2016-04-29 04:15:54
韓国、「再び反日か」理性で捉えず感情論で割り切る社会 エコノミック・ショート・ショート
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
4月13日の総選挙で、与党セヌリ党が第1党の座を滑り落ちた。
最大野党の「共に民主党」と入れ替わったのだ。
日本として懸念されるのは、再び「反日」が勢いを増すかどうかであろう。
朴大統領は「レームダック化」し韓国政治の漂流が始まれば、この懸念は現実となろう。
日本は、腹を括るしかない。
気を揉んでもどうにもならない相手だ。
韓国社会の意識は、発展途上国である。
この際、それをはっきりと認めれば、日本として韓国国内の動きを、気に病むことはない。
日本の安全保障政策上、不可欠な存在の米国が、日本を過去にないほど高く評価している。
この事実は重要だ。韓国は、日米の間に挟まれて「反日」にも徹しきれまい、微妙な立場に立たされるだろう。
米国の対韓国意識は、日本と区別していることが明らかである。
中国の海洋進出が激化する以前、米国の対中意識は厳しくなかった。
その延長線で、米国は慰安婦問題で韓国寄りの姿勢であった。
米中の対立がしだいに鮮明化する中で、米国の対日・対韓の姿勢は微妙な変化を見せている。
米国が、慰安婦問題に深入りすれば、日本を孤立させるリスクをはっきり認識しているからだ。
皮肉にも、中国の強硬な海洋政策が、米国の対日評価を変える要因になった。
韓国の前近代性を象徴するトピックを3つほど上げる。
これによって、韓国の異質性がはっきりと浮かび上がる。
(1)デタラメな世論調査
先の韓国総選挙で与党は大敗した。投票日3日前まで、与党有利という世論調査が出ていたのだ。
ところが、開票結果は世論調査を完全に覆すもので驚かされた。
実は、肝心の世論調査がデタラメなものだった。
『朝鮮日報』(4月16日付)社説は、「ずさんな調査で総選挙に影響力を行使した世論調査会社」と題して次のように論じた。
①「今回の総選挙では投票前のずさんな世論調査が大きな影響力を行使していた。
選挙前、調査会社の多くは与党セヌリ党の過半数確保と野党『共に民主党』の惨敗を予想していたが、結果は正反対だった。
同じ選挙区に住む有権者を対象に、同じ日に行われた二つの会社の調査では、ある項目で30%近い大差が出るケースもあった。
わずか1日や2日で調査結果が10~20%も変わるとか、当選予想が次々と変わるような調査など珍しくもなかった。
これらのずさんな調査は国民の投票行動や各党内で行われる予備選などにも一定の影響を与えることから、調査会社が自らの影響力を意図的に悪用し、選挙結果を思い通りにしようとするようなケースさえあった」。
②「このように世論調査の信頼性が低下した理由は、100社を超える零細企業が乱立し、回答率が2%にもならない自動応答機器による調査ばかり行われているからだ。
携帯電話が普及しているにもかかわらず、調査会社が固定電話にばかり依存しているようでは、現実を正しく反映する調査結果など出るはずがない。
調査会社も当然このような現実を知っているが、それでもあえてそのやり方を改善しようとしなかった。
これでは犯罪行為と何ら変わりがないだろう」。
選挙結果を誘導する目的で、世論調査を操作することは犯罪である。
民主主義政治の根幹に触れる問題だ。
日本は、メディアが責任をもって世論調査を行っている。
取材の結果も加味して候補者ごとの当落予測を立てている。
投票結果と大きく異なる事前予想は、そのメディアの信用に関わる問題になる。
日本は、世論調査が投票行動に影響しないように投票日の数日前の発表を禁じるほど神経を使っている。韓国でも、政治に関する世論調査ではメディアが参加して、信頼を取り戻さなければならない。
韓国では、零細企業を含めて100社を数える世論調査会社があるという。
これでは、政党や候補者から買収されて、自陣営に有利な結果が出るように操作する危険性が出るのだ。
いわゆる「選挙ブローカー」のごとき世論調査会社の存在を許してはならない。
有権者の厳正中立な判断を損ねるような、意図的な情報操作を禁じるのは当然なのだ。
(2)オバマ氏の広島訪問反対論
オバマ米大統領が5月、G7サミットで日本を訪問する際、広島の原爆ドームへ行くなという主張が出ている。
『朝鮮日報』(4月15日付)は、コラムで「オバマ大統領が広島に行ってはならない理由」を掲載した。筆者は、同紙の姜仁仙(カン・インソン)論説委員である。
③「米国は依然として韓日歴史問題を理性に欠けた感情的対立くらいにしか考えない傾向がある。
北東アジア歴史財団の会議に集まった韓米両国の学者たちは、『北東アジアで歴史というもの自体が国際政治学的現実であり、国益であるという点を理解しなければならない』と述べた」。
米韓の限られた歴史学者のサークルが、「北東アジアでは歴史自体が、国際政治学的現実であり国益である」という結論を出したという。
それは、研究サークルの一仮説であって、日米の政治行動を拘束するものではない。
ここが不思議なのだ。
北東アジアとは、具体的には、日中韓3ヶ国を指す。
いずれも外交関係を維持しており、その前提には「友好条約」を締結して、日本が過去を謝罪し中韓はそれを受け入れたはずである。
いまさら、この現実を覆して日本vs中韓の構図をつくり出す。
それが、中韓の「国益」になるとの仮説は、国際的に受け入れられるはずがない。
韓国の主張は、日本に対して永遠にせよ、と言いたいのだろう。
ならば、韓国はなぜ1965年の日韓基本条約を受け入れたのか。
賠償金だけを受け取って、永遠に謝罪せよとは外交常識にかけ離れている。
双方の和解が「国益」なので、日韓基本条約に調印したはずである。
二枚舌外交は韓国の得意とするところだが、これでは韓国の信用を傷つける。
日韓立は、決して韓国の「国益」を生まないのだ。
④「オバマ大統領も日本で来月開かれる主要7カ国(G7)首脳会談の際、広島訪問を検討しているという。
広島は原爆の被害を象徴する都市だ。
オバマ大統領の広島訪問は、日本が被害者だという印象を与えるもので、まだ反省と謝罪が終わっていないアジアの加害国だという事実を覆い隠す結果につながる可能性がある。
北東アジアは、歴史問題が国際政治問題に直結する特殊な地域だ。
そのような北東アジアの歴史的感情を十分に考慮しないまま踏み出すオバマ大統領の一歩は、かえって混乱ばかり引き起こすかもしれない」。
このパラグラフでは、韓国人の狭量さをはっきりと浮かび上がらせている。
この筆者は毎年、開催される「原爆式典」の模様を知らないのだろう。
頭だけでこねまわした「反日」でなく、式典に参加してその空気を理解すべきである。
世界から原爆を廃棄したい。
そういう日本人の願いを世界に向けて発信しているのだ。
確かに、日本は原爆の被害者であるが、その惨禍を二度と繰り返さない願いである。
無辜の民を無差別に殺戮した点で、原爆投下は国際法上の犯罪である。
日本は韓国と同じで、それを言い募っているのでない。
この被害を再び繰り返さない。世界へ向けて平和への同一行動を求めているのだ。
韓国は、北朝鮮が原爆を保持したことによって、核の脅威に直面する事態になった。
世界が北朝鮮に対して経済制裁を加えている理由は、核拡散を防ぎ究極の核廃絶を目標にしているからだ。
朝鮮日報もそういう記事を掲載している。
このコラムは、「記者の良心」から逸脱し、アカデミズムの一仮説を盾にする「反日」の戯言だ。
米紙『ワシントン・ポスト』電子版は4月15日、1945年に広島、長崎に原爆が投下されて以来、核兵器が使われなかったという「偉業」を次の70年も続けるための土台を築くべきだとする社説を掲載し、オバマ米大統領に広島訪問を促した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙も、すでにオバマ氏の広島訪問に賛同する社説を掲載している。現職米大統領による初の被爆地訪問に向け、米世論に肯定論が広がっているのだ。こうした動きに対して、この筆者は背を向けている。反日という「民族主義」によって、「普遍主義」の平和へ弓を引いているのだ。
(3)大事故が繰り返される理由
韓国では、大事故が発生した場合、感情論一色に塗りつぶされるが、抜本的な対策は打たない。まさに、「感情8割、理性2割」の国家である。
『朝鮮日報』(4月16日付)は、社説「セウォル号沈没事故から2年、成熟した社会ならできて韓国にできなかったこと」と題して、次のように論じた。
⑤「304人が犠牲となった旅客船『セウォル号』沈没事故から4月16日でちょうど2年になる。
成熟した社会であれば、事故をきっかけに様々な分野の専門家が集まり、事故原因についてじっくりと究明し、また先進国の事例なども参考にしながら、国民の安全対策を着実に進めてきたはずだ。
ところがこの大韓民国では大統領からして国民感情に便乗し海洋警察を解体させただけで、冷静なリーダーシップを発揮できたとは到底言えなかった」。
「セウォル号」沈没では、高校生を中心に若い命が奪われた悲劇である。
「感情8割」で韓国中が悲しみに沈んだが、対策は「理性2割」の限界に阻まれて、その後も次々と大型事故が発生している。
大型事故再発が防げない理由は、官僚や企業、国民が決められた基本ルールをないがしろにしている点にある。
韓国の最大の欠陥は、家産官僚制という李朝時代からの悪弊が今も生きているからだ。
官僚によって規則の運用が恣意的に行われ、徹底しない憾みがある。
先進国の近代官僚制では、法律や規則がきっちり守られる。
日本では、一度起こった事故に対して、徹底的に検証して対策が立てられる。
その事故を忘れずに代々、言い伝えて行くために「メモリアル」を残して行く。
韓国では、こういう点がルーズである。
広島と長崎の原爆式典は、日本が再び戦争を引き起こさないという戒めである。
前記の「(日本が)アジアの(戦争)加害国だという事実を覆い隠す」(『朝鮮日報』記事)意図でないことは言うまでもない。
⑥「国民安全処(庁に相当)という政府機関が新たに設置され、閣僚に相当する政府高官の地位が一つ増えはしたが、その後も地下鉄の衝突、換気口の崩落、高齢者施設の火災、さらに空の玄関口である仁川空港に向かう永宗大橋では、バスや乗用車など106台が絡む玉突き事故が発生した。
セウォル号沈没後、この国が政府によって飛躍的に安全になったと実感する国民はほとんどいないだろう」。
韓国社会の価値基準は、前記の通り「感情8割、理性2割」である、大事故が起こったときは、まさに「感情8割」で大興奮する。
自殺者まで飛び出すほどだ。だが、肝心の対策は「理性2割」でお茶を濁してしまう。
今回の「熊本地震」に対して、韓国メディアは、こう報じている。
「このほど、大きな地震が九州地方を襲った。今回の地震では40人余りが死亡した。(それでも)号泣し、絶叫し、デモをし、断食闘争をするのではなく、忍耐して研究するのが日本のやり方なのだ」(『朝鮮日報』4月18日付コラム「地震と日本人」)。
⑦「悲劇を心の奥深くに刻み込むこともなく、ただ道ばたで暴れ、(セウォル号遺族が設置した)テント周辺で断食中であることを誇示し、大声で怒鳴ることばかり繰り返しているようでは、今後セウォル号と同じような悲劇が繰り返される恐れはいくらでもあるだろう。
まずこのようなテントから1日も早く撤去し、セウォル号沈没直後に誰もが感じた痛み、そして2度とこのような事故を繰り返さないという覚悟を、われわれは今こそ改めて思い起こさねばならない」。
国民性と言ってしまえばそれまでだが、韓国はともかく相手に対して口角泡を飛ばして詰る。
自らは、絶対に正しいという立場で議論するから、話しは進まないのだ。
韓国のトレードマークは、「議論するが解決しない」である。
この困った特性からいかに脱却するか。国民性は、歴史の産物であるから治らないもの。日本は、諦めるしかないのだ。
掲載者のコメント 韓国とは距離を置いて付き合う。
経済は低迷し先行きは経済の破綻である。
朴槿恵が最近日本非難をやめたのは破綻したときの経済支援を期待しているからだ!
日本外交・経済は中韓に見切りをつけ東南アジア・インドに重点を置いている。
中国経済の同盟の韓国は今更日本に媚を売っても無視をする。
中国の不良債権の処理は経済原理に従えれば日本と同様20年はかかる。
中国経済に依存する韓国は先行きが暗い。
(2016年4月29日)