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【京都幕間旅情】即成院,稀代の風流人橘俊綱開祖寺院は安楽の旅立願う波乱の歴史

2025-08-20 20:25:01 | 写真
■阿弥陀如来二十五菩薩像旅路
 世の中は移ろうものですが寺社仏閣も遷座と色々な歴史を辿るもの、このブログも移転できないデータは消える運命という事になるのですが、今回はこれに関連して、しかし今回はほんとうの波乱の歴史を湛えるお寺を散策しました。

 即成院。京都市東山区泉涌寺山内町28に鎮座しています泉涌寺の塔頭のひとつです。京都で一番イケメンの狛犬がいる寺院として、個人的に推しているのですが、那須与一ゆかりの寺としての方が有名でしょう。そして京都には不思議な寺院が多いのですが、此処も。

 光明山即成院を山号とします寺院は、JR東福寺駅から指呼の場所にある泉涌寺、しかし指呼の距離は総門に至る長い長い参道の始りを示しまして、この中でも即成院は泉涌寺総門のすぐ手前という、日常に拝観するには優しい立地に鎮座しています。幾つか興味深い。

 那須与一、平安朝末期から源平合戦において我が国随一の弓の名手として知られた那須与一の墓所と伝わる寺院であると云共に、そもそも即成院という名の由来が即座に成仏できる来迎を祈念する、という、なにか諦観と達観の中央を射抜く謎の崇敬を集めているもの。

 那須の与一さんとしても親しまれるお寺は、正暦3年の西暦992年に創建された光明院と寺伝に伝承として残っていますが、光明院として東福寺塔頭とも重なる印象があり、更にふかくと調べてみますと伝承である事から詳しい建立の時機は不明とも伝えられています。

 橘俊綱。歴史に残る確かなところでは橘俊綱が中興させたという事で、橘俊綱は関白藤原頼通の次男であるとともに正四位上修理大夫であり、在職中には後朱雀天皇と後冷泉天皇と後三条天皇に白河天皇と堀河天皇に仕えた平安朝末期の高級官僚、風流人と伝わります。

 伏見山荘という邸宅を造営した橘俊綱は、日本最古の庭園書である作庭記の不詳の著者として有力視される風流人であり、風流勝他-水石幽奇也、と古典文学今鏡に記されると共に、白河上皇に院政の鳥羽殿を示されたところ伏見山荘の方が良い、と自称した程だという。

 伏見寺即成院という名が建立当初の名であり、この頃には泉涌寺の塔頭ではなかった事を示すものですが、来迎引接の情景を仏像似て再現しています。これは没後に阿弥陀如来が諸菩薩と共に西方極楽浄土へ迎え取る様を表したもので、没後も風情を望んだのでしょう。

 青椛が溢れる寺域は、晩秋には紅葉に溢れ泉涌寺塔頭寺院の多くが池と風鈴はじめ端整な情感を醸し出していまして、当時の遺構は必ずしもすべてを継承されている訳ではないとしましても、一種風流人が開基とされる所以を気風というものから感じる事が出来るよう。

 阿弥陀如来二十五菩薩像を本尊として奉じるお寺は、十五体が江戸時代に彫像された菩薩像とのことですが、十体は平安朝の彫像といい、元々はこの御堂そのものが伏見、もう少し南に鎮座していたと伝わります。御香宮神社が現在鎮座する当り、という事でしょう。

 遷座の背景には、豊臣秀吉の伏見城造営という歴史的転機が在りました。しかし興味深いのは遷座先は現在位置ではなくもう少し南で、実は泉涌寺塔頭寺院となりましたのは明治時代に入っての事といいます。廃仏毀釈により一度は廃寺になってしまったのですね。

 阿弥陀如来二十五菩薩像により迷わず極楽浄土へと祈念する寺院の仏像が迷ってしまったのは皮肉ですが、阿弥陀如来二十五菩薩像はそのまま泉涌寺が引き取り廃仏毀釈での破砕を免れました。明治20年の1887年に仮本殿が再興されますが、名は法安寺となります。

 即成院の名が再興されたのは昭和16年、1941年という太平洋戦争開戦の年を待たねばなりませんでした。成仏というものはこの通り、成仏願う仏像さえも簡単ではない事を示すのですが、大切なのは今である、とイケメンの狛犬が今、示しているようにも思えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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