外から見る日本、見られる日本人
2013年07月26日
韓国版金融危機はありえるのか?
韓国中央日報が「韓国の銀行が危ない」という論説委員の記事を掲載しています。記事そのものを読む限り特段新しいネタがあるわけではないのですが、日本のバブル崩壊後の不良債権の処理に伴う苦悩を再現しているようにみえます。
紙面にもあるように銀行の資金はカラダの血液のようなものですからその血液が止まったり品質が悪くなることで死を招くことになります。
韓国金融業界の昨年の利益は7700億円と前年比3割減ったそうですが、今年はそれを更に大幅に下回ると見られています。
一方、不良債権は全体の2割にも及ぶとされ、不動産や建設のみならず、いわゆる化学、鉄鋼など素材産業の経営不振も影響しています。
一般的に韓国の金融業界は個人向け融資が堅調だったとされるのですが、そちらも不動産価格の下落に伴い厳しい状況となっており、今後の行方が不安視される原因となっています。
特に金融機関の規模が世界水準と比して圧倒的に小さく体力的にも乏しい好例がウリィ銀行の売却劇だと思います。
ウリィは同国最大の金融グループでありますが、もともとは経営不振になったり倒産した銀行や証券を寄せ集めたものであります。
そこに公的資金を投入し、再建をはかり、政府としては大手金融グループとしての売却を狙ったものの前政権時には3度の挑戦もすべて失敗に終わっています。
買い手が現れないということはそれだけ魅力に乏しく、将来性に不安があるということを物語っています。
注目点は朴現政権がこの金融グループを都市銀、地銀、証券に小口分割して売却する方針に転換したということでしょうか?
通常、小口分割はすべてうまく売却出来れば金額的にはプラスになりますが、過去3度も売却を試みて成功しなかったのは売却資産に欲しくないものがあるという明白な理由があるはずです。
つまり、朴政権が予定通り分割売却を進めた場合必ずどれかが売れ残り、苦しい立場になる可能性があるということです。その売れ残りはずばり地銀でしょう。
もうひとつ、重要なことは朴政権が日本型メガバンクを諦めたとも取れるのです。
これは私から見ると失策だと思います。なぜなら、もともと韓国の銀行規模は小さく、世界の中で戦えない状況下にある中「血液の役割」を施すにはその心臓部分であるポンプが余りに小さく、血液は末端まで循環しないといえるからです。
韓国の不良債権の大きさを考えれば今後何らかの金融トラブルが発生しないとも限りません。
その場合、連鎖反応しやすい状況が生じますのでウリィ銀行グループの売却すら進まない段階で極めて面倒なことになる可能性も否定できません。
そういえばゴールドマンサックスの資産運用部門が昨年の暮に韓国市場から撤退しました。
同社は他社以上に先見性をもって行動する金融グループですが、撤退という意味が持つものは将来頑張っても儲からない、という判断そのものではないでしょうか?
そう考えれば中央日報の「銀行が危ない」という記事は大げさな話では’ないのかもしれません。
韓国の四半期GDPは久々に1.0%を超えることが出来ましたが、世界経済全般の力強さを感じない今、財閥系企業の輸出に頼る経済体質には先行き不安を覚えます。
日本からすれば海の向うの話と思われるかもしれませんが、韓国経済は日本経済に密接なつながりがある以上、注視する必要がありそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。