそうした短期間に終わる保証はない。

むしろ、さらなる引き下げが視野に入っている状況だとしている。

この記事では、利下げが家計債務を増やす危険性を指摘している。資本流出のリスクも存在している。

だが、これらリスクを冒しても経済再生が最優先事項だと、危機感を露わにしているのだ。

実は、「韓国の家計負債が1000兆(約101兆円)を越えた。

家計負債といってもおかしくない自営業者のローン140兆ウォンを含めれば、1180兆ウォンとなり、国内総生産(GDP)よりも多い。

公共部門を含む政府負債もまた、遠からずGDPを越えると予想されている。

一度ひっかかると並大抵のことでは抜け出せないのが負債の罠だ。

通貨危機と世界金融危機はどちらも負債が招いた混乱と危機だった」(『中央日報』10月21日付けコラム)。

前記の朝鮮日報社説とは違う角度から韓国経済を論じている。

政策金利をさらに引き下げれば、資本流出と家計債務の増加が起こる。

こういう指摘を、どのように理解すべきかである。日本では、事実上のゼロ金利を続けているが、家計債務が増えた事実はない。

資本流出も起こらなかった。年金制度によって、老後生活は一応賄われている結果であろう。

韓国の場合、年金は「雀の涙」程度だ。

年金保険料を納付した期間の生涯平均所得に対する年金の占める指標として、「実質所得代替率」が使われている。

これによると、今年の実質所得代替率は18.1%。生涯平均所得が月額200万ウォン(約20万円)のケースでは、36万2000ウォン(3万6200円)の年金を受けるということだ。

日本では現在、約5割となっている。2割弱の韓国と、5割の日本では大きな差がある。

平均月額3万6200円程度では老後生活が困難になる。

こうなると、金利が下がるから自宅を担保に借り入れる人々は増えてくる。

悪いことに、韓国では過去に借金棒引きの「徳政令」を出している。

これが、人々の「借金依存」への潜在的な意識を煽っているのだ。

「家計負債が1000兆(約101兆円)を越えた。家計負債といってよい自営業者のローン140兆ウォンを含めれば、1180兆ウォンとなり、国内総生産(GDP)よりも多い」。

韓国の利下げによる負の連鎖が、家計債務を増大させるとは意外である。収入と支出のバランスをとる。そういう堅実な家計管理が苦手なのか。

韓国では、利下げから資本流出が起こってくると構える。

日本ではゼロ金利にするほどの「異常円高」に見舞われた。

外部から寄せる日韓経済への信頼度は、これほど違っているのであろう。

韓国が最近、日本へ接近する姿勢を見せる背景には、この資本流出時の「通貨スワップ」発動問題が控えている。

韓国は、中国と「べったり」姿勢であるが、余り中国の世話になりすぎると「後が怖い」のだ。

そこで再度、日本へ接近して「通貨スワップ増額」を狙っているに違いない。

韓国の対日外交の裏には、日本に対してなにがしかの金銭的利益を求める動機が隠されている。

⑤ 「利下げ、財政出動など資金供給だけで景気を浮揚させた場合、回復は長続きしない。

2010年に続き再び危機に直面している欧州や、20年間の長期不況を経験した日本の例がそれを物語る。

政府はこの機に問題企業と不況業種の構造調整を行い、サービス業種で新たな成長源を探るという抜本的な対策を立てるべきだ」。

日本の「失われた20年」の裏には、異常円高が長期にわたって続いたという側面がある。

バブルが崩壊した1991年の平均円相場は、1ドル=134円59銭である。

それが、2012年9月平均で78円17銭まで上昇している。

これでは、日本企業がどれだけ合理化努力をしようとも、円高によって吸収されてしまうのだ。

考え方によっては、よくぞこうした環境の下で、ひたすら研究開発を続けてきたものと驚く。

この忍耐を考えれば、日本企業はいかなる試練にも耐えられるはずだ。私は、心からそう思う。

韓国企業は、前記のような「超円高」の裏で「超ウォン安」を楽しんできた。

少しばかりウォン高になると、天地がひっくり返ったような騒ぎ方をする。

決め手の「技術」がないから国際競争力を失い右往左往する。

こうした事態を解決するには、内需を安定させることに尽きる。

財閥企業を解体させて国内競争を活発化させることである。

それには、韓国金融界の出直し的「イノヴェーション能力」を磨くことである。

韓国がやるべき道は、金融界の活性化策を進めるしかない。私の持論でもあるが、金融こそ一国経済の競争力を磨く原点である。


コリア半島の魂の叫び 宮家邦彦 (外交政策研究所代表)元外交官1

2014年10月28日 15時57分31秒 | Weblog

地政学と歴史からしか不可解な隣国を理解できない 

 

宮家邦彦 (外交政策研究所代表)元外交官

 

コリア半島の魂の叫び
――地政学と歴史からしか不可解な隣国を理解できない 

事大主義とは何か

 日本の嫌韓派の人々が韓国を批判する際によく使う言葉が、「事大主義」の弊害なるものだ。

事大主義といっても若い読者はあまりピンと来ないだろうが、北東ユーラシアの地政学を理解するうえで、「事大主義」は「華夷思想」「冊封体制」「朝貢関係」などとともに、必須の概念だといえよう。

 事大主義とは、「小」が「大」に事える、つまり、強い勢力には付き従うという行動様式であり、語源は『孟子』の「以小事大」である。

国語辞典によれば、「はっきりした自分の主義、定見がなく、ただ勢力の強いものにつき従っていく」という意味で、たとえば次のように使われる。

 事大主義とは朝鮮の伝統的外交政策だ。

大に事えるから事大。この大というのはむろん中国のことなのだが。つまり中国は韓国の上位にある国だったから、そこから侵略されても、ある程度仕方がないとあきらめる。

しかし、日本は韓国より下位の国だ、だから侵略されると腹が立つ。

上司になぐられても我慢できるが、家来になぐられると腹が立つ、という心理だ。(2013年12月16日付『NEWSポストセブン』)

 朝鮮は、中国に貢ぎ物をささげる朝貢国として存続してきた。大国に事える事大主義の伝統が抜きがたくある。

日本が近代化に懸命に汗を流しているころも、官僚らは惰眠をむさぼり、経済も軍事力も衰亡していた。

その朝鮮を国家として独立させ、西洋の進出に備えようというのが日本の姿勢だった。(2014年7月19日付『産経新聞』WEB版)

 以上の例では、いずれも「小国である自国はその分を弁え、自国よりも大国の利益のために尽くすべきである」といった「支配的勢力や風潮に迎合し自己保身を図る卑屈な考え」を意味している。

いずれにせよ、決して良い意味では使われていないようだ。

 コリア半島の歴代王朝は、漢族中華王朝だけでなく周辺の非漢民族王朝に対しても「事大外交」を続けてきた。

今風の言葉で言い換えれば、新羅・高麗・李朝などコリア半島に生まれた王朝の多くは、漢族系、非漢族系を問わず、周辺の強大国家に対し「事大」して、自国の安全保障を確保してきたということだろう。

 他方、新羅や高麗などは中華王朝と冊封関係に入りつつも、同時にこれら中華王朝と対決したり、自ら独自の年号を使用したりするなど、きわめて柔軟で強かな外交を繰り広げたケースもある。

事大主義がすべて卑屈な追随外交というわけでもなかったのだ。

 

主体思想と事大主義

 この韓国の「事大主義」を最も厳しく批判しているのが、他ならぬ北朝鮮だ。

ピョンヤンがいわゆる「米軍慰安婦問題」で韓国を「卑屈で間抜けな事大主義の売国奴」と非難している姿はほとんど滑稽としかいいようがないが、北朝鮮側にもロジックはそれなりにある。まずは関連記事をご紹介しよう。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は2014年8月11日付で、米軍慰安婦問題で韓国を非難する記事を発表した。

同問題について沈黙を続けているソウルに対し、「このような卑屈で間抜けな売国奴らが権力のポストに就いているので、南朝鮮では今も米軍犯罪行為が日ごとにはびこり、数多くの人民が不幸と苦痛の中で身もだえしている」などと論じた。

 同記事は、米軍慰安婦問題について「米帝と南朝鮮の傀儡こそ、人間であることをやめた野獣の群れ、恥しらず」であり、「米国の植民地支配」が続く南朝鮮の傀儡は「事大主義の売国奴」であり、現状が続くかぎり「人民はいつになっても羞恥と侮辱を免れることができず、不幸と災難から脱することができない」と主張した。

 同様の批判は、7月31日発の以下の朝鮮中央通信報道にもみられる。

 ある在米同胞が7月28日、事大主義に陥っている現南朝鮮の執権者を非難する記事を在米同胞全国連合会のホームページに掲載し、南朝鮮は米国の軍事的占領と植民地支配の下で自主権がひどく蹂躙されていると非難した。

また、南朝鮮の政治圏と事大勢力は自主的に生きようとする民族の志向と要求を拒否し、米国の南朝鮮に対する永久占領を哀願する現代版奴隷の本性を余地もなくさらけ出しているとも糾弾した。

 南朝鮮の現実は、まさに代を継いだ親日、骨髄まで親米、反民族的な現執権者の事大主義政策の所産であると暴いた。

同記事は、現執権者がこれからでも事大主義的根性を捨ててわが民族同士の立場に立って自主的に、民族の統一と平和を成し遂げるために努めるべきだと強調した。

 とまあ、こんな具合だ。いかに北朝鮮でも「事大主義」が軽蔑されているかがよくわかるだろう。それもそのはず、北朝鮮と朝鮮労働党の最も重要な政治思想である「主体思想」の意味する「自主・自立」とは、中華王朝などに対する「事大主義」の克服を意味しているからだ。

 

つねに変わる事大先

 事大主義が「はっきりした自分の主義、定見がなく、ただ勢力の強いものに付き従っていく」行動様式であれば、弱者の付き従うべき強者がつねに一定とは限らない。

そもそも定見がないのだから、定義上も、弱者は事大する先をときどきの状況に応じ、より強い相手に変えていったのだ。

 実際に歴史を振り返れば、コリア半島の事大主義の相手は必ずしも漢族中華王朝だけではなかった。

たとえば紀元前108年に漢王朝に挑戦した衛氏朝鮮は漢の武帝に滅ぼされ、それから約400年間、コリア半島の一部はいわゆる「漢四郡」により直轄支配されている。

 高句麗は1世紀に後漢、4世紀には非漢族の鮮卑族が建国した前燕、前燕を滅ぼしたチベット系といわれるテイ族の前秦に、それぞれ冊封された。

また、百済は唐に、新羅も北斉、陳、隋、唐に朝貢し、それぞれ冊封を受けている。

 10世紀にコリア半島を統一した高麗は、漢族の宋、明だけでなく、契丹系の遼、女真系の金、モンゴル系の元にも朝貢し、それぞれ冊封を受けた。

李氏朝鮮も漢族の明、女真族の清と冊封関係を維持した。李氏朝鮮が清の冊封体制から離脱したのは、1894年の日清戦争後のことである。

 下関条約締結後、コリア半島は1897年に大韓帝国として独立したが、1910年には全土が日本に併合され、第二次大戦後には大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国に分裂する。

伝統的な東アジアの冊封・羈縻関係ではないが、20世紀以降のコリア半島が日本、米国、中国の強い影響下にあったことは間違いない。

 以上のとおり、コリア半島歴代王朝は例外なく、なんらかの隣国と冊封・羈縻関係を結び、強者の臣下として臣従関係を誓わざるをえなかった。

しかし、こうした冊封・羈縻関係は必ずしも屈辱的なものばかりではなく、また、つねに変化していったものであることを忘れてはならない。

 このように、コリア半島の事大主義がかくも変幻自在であった最大の理由は、歴史的にコリア半島北西部に自然の要塞がなく、地政学的に脆弱だったからだと思われる。

高句麗・渤海滅亡後のコリア半島の諸国家は、中華王朝の一部や満州・蒙古の遊牧帝国など半島北方からの攻撃に抗しきれなかったのだ。

 とくに、高麗が元に降伏して以降、中華王朝はコリア半島独自の皇帝号の使用を厳しく制限するようになった。

さらに、李氏朝鮮末期になると、国内で政変が起きるたびに事大先が清、ロシア、日本、米国と代わっていった。事大主義の柔軟性とその限界を示す興味深いエピソードだ。

 いかに安全保障を確保するためのやむをえざる措置とはいえ、李朝末期の高宗や閔妃が事大先を次々に変えた行動はあまりに場当たり的な対応であった。

韓国の朴槿惠大統領の父親である朴正熙元大統領は生前、「民族の悪い遺産」の筆頭として事大主義を挙げ、その改革を真剣に模索していたという。

 こうみてくると、コリア半島の対中華事大主義は中華に対する「憧れ」を示すと同時に、中華王朝に対する「劣等意識」を反映したものでもあったことが理解できるだろう。

しかし、この「事大主義」に象徴される対中華「劣等感」は、じつは対中華「優越感」の裏返しでもあった。それを理解するための概念が「小中華思想」である。

小中華思想とは何か

「事大主義」と同様、韓国を理解するうえで非常に重要な概念が「小中華思想」だ。

この二つの概念は一見相反するようで、じつは「コンプレックス」という同じコインの表裏である。

この醜い劣等感・優越感の塊こそが、コリア人の魂の叫びなのかもしれない。

 小中華とは、中華文明圏のなかで、非漢族的な政治体制と言語を維持した勢力が、自らを中華王朝(大中華)に匹敵する文明国であって、中華の一部をなすもの(小中華)と考える一種の文化的優越主義思想である。

 コリア半島の歴代王朝の多く、とくに李氏朝鮮は伝統的な「華夷秩序」を尊重した。

表面的には中華王朝に事大する臣下という屈辱的地位に甘んじながらも、内心は自らを漢族中華と並ぶ文明国家と位置づけ、精神的に優越した地位から漢族中華以外の周辺国家を見下していたのだろう。

 ところが17世紀に入り、その李氏朝鮮が拠り所としていた明王朝が滅亡してしまう。

しかもよりによって、これまで李氏朝鮮が見下していたマンジュ(満州)地方の女真族が明を圧倒し、中華に征服王朝を樹立したのだ。当時の李氏朝鮮の儒者たちにとっては青天の霹靂であろう。

 それまで夷狄だ、禽獣だと蔑んできたマンジュの女真族には中華を継承する資格などなく、李朝こそが中華文明の継承者だと彼らが考えたのも当然かもしれない。

一方、実際には軍事的に清朝に挑戦することは不可能であり、李朝の仁祖は清への臣従を誓わざるをえなかったのだろう。

 夷狄とは文明化しない、すなわち儒教化しない野蛮人であり、禽獣とは人間ではなく獣に等しい存在をいう。

17世紀以降、コリア半島の指導者たちは女真系の清を徹底的に蔑む一方で、事大主義に基づいて、その夷狄・禽獣に朝貢を行なって冊封関係に入るという矛盾した世界観と行動様式を維持してきた。

 この屈折したコンプレックスの塊とも思えるコリア半島の住民の民族性は、李氏朝鮮以降、事大主義という劣等感と小中華思想という優越感を、心中で巧みに均衡させることによって維持されてきたのではないだろうか。

そう考えれば、激高しやすい韓国の国民性の理由も理解できるだろう。

 ならば、コリア半島の住人のこの屈折・矛盾した「事大主義・小中華」的世界観は、最近の韓国外交が大きく変節した原因なのだろうか。韓国は中国との関係をほんとうに全面的に見直すつもりなのだろうか。

 

ネオ民族主義の時代

 現在、世界各地で地政学的な大地殻変動が起きている。

半世紀近く続いた東西冷戦が終了してから早くも、四半世紀近くの年月が流れた。共産主義超大国・ソ連の崩壊によって真の平和と安定が始まるはずだった欧州では、皮肉なことに「ロシアの巨熊」が復活しつつある。

 顧みれば冷戦とは、共産主義と自由主義という二つのイデオロギー・国際主義同士の戦いであった。

幸いなことに、欧州各国の不健全で、ときには暴力的な民族主義は米ソ冷戦の陰で事実上、封印されてきた。ナショナリズムよりもインターナショナリズムが優先した時代だったからだろう。

 ソ連の崩壊とは、共産主義イデオロギーの崩壊だけでなく、それまで封印されてきたロシア民族主義復活の可能性をも意味していた。

危機感を抱いた欧州各国は、1990年代以降、旧東欧社会主義地域までEU・NATOを拡大し、ユーロ通貨まで創設してロシア民族主義の復活を回避しようとした。

 2014年3月のロシアによるクリミア併合は、こうした欧州諸国の過去20年間の努力が失敗したことを示す歴史的事件だ。

もちろん、あの不健全で、ときに暴力的な民族主義はロシアの専売特許ではない。英、仏、ハンガリー、ウクライナなどで極右ナショナリストが台頭していることは偶然ではない。

 このような「プレ冷戦的」「ロシア革命前」の醜い民族主義が復活しているのは欧州だけではなく、東アジアでも中国、韓国などにみられるとおり、各民族の不健全で、ときに暴力的な民族主義が徐々に頭をもたげつつあるとみるべきである。

 実際に、ロシアが欧州の陸上で行なっていることは、中国が東アジアの海上で行なっていることとなんら変わらない。

東西の二つの旧大帝国は、その不健全な民族主義的衝動により、近年失われた帝国の既得権を回復すべく、力によって国際秩序の現状を変更しようとしている。これが筆者の考える現実である。

 

コリア半島をめぐる国際情勢

 当然ながら、東アジア最大の地政学的地殻変動といえるのは中国の台頭だろう。

韓国・北朝鮮を含む周辺国は、この新たな地政学的大変動に対して、これまでの外交政策を適応させる必要に迫られている。

最近の韓国外交の微妙な変化の背景には、こうした計算が働いているとみるべきだ。

 そうであれば、最近日本を軽視し、中国を重視しはじめたようにもみえる韓国外交の変化には、

たんなる国内政治的事情だけではなく、最近の中国の台頭に対応した、より戦略的・地政学的な理由があると考えるべきではないか。

 しかも韓国を取り巻く国際政治状況は一時期、一世を風靡したポスト・モダニズムのいう“21世紀のグローバル化現象”などといった「新しいもの」ではない。

誤解を恐れずに申し上げれば、現在の韓国をとりまく国際情勢は欧州の状況と同様、100年以上前の李氏朝鮮末期の国際情勢に似てきているかもしれないのだ。

 北朝鮮からの軍事的脅威に直面していた冷戦時代の韓国にとっては、日米韓の三国連携こそが、対北朝鮮に対応するために唯一、機能する安全保障の枠組みだった。

しかし、改革開放を断行できない北朝鮮の国力拡大は不可能に近く、第二次朝鮮戦争が勃発すれば北朝鮮側の軍事的敗北と体制崩壊は、おそらく不可避だろう。

 だから北朝鮮は韓国に対して小規模の軍事的挑発を続けても、総攻撃を仕掛けることはない。

一方、米韓側から北朝鮮を攻撃することもない。戦争には勝利するが、ソウルは火の海となり、韓国経済が壊滅するからだ。双方が合理的判断を続けるかぎり、今後、コリア半島で大戦争が再発する可能性は低いだろう。

 つまり、北朝鮮は韓国にとって危険でありながらも「先のみえたエピソード」となりつつある。これに代わって韓国外交の中心課題となりつつあるのが対中関係だ。これからも韓国は、日清戦争以降考えたこともなかった巨大な隣国・中国との安定的関係を再構築すべく、さまざまな選択肢を模索していくのだろう。

 

コリア半島の魂の叫び 宮家邦彦 (外交政策研究所代表)元外交官2に続く

 

 


コリア半島の魂の叫び 宮家邦彦 (外交政策研究所代表)元外交官2

2014年10月28日 15時54分21秒 | Weblog

不幸な地政学的「罠」

 米国、ロシア、中国、インドなどは大規模国家だが、国連加盟国の大半は中小規模国家だ。

そのなかには、日本のように四方を海という自然の要塞に囲まれ、外敵の侵入を比較的容易に防ぐことが可能な海洋国家があれば、列強に囲まれた平坦な土地で、外敵の侵入を防ぐ自然の要塞をもたない大陸国家もある。

 後者の中小大陸国家の典型例は、独露に挟まれたポーランドや、ローマ・トルコ・ペルシャ・ベドウィンに囲まれたイラクだろう。

だが先に述べたように、コリア半島も地理的にみれば、ポーランドやイラクに勝るとも劣らない、不幸な地政学的「罠」に嵌った地域である。

 このコリア半島がポーランドやイラクと最も異なる点は半島、すなわち北部は大陸国家、南部は海洋国家の特徴を併せ持っていることだろう。

コリア半島の場合、北部はツングース・モンゴル系の狩猟・遊牧民、南部では韓族系の定住農耕民の影響がそれぞれ強かったようだ。

 筑波大学の古田博司教授は洞察鋭くコリア半島を「廊下」と見立てる。

たしかにコリア半島の北東側には険しい山々があり、外敵が侵入するルートは同半島北西側の比較的なだらかな地域、すなわち遼東半島から現在のピョンヤン、ソウルを通り、半島南西部に抜ける回廊しかないからだろう。

 しかも、この回廊は先が海で「行き止まり」だ。なるほど、だからコリア半島は「廊下」なのかと納得した。

軍事専門家はこの種の「行き止まり廊下」のことを「戦略的縦深がない」と表現する。撤退できる余地に限りがあるため、長期戦に耐えられない悲劇的地形という意味だ。

 だが、コリア半島の地政学的特徴は「廊下」だけではない。

「廊下」は遼東半島からコリア半島南部に至るルートだが、遼東半島北方にはもう一つの回廊、すなわち靺鞨、女真、契丹など多くの北方狩猟・遊牧民族が華北方面に向かうルートもある。これら二つのルートが半島北西部でつながっているのだ。

「渋谷駅のハチ公前交差点」

 こうした地形のコリア半島にとって、華北の中華王朝やマンジュ地方の遊牧・狩猟勢力の強大化はただちに、潜在的脅威を意味する。

一度外敵が件の「廊下」を通って南下を開始すれば、これを防ぐことは容易ではないからだ。こうした事態を回避するため、コリア半島の住民は二つの戦術を編み出してきた。

 第一は、潜在的脅威となりうる外敵が出現すれば、これとは戦わず、むしろ取り込み、朝貢し、冊封関係に入って自国の安全保障を確保する方法だ。

「名」を捨てても、しっかりと「実」をとる戦術だが、戦略的縦深のないコリア半島には、きわめて現実的な選択である。

 これに対して第二の戦術は、侵入した外敵と徹底的に戦うことだ。

戦うといっても、劣勢になれば歴代の王族は国民を置いて逃げることが多かった。外敵と徹底的に戦ったのはむしろ、一般庶民だったのかもしれない。

しかも、この半島の住民は外敵に激しやすく、ときに暴力的であり、少なくとも従順では全くなかった。

 先に述べたように、個人的にはコリア人の性格はイラク人に似ていると思う。

東西南北をトルコ、クルド、ペルシャ、ローマ、ベドウィンに囲まれ、チグリス・ユーフラテスに挟まれたこの肥沃で平坦な土地には自然の要塞がない。

コリア半島が「行き止まりの廊下」なら、イラクは「渋谷駅のハチ公前交差点」だろう。

 幸か不幸か、筆者はこのバグダッドに2回赴任している。

コリア半島と同様、イラク人も激しやすく、ときに暴力的で、外国人には扱いがたい人々だった。

しかし、二度の在勤を通じ、こうしたイラク人の国民性の根源が彼らの「強さ」ではなく、むしろ「弱さ」であることがわかってきた。

 イラク人に「激情的で、狭量で、自尊心ばかり強く、協調性に欠ける」人々が多いのは、過去3000年間、東西南北の列強がこの「渋谷駅のハチ公前交差点」の住人を殺戮・搾取しながら通りすぎていったからだろう。

イラクほどではないが、コリア半島の住人にも自然の要塞をもたない民族の地政学的悲哀を感じる。

 

征服コストの高さ

 コリア半島は、アフガニスタンにも似ている

。外国勢力が出兵・侵入しても国力を消耗するだけで、征服・支配のコストが高過ぎるからだ。

それは唐、元、清などの中華王朝や日本と半島との歴史をみれば明らかだろう。外敵にとってコリア半島は侵入しやすいが、支配が難しい土地だったと思われる。

 中国は漢の時代にコリア半島の一部を400年ほど支配したが、その後、少なくとも漢族の中華王朝がコリア半島を直轄支配したことはない。

コリア半島の内政に深く干渉した元朝ですら、高麗を併合することはなかった。それには二つの理由が考えられる。

 第一は、先ほど述べた征服・支配コストの高さだ。

コリア半島に侵入・干渉した唐、元、清はいずれも国力を消耗したのか、ほどなく滅亡している。

これが事実かどうかについては別途、検証が必要かもしれないが、少なくとも多くの韓国人はそのように考えていると聞かされた。

 第二の理由は、中華王朝にとってコリア半島支配は地政学的に不可欠ではないということだ。

歴史的にみても、中華王朝は遼東半島の維持を優先した。

彼らが戦略的に関心をもった幹線ルートは遼東地域から北方に抜ける回廊であり、コリア半島の「行き止まり廊下」はあくまで支線だったようだ。

 漢族中華王朝とコリア半島との関係も微妙である。

たしかに歴史上、両者が助け合ったことは何度かある。

たとえば7世紀に新羅は唐の支援を受け、百済と高句麗を滅ぼしたが、その後、唐は新羅を攻めている。李氏朝鮮も明の支援を受けて、侵入する日本の豊臣秀吉軍と戦っている。

 しかし、その李氏朝鮮も建国当初は拡張主義政策をとり、明を討つ計画を進めていた。

後金の圧力を受けた明が李氏朝鮮に援軍を要請した際も、当時の光海君は出兵こそしたものの、最終的には中立を守っている。

コリア半島と中華王朝の関係はつねに緊張感のある、是々非々の付き合いだったようだ。

 実際、コリア半島には清朝以降の中華に対する愛着や憧れが感じられない。

コリア半島の住人は北方の靺鞨・女真系狩猟民と南部韓族系の農耕民の混血であり、必ずしも全面的な「親」中華ではないらしい。

だからだろうか、今日、コリア半島にいまだ神戸・横浜のような「チャイナタウン」は存在しない。

 

漂流する韓国外交

 隣国に信頼できない魑魅魍魎をもちながら、自然の要塞のない中小大陸国家の住民は、外国人を基本的に信用しない。

自らがその地域の覇権を握る可能性は低いが、特定の列強だけに依存すれば、いずれ他の列強の反発を買い、中長期的には自らの安全そのものが危うくなるからだ。

 そのような国家の外交に「機軸」は不要である。

逆に必要とされるのは、隣接する列強の力関係に関する「バランス感覚」。

特定の列強に過度に依存しないことこそが生き残りの秘訣だからである。こうした発想は、ポーランド、イラク、クウェートなど魑魅魍魎に挟まれた多くの中小国の外交に共通している。

 コリア半島の住民にとって現在の中国、ロシア、日本、米国はいずれも信用できない大国である。

ロシアにはどうしても信頼が置けず、そもそも日本とは格が違うと思っている。米国は唯一の域外国だが、しょせんはコリア半島にとっては新参者に過ぎない。

 とくに、中国との関係は複雑だった。潜在的に最大の脅威でありつづけた漢族中華王朝に対する憧憬と劣等意識、非漢族王朝に対する反発と優越意識。

この二種類の(繰り返すが実際にはコインの裏表でしかない)コンプレックスを併せ持つのが、コリア半島の対中観の特徴なのである。

 

*本論考は、宮家邦彦氏の新刊『哀しき半島国家 韓国の結末』(PHP新書)の一部を収録したものです。

 

 


『韓国、中国減速で動揺』=スマホや化学、企業苦戦=『輸出2.6%減 急ブレーキ』=7~9月

2014年10月27日 17時38分46秒 | Weblog

日経新聞 2014年10月25日(土)

『韓国、中国減速で動揺』=スマホや化学、企業苦戦=『輸出2.6%減 急ブレーキ』=7~9月=
 韓国経済の中国依存リスクが顕在化してきた。 

韓国銀行(中央銀行)が24日まとめた7~9月の国内総生産(GDP)の速報値では、輸出が前期比2.6%減と、2008年の金融危機時以来の下げ幅を記録した。

中国の景気減速や中国企業の台頭でスマートフォン(スマホ)関連製品の輸出が滞ったのが大きい。

直接投資受入れや観光客の消費でも中国に頼る傾向が強まっており、過度の依存を警戒する見方も広がっている。

 「中国の北京小米科技(シャオミ)などとの競争激化でサムスン電子のスマホ輸出が影響を受けている面が出ている」。

韓銀の鄭頴澤(チョン・ヨンテク)経済統計局長は同日、輸出の減少について、異例にも企業名を挙げて説明した。

 7~9月のGDPは実質で0.9%増と、4四半期連続で0%台の成長にとどまった。
足を引っ張ったのが輸出と設備投資だ。

輸出は中国向けが主な液晶表示装置(LCD)や化学製品が伸び悩み、設備投資は航空機や自動車関連など輸送機械が振るわなかった。

 韓国は輸出がGDPの5割を占め、輸出全体の約4分の1を中国向けが占める。

中国の経済成長のペースが鈍化していることに加え、中国企業が競争力を高めており、中国市場で韓国企業が苦戦を強いられる分野が増えている。

 LG化学は売上高の4割を中国市場から稼いでいるが、7~9月期の連結営業利益が前年同期比31%減の3575億ウォン(約360億円)と振るわなかった。

化学業界は中国の増産攻勢で汎用品の価格競争が激化。

ウォン高・円安の持続で日本企業とも苦しい戦いを強いられている。

 先進国企業との品質競争と、中国企業との価格競争がともに激化し韓国が競争力を失う「サンドイッチ状態」を警戒する見方も広がる。

対中輸出額は9月にいったん増加に転じたが、アイエム証券の李鐘雨(イ・ジョンウ)リサーチセンター長は「今後は中国向け輸出が大きく増えることは無い。 中国と韓国企業の競争力の差も縮まり、中国市場の攻略が難しくなる」と話す。

 一方、直接投資の受け入れなどでも、中国頼みが鮮明になりつつある。

 産業通商資源省がまとめた外国人直接投資動向によると、14年1~9月の投資額は申告ベースで前年比38%増の148億ドル(約1兆5000億円)となった。

米国が6%増、日本が17%減となるなかで、中国からの投資が3.3倍に増えた。

実額は10億ドル強とまだ小さいが、存在感は着実に高まっている。

 観光でも、13年に韓国を訪れた中国人観光客は432万人で、外国人観光客全体の35%に達した。

シンクタンクの産業研究班によると、中国人観光客による経済波及効果は年間13兆ウォンで韓国のGDPの1%弱にのぼる。

14年は訪韓中国人観光客が500万人に達することがほぼ確実で、韓国経済への寄与度はさらに高まる見通しだ。

 韓国の免税店最大手、ロッテ免税店は14年、前年比20%増の4兆2000億ウォンの売上高を見込むが、そのうち、57%を中国人が占める見通しだ。

12年は韓国人が40%、日本人が22%、中国人が28%の割合だったが、14年は韓国人が28%、日本人は6%に落ちる。

 中国からの直接投資受入れや観光客の増加は韓国の経済成長に貢献しているが、中国依存が一段と高まればリスクも大きくなる。

ロッテ免税店の幹部も「3カ国でそれぞれ3割前後を占める12年が理想だったのだが…」と話している、

(ソウル=加藤宏一記者)

 

 


「産経」vs「朴政権」の本質は日本vs朝鮮半島プラス中国 櫻井よしこ

2014年10月27日 09時26分05秒 | Weblog

2014.10.25 (土)

「 「産経」vs「朴政権」の本質は日本vs朝鮮半島プラス中国 」

『週刊ダイヤモンド』 2014年10月25日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1056

櫻井よしこ

10月9日、産経新聞前ソウル支局長、加藤達也氏はソウル中央地検によって在宅起訴され、15日には出国禁止措置がさらに3カ月間延長された。

この明らかな言論弾圧に、日本政府は「民主国家としてあるまじき行為」と強く非難した。

加藤氏は韓国のセウォル号が沈没した4月16日、幾多の命を奪った同事故について最終的な責任を負うべき最高指揮官、朴槿恵大統領の所在が7時間も不明だったことについて、記事を書いた。

現地有力紙などの報道を引用した記事の内容が朴大統領の名誉を毀損したというのだが、いかなる公人も7時間も所在不明となれば、あらゆる推測が飛び交うのは当然である。

ちなみに日本の安倍晋三首相の動静は分刻みで発表されている。

大事故発生当日に長時間所在不明などということは、民主主義国では通用しない。

加藤氏の初公判は11月13日となった。つまり、民主主義国では当然の報道をしたことによって裁判にかけられるのだ。

これは報道の自由を脅かす言論弾圧以外の何物でもない。

「ウォールストリート・ジャーナル」をはじめとする欧米メディア、国境なき記者団、国連事務総長報道官ら、国際社会はすでに厳しい批判を発表した。

韓国地元紙も「朝鮮日報」をはじめ、加藤氏の起訴は、かえって韓国の恥を国際社会に晒すとして、反対論を掲載した。

逆に韓国外務省報道官は10月14日の記者会見で「韓国はいかなる国よりも言論の自由をよりよく保障している」と語ったが、しらじらしいばかりだ。

加藤氏の拘束や起訴が正しい措置だと信じているのは、韓国と自身の立場を見極めることのできない朴大統領くらいのものであろう。

だが、日本のメディアの同件の扱いも危うさを含んでいないか。

同件は実は、報道の自由の問題を超えて、日韓関係、朝鮮半島の未来、さらには中国問題に行き着く深刻な要素を含んでいる。

「産経対朴政権」の対立は「日本対朝鮮半島プラス中国」の対立である。

朴政権の加藤氏に対する措置について、韓国外務省はこれは日韓関係とは無関係だと言った。

日韓関係の悪化故に、または歴史問題故にこのようなことが起きたのではないと言ったわけだ。

しかし、問題の本質はやはり日韓関係だ。反日のあまり、朴政権は加藤氏を起訴したが、朴大統領を待っているのは親北朝鮮勢力の強化と中国の支配の広がりである。

報道に携わる言論人は本来、そこまで読み取って報ずるべき性格のニュースが加藤氏問題だと私は思う。

しかし、日本のメディア、とりわけ国民から視聴料を受けているNHK、その看板ニュース番組の「ニュースウオッチ9」はその点を見ているか。

実は私は過日、慰安婦と女子挺身隊を一体のものとして捏造記事を物した植村隆・朝日新聞元記者と、氏を雇用した札幌市の北星学園大学に、インターネット上で誹謗中傷、攻撃が行われていることでNHKの取材を受けた。

私の主張は先週の小欄に書いた通りだ。

下調べとして私の話を聞いたNHK社会部が同件をどの番組でどのように取り上げるのかは私の関知するところではない。

しかし、NHKは加藤氏が外国の官憲にすでに2カ月にわたって拘束され、さらに3カ月間拘束され続けること、記者として当然の公人に対する報道をしたことで起訴されたこと、加藤氏がこれから裁判を闘い続けなければならないことについてどう思うのか。

こうしたことを「ニュースウオッチ9」は伝えていない。

キャスターの大越健介氏は他のニュース項目についてはコメントしても、加藤氏の件についてはしていない。

これでは何のためのニュース番組かと思う。国民のためのメディアといいながら、こんなメディアでしかあり得ない日本の未来こそ心配だ。

 


対外純資産 3兆2000億ドルの日本、マイナス43億ドルの韓国

2014年10月27日 08時54分55秒 | Weblog

【コラム】3兆2000億ドルの日本、マイナス43億ドルの韓国

金洪秀(キム・ホンス)経済部次長

低成長の沼に陥った韓国、まずは危機意識の共有を

一部省略

   韓国経済が成長エンジンを失い、長期にわたる低成長の沼にはまり込んでいるが、多くの国民は、韓国はそれでも大丈夫な国だと錯覚している。
 
お隣の日本は、20年にわたる不況にも国がつぶれることなく持ちこたえた。過去30年間の好況期に稼いでおいた資産が支えになったためだ。

  日本の対外純資産(企業や政府、個人が海外に保有している資産から負債を差し引いたもの)の残高は、今年3月末時点で3兆2000億ドル(約342兆円)に達する。

一方、韓国の対外純資産残高はマイナス43億ドル(約4600億円)だ。

一生懸命稼いでも、いまだに資産よりも負債が多い。

人に例えるなら、韓国経済は多額の借金を抱えるサラリーマンで、日本経済は資産の運用益だけでも十分食べていける銀行のプライベート・バンキング(PB)の顧客ということになる。

日本は昨年、資本収支だけで460億ドル(約4兆9000億円)の黒字(流入超)だった。これに対し、韓国の昨年の資本収支は2億ドル(約214億円)の赤字(流出超)だった。

  国内総生産(GDP)の規模で見ると韓国は世界13位の経済大国だが、だからといって錯覚してはならない。

GDPは1年間に国内で生産された物やサービスの総額だ。現在の現金の流れが少し良いだけで、資産が多いという意味ではない。

  もちろん、負債が多いからといって必ずしも国が駄目になるわけではない。

米国は対外純資産残高がマイナス5兆ドル(約535兆円)に達する。

だが、米国は基軸通貨国だ。印刷機でドルを刷るだけで、いくらでも負債を償還できる。

韓国は資源も、世界の富裕層が欲しがる田舎の家も、有名画家たちのスケッチもない。頼れるものは知識と労働だけだ。 

 経済再生への期待をつないだチェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部(省に相当)長官率いる経済チームの景気浮揚策が、次第に勢いを失っている。

国会などに足を引っ張られ、これさえも効果を出せなければ、韓国経済の未来は暗い。

まずは国民が危機意識を共有することから始めなければならない。

このままでは、国を奪われるという屈辱を味わいながらも発奮せず、子孫に何も残せなかった先祖と同じ轍(てつ)を踏むことになるだろう。

 


(『Voice』2014年11月号[特集:崖っぷちの韓国]より1) 石 平(せき・へい)拓殖大学客員教

2014年10月26日 19時49分30秒 | Weblog

(『Voice』2014年11月号[特集:崖っぷちの韓国]より/〔2〕につづく)

■石 平(せき・へい)拓殖大学客員教

――史上最大規模の不動産バブルの崩壊と金融破綻の道連れに

◆マイナス成長となっている可能性◆

 中国経済はいま、死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされている。

 それを端的に示しているのは、今年8月20日に中国煤炭工業協会が公表した2つの数字である。

今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1.45%減と1.54%減となったという。

 李克強首相は地方政府のトップを務めた時代、統計局の上げてきた成長率などの経済数字を信じずに、もっぱらエネルギー消費量や物流量が伸びているかどうかを見て本当の成長率を判断する、という有名なエピソードがある。

このような物差しからすれば、今年上半期の中国経済の成長率はけっして政府公表の「7.4%」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある。

中国のエネルギー産業の主力である火力発電を支えているのは石炭であるが、その生産と販売がマイナス成長となっていれば、この国の経済は依然として成長しているとはとても思えないからである。

 実際、中国最大の自動車ガラス製造企業・福躍硝子集団のオーナー会長曹徳旺氏は9月11日、香港フェニックステレビの番組において、「中国のGDP(国内総生産)は、

いままったく伸びていない」との爆弾発言を行なったことで話題を呼んでいるが、経営者として中国経済の現場で活躍していて、経済問題を見る目の確かさで広く知られる曹氏の発言にはそれなりの重みがある。

 そして、今年上半期において全国の工業製品の在庫が12.6%も増えたという当局の公表数字からしても、

あるいは同じ今年上半期において全国の百貨店の閉店件数は歴史の最高記録を残したという8月23日付の『中国経営報』の報道記事から見ても、中国経済の凋落ぶりが手に取るようにわかろう。

 問題は、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの中国経済がここまで落ちたのはいったい何故なのか、であるが、

その理由はじつに簡単だ。要するにいままでの中国経済の急成長は最初から、大変な無理をした歪んだかたちでの成長だったからである。

 いままで、個人消費率が40%前後で徘徊して国内の消費が徹底的に不足しているなか、中国政府はずっと、国内の固定資産投資の継続的拡大と対外輸出の継続的拡大という「2台の馬車」を牽引力として高度成長を引っ張ってきた。

つまり、本来なら経済の成長を支える国民の消費拡大がずっと低迷しているなかで、中国は結局、国内の不動産投資や公共事業投資などからなる「ハコモノづくり」の規模拡大と、外国人の消費拡大に貢献する輸出の拡大を頼りにして高度成長を何とか維持してきた。

2010年までの約30年間にわたって、経済全体の成長率は10%前後であったのに対し、国内の固定資産投資と対外輸出が毎年つねに25%以上の高い伸び率を維持してきていることはこの辺の事情をよく示している。

 問題は、長年にわたって固定資産投資の高い伸び率をいったいどうやって維持するのかであるが、中国政府の一貫したやり方は結局、お札をパンパンと刷らせて市場に大量に回していくような手法、すなわち財政出動と金融緩和という二つの政策手段の濫用となるのである。

つまり、政府がお金を出して莫大な財政出動を行なって公共事業投資を継続的にやっていけば景気がいつでも良くなるし、金融緩和をやってお金を市場に大量に流通させれば、民間の不動産投資や企業の設備投資が盛んになって高い成長率がつねに維持できるわけである。

 しかし、このような安易な政策手段を濫用しすぎると当然、深刻な副作用が起きてくる。

金融緩和と財政出動でお札が大量に放出された結果、市場に流通している貨幣の量が溢れすぎるという「過剰流動性」の現象が生じてきて、そのたどり着くところはすなわち、貨幣の価値が落ちてモノの価値が上がるというインフレの発生である。

実際、2009年の年末から、中国で大変なインフレが発生して、食品を中心にして物価が毎月十数%上がっていくという深刻な状況となっていた。

 ここまでのインフレとなり、大変な危機感を覚えたのもやはり当の中国政府である。

というのも、貧富の格差が拡大して国内でつねに億人単位の都市部貧困層が存在しているなか、食品を中心とした深刻なインフレの継続は、いずれ「天下大乱」ともいうべきような社会的大動乱を誘発する恐れがあるからである。

 それを避けるために、中国政府は結局2011年に入ってからは一転して、インフレ退治のための厳しい金融引き締め政策を実施していたが、その結果、昔の金融緩和によって支えられていた国内の固定資産投資はその伸び率が徐々に鈍化してきて、経済成長の足を引っ張ることとなった。

 その一方、インフレが継続しているなかで、中国の対外輸出も大きな打撃を受けることになった。物価の上昇に伴って人件費が大幅に上がってくると、「中国製」は昔のように安くつくれなくなって安く売れなくなったからである。

中国の対外輸出の競争力が人件費のより安い東南アジア諸国に奪われて、輸出の伸び率は急速に落ちていった。

たとえば今年1月から8月までの期間中、中国の対外輸出の伸び率は2.1%となっていたから、昔の「25%成長」とは雲泥の差がある。

 つまり、それまでに中国の高度成長を引っ張ってきた、固定資産投資の拡大と輸出の拡大という「2台の馬車」は2台ともに力を失って失速した。

その結果、中国経済全体は、まさに冒頭に記述したような、マイナス成長となっているか、なっていないかの瀬戸際に立たされているのである。

いってみれば、輸出と投資の継続的拡大という「2台の馬車」で高度成長を引っ張っていくいままでの成長戦略はもはや限界であり、このようなかたちでの高度成長はすでに終わってしまった、ということである。


◆不動産価格引き下げの「悪性競争」◆

 しかし中国経済の抱える問題は「成長の終焉」だけではなさそうである。

成長率の減速と同時進行的に、じつは今年の春先あたりから、以前から囁かれていた不動産バブルの崩壊はにわかに現実味を帯びてきているのである。

 まず目に見られたのは、全国の不動産市場の低迷である。

中国では、毎年5月1日のメーデーを中心に数日間の休みがあって、例年では不動産がよく売れる「花の五一楼市(不動産市場)」とされてきたが、今年のそれは惨憺たるものであった。

中原地産研究センターが観察している全国54の大中都市で、「五一楼市」で売れた不動産件数は9887件で、去年の同じ時期と比べると32.5%減となったという。

そのなかで、たとえば首都の北京の場合、期間中の不動産販売件数は前年同期比では約8割も減った。地方都市の保定に至ると、期間中の不動産契約件数はわずか10件、まさに「不動産市場の5月厳冬」と呼ばれる大不況の到来である。

 不動産が売れなくなると、付いてくるのは価格の下落だ。

全国における不動産価格下落の傾向は今年の3月からすでに始まっているが、5月後半ではそれがいっそう加速化している。

中国経済新聞網が5月30日、重慶市最大の不動産開発プロジェクトの「恒大山水城」は3割以上値下げして売り出されたと報じれば、同じ日に放送された中央テレビ局の「経済三〇分」という人気番組は、杭州市にある分譲物件が予定価格の3分の1程度を値下げして売り捌いた事案を取り上げた。

そして『毎日経済新聞』の報じたところによれば、「値下げラッシュ」が南方の大都会の広州にも広がり、ある業者が史上最高の価格で取得した土地でつくった「亜細運城」という大型不動産物件は3割程度の値下げを余儀なくされたという。

 5月31日に中国指数研究院が発表した全国100都市での定期調査の結果、この100都市の不動産平均価格が5月において前月比で0.32%の下落となったことがわかった。

全国で広がる価格下落の実情を見ると、この「0.32%」という下落幅がはたして真実を十分に反映しているかどうかはかなり疑問だが、少なくとも、全国の不動産平均価格は2年ぶりに確実に下落していることがこの調査結果からわかっている。

 そして今年の夏になると、不動産価格下落の傾向はよりいっそう鮮明になっている。

8月1日に中国指数研究院が発表した数字によれば、7月の全国100都市の新築住宅販売価格が6月よりは0.81%下落し、4月、5月以来の連続4カ月の下落となっているが、9月19日に中国国家統計局が公表した数字では、8月になると、全国主な都市の70都市のうち、不動産価格が下落したのは68都市であったという。

 そのなかで、たとえば8月25日に新華通信社が配信した記事によると、全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの「悪性競争」はすでに始まったという。

開発業者が競ってなりふり構わずの価格競争に走っていれば、それはすなわち不動産価格総崩れの第一歩であることは誰でも知っている。

8月23日、山東省済南市にある「恒生望山」という名の分譲物件が半月内に25%程度の値下げを断行したことで、値下げ以前の購買者が抗議デモをした事件が起きたが、9月3日には、広東省珠海市のある分譲物件の値段が一夜にして4分の1も急落したとのニュースがあった。

そして9月15日、大都会の北京市では一部の不動産物件で30%以上の値下げが断行されたことが報じられている。その一連の動きが、「総崩れ」はすでに目の前に迫ってきていることの前兆であろう。

 こうして見ると、9月3日、新華指数公司首席経済学者の金岩石氏が「中国9割の都会で不動産バブルが崩壊する」と警告したのも決して根拠のないことではない。

中国における史上最大規模の不動産バブルの崩壊は、いよいよ目の前の現実となってくるのであろう。

(『Voice』2014年11月号[特集:崖っぷちの韓国]より/〔2〕につづく)

■石 平(せき・へい)拓殖大学客員教授


(『Voice』2014年11月号[特集:崖っぷちの韓国]より)2 石 平(せき・へい)拓殖大学客員教授

2014年10月26日 19時45分02秒 | Weblog

(『Voice』2014年11月号[特集:崖っぷちの韓国]より)

■石 平(せき・へい)拓殖大学客員教授

◆5兆元規模の信託投資が返ってくるか◆

 問題は、不動産バブルが崩壊したあとに中国経済がどうなるのかであるが、現在、全国の不動産投資のGDPに対する貢献度が16%にも達しているから、

バブル崩壊に伴う不動産投資の激減は当然、GDPの大いなる損失、すなわち経済成長のさらなる減速に繋がるにちがいない。

しかも、バブル崩壊のなかで多くの富裕層・中産階級が財産を失った結果、成長を支える内需はますます冷え込み、経済の凋落によりいっそうの拍車をかけることとなろう。

 しかし問題の深刻さは、それだけのものにはとどまらないのである。不動産バブルの崩壊に伴って、その次にやって来るのはすなわち全国規模の金融危機の発生なのである。

 今年3月26日、中国新華通信社傘下の『経済参考報』は、中国の金融事情に関する記事の1つを掲載した。金融市場で大きなシェアを占める「信託商品」は、今年から来年にかけて返済期のピークに達し、約5兆元(約82兆円)程度の貸し出しが返済期限を迎えることになるという。

 ここでいう「信託商品」とは、正規の金融機関以外の信託会社が個人から資金を預かって企業や開発プロジェクトに投資するものであるが、高い利回りと引き換えに元金の保証はまったくないリスクの高い金融商品だ。

中国の悪名高いシャドーバンキング(影の銀行)の中核的存在はまさにこれである。

 問題は、返済期を迎えるこの5兆元規模の信託投資がちゃんと返ってくるかどうかである。

申銀万国証券研究所という国内大手研究機関が出した数字では、全国の信託投資の約52%が不動産開発業に投じられているという。じつはそれこそが、信託投資自体だけでなく、中国経済全体にとっての致命傷となる問題なのである。

 前述において克明に記したように、いまの中国で、信託投資の半分以上が注ぎ込まれている不動産開発業自体は、まさに風前の灯火となっているからである。

バブルが崩壊して多くの不動産開発業者が倒産に追い込まれたり深刻な資金難に陥ったりすると、信託会社が彼らに貸し出している超大規模の信託投資が踏み倒されるのは必至のことである。

9月19日付の『中国経営報』の関連記事によると、中国河北省の邯鄲市ではいま、「金世紀地産」などの多数の不動産開発社の経営者たちが、約100億元(約1800億円)以上の「信託投資」負債を踏み倒して続々と夜逃げしていったという。

邯鄲で起きているようなことは今後、全国的に広がっていくこととなろう。

 前述のように、信託投資の不動産業への貸し出しはその融資総額の約半分にも達しているから、今後において広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味するものである。

そしてそれはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招くこととなろう。

 しかし融資規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」が破綻でもすれば、経済全体の破綻はもはや避けられない。

いまでは、中国経済はただでさえ失速している最中であるが、今後において、不動産バブルの崩壊とそれに伴う金融の破綻という2つの致命的な追い打ちをいっせいにかけられると、中国経済は確実に「死期」を迎えることとなろう。

 じつは今年4月あたりから、中国政府は一部銀行の預金準備率引き下げや、鉄道・公共住宅建設プロジェクト、地方政府による不動産規制緩和など、あの手この手を使って破綻しかけている経済を何とか救おうとしていた。

だが全体の趨勢から見れば、政府の必死の努力はほとんど無駄に終わってしまい、死に体の中国経済に妙薬なしということである。


肝心の命綱を失った韓国経済

 中国経済がこういう状況となると、中国に進出している日本企業と日本経済がかなりの影響を受けることになるだろうが、おそらく日本以上に深刻な影響を受けて、中国経済の破綻と共倒れする危険性のもっとも高い国はやはり韓国であろう。

 今年の4月3日、韓国銀行は、昨年の韓国経済の対外依存度が105%となって3年連続100%を超えていると発表して世界を唖然とさせたが、じつは韓国最大の輸出国はまさに中国であり、対中輸出が毎年、韓国の対外輸出全体の25%以上を占めていることはよく知られている。

ということは要するに、韓国経済の運命は完全に対中国の輸出によって左右されており、中国の景気のよし悪しは韓国経済の生死を決める最大の要素となっているのである。

しかしいま、中国経済の高度成長は終焉してしまい、今後はバブルの崩壊と金融の破綻によって破滅への道を辿ることになるのは前述のとおりであるが、そのことの意味するところは要するに、韓国経済はその肝心の命綱を失ってしまい、中国経済の破綻の道連れになることであろう。

 実際、中国の景気が徹底的に悪化して外国からの輸入が急速に冷え込んでいるなかで、韓国の対中国輸出はすでに低迷し始めている。

今年9月2日、韓国の『朝鮮日報』は、「韓国の対中輸出が4カ月連続で前年割れした」と報じて韓国経済の先行きに不安を示したが、

記事によると、韓国産業通商資源部の発表した数字では、韓国の8月の対中輸出は、前年同月比3.8%減少し、今年5月から4カ月連続で、前年同月を下回ったという。

 つまり、韓国の対中輸出が減り始めたのは今年5月からのことであるが、じつはそれ以来、韓国経済は直ちに多大な影響を受けているようである。

9月4日に韓国銀行が発表した第2四半期(4―6月)の国民所得統計では、名目でGDPが前期比0.4%減だったようで、金融危機当時の2008年第4四半期(10―12月)に記録した2.2%減以来、5年半ぶりのマイナスとなっているのである。

おそらく今後、不動産バブルの崩壊と金融の破綻に伴って中国経済が破綻という名の「地獄」へ落ちていくと、韓国経済も道連れにされるようなかたちで、底なしの奈落へと転落していくのであろう。

 中国にしても韓国にしても、本当は彼らにとって、いまや無意味な反日に熱を上げているどころではないのである。