韓国経済は「いびつ」 世界最大の資産運用会社が警鐘
「韓国の比率を縮小するべき」。世界最大の資産運用会社ブラックロックの警告だ。
ブラックロックは毎年、機関投資家やマスコミなどを集め「ブラックロック・アジア・メディア・フォーラム」を開催している。
5月17日から18日に香港で開催された今年のフォーラムでの一言だ。
ブラックロックは、3月にそれまで強気であった日本の投資判断を引き下げたことでも話題になっており、今回は韓国に警告をあたえた。
韓国は構造変換が必要
「最近、技術トレンドがハードウェアからソフトウェアに変わり、従来のスマートフォン分野の成長が停滞している。
技術産業依存度が高い韓国と台湾にマイナス」と
ブラックロックのアジア株式担当責任者のアンドリュー・スワン氏は語った。
スマートフォン端末製造だけでは成長に限界があるだけに、
ソフトウェアに産業構造を至急変えるべきだが、その速度が遅いとみているのだ。
下期の韓国経済に対しては、
「今年は円高が続き、韓国の輸出競争力が回復する可能性があるが、
韓国の根本的な投資誘引は不足している」としている。
現在、ブラックロックは韓国を含むアジア・太平洋地域に全体資産の8%を投資している。
北アジアから東南アジアにシフト
スワン氏は、決してアジア全体に弱気になっているわけではない。
FOMCの米国利上げに対するハト派的な態度がアジアの財政改革、
構造改革の支援材料になる可能性が高いとしている。
「投資家は、信じられないほどディフェンシブなポジションをとっており、
に中国に対しては悲観的すぎる。
したがって株式のバリュエーションは安すぎる」と指摘した。
今年の後半は、ここ数年のようなボラティリティが減少し安定した相場になると見込んでいる。
アジア投資に関しては、先進国の北アジア地域を減らし、
エマージングの東南アジア地域を買い、アジアでバランスのとれた投資へとシフトしているようだ。
東南アジアでは、インドネシア、フィリピン、タイなどをここ半年で買い越した。
日本のマイナス金利には否定的
ブラックロックの創業者でありCEOであるラリー・フィンク会長は基調講演で、
「マクロの観点から、中央銀行がこれまで世界を安定航海させてきたが、もう低金利は8年だ」、
「今は低金利、日本の場合はマイナス金利が、世界経済を傷つけはじめている」として、
「金融政策から財政政策による景気刺激策に緊急にシフトするべき」で、
「政府が雇用を増やせるインフラ投資など拡張的財政政策に向かうべき」と述べた。
欧州と日本のマイナス金利政策に対しては反対の立場をあらためて表明。
「欧州と日本が中心となったマイナス金利政策で全世界7兆ドルにのぼる国債がマイナス収益率で取引されている」とし、
「企業が稼いだお金、多くの人が貯蓄した資産価値まで傷つける格好」と述べた。
続いて「人々は低利子収益のため貯蓄を増やして消費を減らすはずで、老後対策にも問題が生じるだろう」と警告している。
中国経済のバブル崩壊を心配する必要はない
フィンク会長は、中国経済のハードランディング懸念に対しては楽観的な見方を示し、
「中国経済のバブル崩壊を心配する必要はない」と述べている。
「中国が工業製品輸出中心の経済構造から
サービス中心に変わろうとする努力は非常に印象的で、
中国政府がサービス中心の経済に速やかに変わるためには、
より攻撃的な改革が必要だ」と強調した。
続いて「西欧先進国も産業構造を変化させて定着するのに50年かかった」とし
「中国の成長減速や負債増加などは経済構造が変わる過程で生じることがある問題」と説明した。
ブラックロックは3月に日本を格下げ
日本株に関してもアベノミクスと歩調を合わせるように投資残高を積み上げた。
現在も多くの日本株で大株主として名を連ねており、最も日本株を保有し、最も日本市場に影響のある外人投資家の一つだと言ってもいいだろう。
安倍首相が「未来投資に向けた官民対話」と題して2015年10月に財界から7名の出席者を招き、投資促進のためのアイデアをたずねた。
その一人がブラックロックのリチャード・クシェル最高商品責任者だった。
その席上で同氏は日本株への投資額を23兆円と明かしている。
そのブラックロックが3月下旬に、
日本株を「Overweight」から「Neutral」へ格下げし、衝撃が走った。
日本市場では、年初からの外人の売りが5兆円に達し、その一部はブラックロックの売りではないかとの観測も拡がった。
それほどブラックロックの影響力は大きい。
今後も同社の投資方針に関するコメントには注目だ。
平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。