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韓国企業、「研究開発」目先利益に目奪われ「中長期戦略ゼロ」

2016年05月10日 15時32分04秒 | Weblog

韓国企業、「研究開発」目先利益に目奪われ「中長期戦略ゼロ」

勝又壽良の経済時評

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良 

 2016-05-10

短期成果主義の失敗
ロードマップなき経営

韓国企業が苦しんでいる

将来を担える有望な「シーズ」の手持ちがないからだ。

これまでは、重厚長大産業によるビジネス展開であった。

それが、明らかな行き詰まりとなっている。

肝心の研究開発を怠ってきた咎めが一気に出たのだ。

中国からは追われており、技術格差は2~3年と言われる。いずれは、肩を並べられる時期が来る。

韓国は、目立った技術開発もしないで、ここまで経済成長できた理由は何か。

日本企業が開発する耐久消費財を、見よう見まねで安くつくって輸出してきたからだ。

日本企業が発売する新製品をいち早く分解して、不用な機能を省いて安価な製品に仕上げ、途上国向けの輸出で稼いできた。

まさに、「小判鮫」商法である。

ところが、手本になる日本企業は、家電産業を例に取れば、業態転換したのだ。

ここに、韓国企業は模倣の「目標」を失って途方に暮れている。

日本企業は今や、「B2C」(消費財生産)から「B2B」(企業向け部品生産)へと、大きく方向転換している。

「B2C」では、人件費の安い発展途上国が優位を占める。

ところが、「B2B」では、人件費の問題から自由になり、技術の質が勝負のポイントになる。

部品生産では、中味はブラックボックスである。韓国企業が真似したくても真似できないジレンマに陥ったのだ。

短期成果主義の失敗


『朝鮮日報』(4月29日付)は、「韓国企業、危機局面で研究開発削減、好況時に苦戦する」と題して、次のように伝えた。

この記事では、韓国企業がいかに研究開発をないがしろにしているか。

その驚くべき実態が縷々、取り上げられている。

研究開発をしなくても、日本企業の真似をしていれば、慢性的な「円高=ウォン安」相場に助けられて、輸出が可能であったのだろう。

大学の受験勉強では睡眠時間を惜しんで机に向かうが、企業の研究開発では「劣等生」に成り下がる。

不思議な民族の一面を覗かせている。

(1)「韓国企業が世界市場をリードする技術を確保できない点をめぐり、危機局面で真っ先に研究開発分野を縮小する経営慣習にも大きな責任があるとの指摘がある。

会社の経営が少しでも悪化すると、優秀な研究開発人材が会社を去り、新技術開発が断絶するとの指摘だ。

そして、好景気が訪れても、新技術不在で再び業績不振に陥るという悪循環を繰り返す。

これは研究開発部門をリストラで最も後回しにする世界的企業と対照的だ。

米国のモバイル機器用半導体メーカー、クアルコムは、業績に関係なく、年間売上高の20%を研究開発に投資し続ける。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は08年の金融危機当時にも年間10億ドル(1100億円)の人材教育予算に手を付けなかった」。

韓国企業が、R&D(研究開発)に不熱心な理由は、目先の利益を優先する結果である。

R&Dは時間とカネがかかり、辛抱強さが求められる。

韓国人や中国人には不向きな作業である。

儒教では、職人を「小人」(しょうじん)として蔑んできた。

「科挙」試験ですら、受験資格を与えなかったほど差別してきたのだ。

研究開発という手作業を伴う職業は、「職人」の延長上で捉えられているに違いない。

(2)「韓国企業が危機に際し、研究開発組織を真っ先に縮小するのは今に始まったことでない。

13年に解体されたSTXグループは11年5月、

グループの戦略に沿った開発を行い、実行に移すシンクタンクとして、『STX未来研究団』を設けたが、

会社が経営危機に直面すると、わずか1年後の12年6月に組織を廃止した。

サムスンも昨年、業績不振に陥ると、グループ再編の過程で、長期的な研究を行う『サムスン綜合技術院』を大幅に縮小。

SKイノベーションは最近5年にわたり、新事業として研究開発を進めてきたエネルギー貯蔵装置(ESS)事業の業績が上がらず、昨年撤退を決め、研究開発担当者を別の部署に配置転換した」。

韓国企業が研究所を開設しても、ひとたび景気が悪化すると途端に方針を変えてしまう。

研究所が、「金食い虫」という認識であるからだ。

これは、研究開発が一応の成果を上げるまでに、5~10年はかかるという認識がない結果であろう。

それよりも、目先の利益を確保することが最優先される。

韓国企業が、ろくな研究開発費も出さずにこれまで経済成長できた。

それは前述の通り、日本企業の製品をパクってきたからだ。

これを忘れて、「反日」に勢を出してきた韓国社会とは、一体どのような構造なのか。

最近、韓国メディアに「不都合な」ニュース(『朝鮮日報』4月24日付)が出ている。

それは、日韓併合時代の『朝鮮日報』広告で、朝鮮企業による「革靴」広告があったことだ。

これまで、併合時代の朝鮮人は過酷な生活を強いられ、牛馬のごとく働かされた、というのが定説である。

そんな、底辺の生活を送る人たちに「革靴」広告など出るはずがない。

要は、「日本人憎さ」で史実をすべて歪めていることだ。「感情8割、理性2割」という韓国社会の通弊である。

(3)「危機に当たり、研究職が真っ先にリストラされるのは、韓国企業が長期研究開発を単純なコストと認識しがちだからだ。

財界20位に入る大企業の研究所長は、『研究開発はカネばかりかかるという考えを持った企業経営者が多い』と指摘する。

ある政府系企業の研究本部研究員は、『月給は払うから、役に立たない研究プロジェクトはやめてくれ』という声も聞くという。

産業研究院のイ・ハング上級研究委員は、『危機だからといって、研究開発を中断することは、復活の種に除草剤をまくようなものだ。

韓国企業には技術開発を通じ、市場をリードしようという『先駆者のDNA』が不足している』と指摘した」

韓国企業が、研究開発をないがしろにしている一方で、日本企業は「ガラパコス」と批判を受けつつも、研究開発に余念がなかった。

日本企業の研究開発姿勢が、いかなる批判を浴びようと、韓国や中国の企業から見れば、格段の優位性を持つことは疑いない。

日本企業の研究開発状況は、どのようなものなのか。

『日本経済新聞』(2015年8月10日付)は、次のように伝えた。

(4)「日本経済新聞社が実施した2015年度の『研究開発活動に関する調査』によると、回答企業の約3分の1となる111社が過去最高の研究開発費を投じることが分かった。

主要企業では、研究開発費は14年度実績から4.7%伸びて6年連続の増加となる。

業績が堅調な自動車業界を中心に日本の製造業は、5~10年先を見据えて競争力の源泉となる新技術の開発に積極的に取り組んでいる」。

15年度の111社の研究開発費は過去最高の金額になっている。

しかも、6年連続の増加である。トップ10企業の研究開発費は次のようになっている。

①トヨタ      1兆0500億円
②ホンダ      7200億円
③日産       5300億円
④ソニー      4900億円
⑤パナソニック 4700億円
⑥日立       3550億円
⑦キャノン    3150億円
⑧NTT      2300億円
⑧大塚HD    2300億円

上記10社のなかで気付くのは、ソニーが経営再建中でも4900億円もの研究開発費を投じている事実だ。

韓国企業であれば、真っ先に削減されている費用項目であろう。

韓国は、日本企業が血と汗の結晶である研究開発成果を、「小判鮫」商法で掠め取っていたことは後味の悪い話しである。

それが、「B2B」の業態転換で不可能になった。

ロードマップなき経営


『朝鮮日報』(4月29日付)は、「韓国企業、5~10年間の長期ロードマップなし」と題して、次のように報じた。

この記事では、韓国企業が短期成果主義にこだわっており、中長期の経営目標を立てないという事実が明らかになっている。

驚くべきは、研究開発費を拡充すると株価が下がるという現実である。

株式市場も短期成果主義に毒されているのだ。

こういう事実を知れば知るほど、韓国企業が「小判鮫」商法によって、日本企業の開発する新製品に便乗して利益を上げてきたことが確定的になるのだ。

極めつけは、「技術よりもマーケティング中心」という戦略である。

これこそ、日本企業のパクリ製品を大量のマーケッティングで売りさばいた、紛れもない事実である。

もはや、時効とは言え、改めて韓国企業の「ずる賢さ」に驚くほかない。

(5)「ますます広がる短期成果主義も、韓国企業が源泉技術を確保するため思い切った投資をしない原因の一つだ。

2~3年の任期内に具体的な実績を出さなければならない最高経営責任者(CEO)にとって、将来の技術への投資『金食い虫』に過ぎないというのだ。

自動車業界のあるCEOは、『専門経営者にとって最も重要なのは年間実績。

会社にあるのは今後2年間のロードマップだけで、5~10年の長期ロードマップは皆無の状況だ』と言った。

サムスン系列企業の社長クラスの人物は、『新技術投資の提案があっても、簡単には採用できない。(新技術に投資すると)すぐに会社の株価が下がると言われる』と語った」。

5~10年先の経営計画よりも、CEOの任期中の2~3年だけ、安泰であれば良い。

これが、多くの韓国企業の経営トップに共通する心情だという。

これでは、将来を見据えた研究開発など、着手するはずがない。

何か、滅びるべくして滅びる。韓国企業には、こういった「滅びの文化」の印象がますます強まるのだ。

(6)「専門家たちは、LG電子がスマートフォン事業に対する初期対応が遅れたせいでひどく苦戦しているのも、短期成果主義と関連していると見ている。

2009年の『チョコレートフォン』『プラダフォン』などのフィーチャーフォン(従来の携帯電話)で大きな利益を挙げたため、スマートフォン事業への転換をためらったというのだ。

事実、LG電子の社内では当時、『技術よりもマーケティングを中心にしろ』という米国的な成果主義が経営方針になっており、成功するかどうか分からないスマートフォンに思い切って投資するのを避けようとしていた。

短期成果主義が企業の研究・開発戦略を阻む事例もある。

ある自動車メーカーの研究者は『“品質マネジメント”という名目で量産技術のR&D材ばかり集め、肝心の将来の技術については全く準備できていない。

販売実績はすぐに伸ばせるが、10~20年後の市場は奪われることになる』と言った」。

LG電子と言えば、サムスンと並んで家電製品でライバル関係にある。

そのLGがスマホで出遅れた原因が、他部門で高利益を上げていた。

あえてスマホという新部門への進出に躊躇したという裏事情が明かされている。

これも、2~3年の成果主義重視の結果である。「今、儲かっているから、あえてスマホに進出しなくてもよい」。

こういう消極主義が韓国企業の発展を阻止しているに違いない。

7)「韓国企業とは違い、トヨタは短期的成果に左右されずに、将来の市場に備える組織改革を進めている。

10年後に生産する車に備える『先行技術開発組織』を量産技術開発組織から分離・独立させたのだ。

また、昨年11月には米国に人工知能を研究するトヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)を設立した。

本社と完全に分離して独自に運営されているこの組織に、トヨタは今後5年間で約10億ドル(約1090億円)を投資する。

数年前に韓国の大企業に技術を移転したある教授は、『ボタンを押すだけで、またはキーをひねるだけでできる技術ばかり追い求める今の風潮では、絶対に韓国企業は独自技術を蓄積できない』と指摘した」。

韓国企業は、基礎技術の研究開発が弱点とされる。

サムスンですら、必要な技術は他社から買えばよいという、他社依存型である。日本企業の「ガラパゴス」批判は一見、もっともらしく聞こえるが、何か韓国型の他社依存技術の弱点に通じると見る。むろん、「自社技術主義」の陥穽には気をつけなければなるぬとしても、必要な技術は他から買えばよいというのは、安易に思えるのだ。

サムスンは、スマホ依存経営の限界に突き当たっている。

スマホの世界市場は明らかに飽和化している。スマホに代わる主力製品は何か。

必死になって模索中である。

パナソニックに倣って、「B2C」から「B2B」への転換を表明している。

自動車部品への進出も課題だが、この分野では決定的な出遅れである。

かつて、サムスン自動車の経営に失敗した経験があり、「動くもの関連には手をつけない」という不文律があった。

これが、自動車部品への進出を拒んだ原因である。短期成果主義の欠陥と言えるのだ。

(2016年5月10日)