根津公子さんの「勝利」と【体中に満ちる悔しさのようなもの、虚しさのようなもの】/東本高志(大分)

2008-04-22 20:16:09 | 教育
河原井さん 根津さんらの「君が代」解雇をさせない会の会報の最新号(No.15)が
下記にアップされ、先日、私が本MLに投稿した日教組、全教組合員を想定した檄
文記事(編集部によって「体中に満ちる悔しさのようなもの、虚しさのようなもの」の
タイトルがつけられています)が掲載されています。

………………………
■河原井さん 根津さんらの「君が代」解雇をさせない会
http://homepage2.nifty.com/kaikosasenaikai/
■根津公子さんのページ
http://www.din.or.jp/~okidentt/nezusan.htm
から各「根津、河原井さん解雇させない会報15号」or[ニュースNo.15(最新号)」を
クリックすると会報のファイルが開きます。
………………………

根津さんから私のもとに「東本さんが、4月2日にAMLに投稿されていた文章を拝見
しました。東本さん、おっしゃるとおりです。教組の役員及び組合員に、自己を問う
てもらわなければと、私もいつもいつも思い、問いかけるのですが、まったく進展が
ありません・・・」という直メールがあり、同記事の会報への転載を依頼されたからで
す。

根津さん、河原井さんたちと認識を共有できることを大変うれしく思うとともに、この
認識が広く全国の教員たちに共有され、「日の丸・君が代」不服従の闘いがさらに
強固なものになっていくことを切に願うものです。

上記「解雇させない会」会報15号は「根津さんの解雇阻止」特集号となっており、各
記事ともそれぞれ読み応えがありますが、その中で4月5日にあった作家辺見庸の
講演会の模様を話題にしているビデオプレスの佐々木有美さんの記事をご紹介さ
せていただきたいと思います。

佐々木さんによれば、辺見は4月5日の講演会で、「ほとんどの教員が起立してい
る今の状況に、『教員たちはもっと自己の矛盾を表現すべきではないか、もっと苦
しむべきではないか』と投げかけた。教職員組合へは『組合には個人がない。ある
のは諧調(ハーモニー)。ないものは主体性』であると痛烈な批判を展開した」そう
です。同感です。

引用の最後に私の前掲記事も再掲させていただこうと思います。

………………………………………………
■根津さんと「世間」―辺見庸氏の講演をめぐって(p25~26)
佐々木有美(ビデオプレス)

 4月5日に作家辺見庸氏の講演会があった。死刑制度の廃止を訴える3時間半に
わたる講演だった。この講演のキーワードは「世間」。日本での死刑制度廃止の難し
さの根本を「世間」ということばで辺見氏は語った。「世間体」「世間の目」、日本人は
いつも自分ではなく「世間」に価値基準をおき、そのハーモニーを崩さず生きることを
常としてきた。

 辺見氏は、「正しいと思うことだったら一人でも行動すべきだと生徒たちに言ってき
た。自分の教育に反するから『君が代』に不起立する」という根津さんの意見に百パ
ーセント賛意を表明した。そしてほとんどの教員が起立している今の状況に、「教員
たちはもっと自己の矛盾を表現すべきではないか、もっと苦しむべきではないか」と
投げかけた。教職員組合へは「組合には個人がない。あるのは諧調(ハーモニー)。
ないものは主体性」であると痛烈な批判を展開した。

 さらに氏は、根津さんは、必ずしも公権力や都政だけではなく日本的な日常、つま
り「世間」と闘わざるをえないからこそ「絶望的に孤立した闘い」になってしまうとも語
った。「戦後民主主義は『世間』を超克しえなかった。だからこそその『世間』がいま
死刑問題をふくめ大爆走を始めている」というのが氏の結論である。

 根津さんの闘いの困難さを辺見氏は「世間」という言葉で表現した。その重さを肌
身で感じているのは他ならない彼女自身だと思う。だからこそ戦後民主主義の課題
を根津さんは一身に担っているとも言えるのではないか。この講演の時点で辺見氏
は多分、今回の「君が代」解雇阻止については知らなかった。もし、それを知ってい
たら「絶望的に孤立した闘い」が「世間」を動かし風穴を開けたということに希望を見
たにちがいない。「世間」を嘆くことではなく、「世間」を変える努力こそが希望につな
がる。



■体中に満ちる悔しさのようなもの、虚しさのようなもの(p33~36)
東本高志(大分)

「『都教委は私を首にできなかった。大勢が動けば、状況は変えられる』と、都立
南大沢学園養護学校教諭の根津公子さん(57)は、処分が停職六カ月にとどまっ
たことに、満面の笑みで “勝利宣言”した」

 私も当然、根津さんの上記発言には深く共感するのですが、同時に、なにか納得
できない、悔しさのようなもの、虚しさのようなもの、が体中に満ちて残念でならない
のです。もちろん根津さんに対して、ではありません。あえて名指しすれば、それは、
根津さんもそのお仲間のひとりである学校教職員の組合組織、日教組(民主党・連
合系、一部社民・新社会党系)、全教(共産党系)という組織に対する怒りです。

 毎日新聞3月26日付の「記者の目」(湯谷茂樹記者)によると、「根津さんの加盟す
る日教組傘下の東京教組」は、「村山政権発足を機に、95年に文部省(当時)との
関係を協調路線に転換」する以前の「(日の丸・君が代強制の)反対方針は変えて
いないものの、(95年以後は)反対行動の提起はしておらず、処分に伴う経済的損
失までは『支援できない』という姿勢だ」といいます。

 また、全教傘下の都教組北多摩西支部の「『日の丸』『君が代』おしつけに反対し、
父母・地域・教職員の民主的合意にもとづく学校教育を」(1999年10月5日)を見ると、
次のような指導方針が記されています。「結果として『おしつけが強行』されたり…
『職務命令』で押し切られることがあっても、そのことで“ガッカリ”することなく子ども
中心の感動ある行事にしようではありませんか。また、実力行使や個人的に行動す
ることなくあくまでも教育の条理をにたってよく相談してすすめましょう。ひきつづき
職場の協力態勢を保ち、父母・地域の声を広げるとりくみを粘り強くすすめようでは
ありませんか」(「4私たちのとりくみ」「3)職場の合意づくりを」)。

 上記の2つの記事から看て取れることは、日教組、全教とも、「日の丸・君が代」
強制に反対の意思表示をするための「不起立・退席」などの「実力行使」を「個人的
な行動」とみなし、否定していること(少なくとも肯定的には見ていないこと)です。「日
の丸・君が代」強制にはわれわれも反対だが、「不起立・退席」などの個人的な実力
行使は慎もう。また、そうした個人的な行動に対する「処分に伴う経済的損失までは
『支援できない』」という具合です。

 しかし、上記のような考え方は、労働組合運動の本来のあり方を見失った考え方
というべきではないでしょうか。

 無産者としての労働者は、権力者(富を占有する者)としての資本家・雇用者に比
して弱い存在である。ゆえに労働者個人としては資本家・雇用者に対抗する術はな
く、劣悪な条件のもとでも生きるためには“ただがまんして”働かざるをえない。しか
し、労働者が“団結”して資本家・雇用者に立ち向かえば、資本家・雇用者は、労働
者のストライキの行使などで被る損失と若干の賃上げ、労働条件の改善とにかかる
費用との損得勘定を計算して、ストライキの行使などで被る損失の方がより甚大で
あると判断した場合妥協を図ろうとする。その成果物が賃上げとなり、労働条件の
改善となる。無産者としての労働者の唯一の武器は“団結”の力である。「万国の
労働者、団結せよ」(マルクス・エンゲルス『共産党宣言』1848年)。こうして国際法
でも、日本国憲法でも労働者の「団結権」「団体交渉権」が保障されるようになった、
というのが、労働運動発生史の初歩講座的ガイダンスではなかったでしょうか?

 つまり、このことを「君が代不起立」を貫く根津さんたちの闘いに即していえば、わ
が国の学校教職員(日教組、全教)が一丸となって「君が代不起立」問題に取り組
めば、根津さんたち一部の教員(10・23通達に基づく処分者数408名)に懲戒処分
などの過度なしわ寄せがいくこともなく、権力者側(特に東京都)の権力乱用をあら
かじめ阻止する“力”になりうるのではないか、ということです。“団結は力”なのです。

 なぜ、日教組(社民党系)、全教(共産党系)は、上記のような労働組合運動の本
来のあり方を見失ってしまったのでしょうか? 

 組合全体として「君が代不起立」の方針を採用してしまうと、今度は逆に「君が代
不起立」という実力行使に批判的な者の「内心の自由」を損ねてしまう、ということを
仮に危惧しているのであれば、彼、彼女らの自発的意思を尊重し、組合として組合
員全員に「君が代不起立」を強制しなければよいだけの話です。

 第一、「内心の自由」の尊重を主張するものが「内心の自由」を踏みにじるような
強硬手段を組合員に課するというのも解せぬ話です。組合員ひとりひとりの「内心
の自由」を尊重しながら、組合として「君が代不起立」の実力行使を含めて「闘う」
姿勢を貫こうとすることは決して矛盾しないでしょう。日教組、全教のみなさんには、
「大勢動けば変えられる」という上記の根津さんの言葉の重みをあらためて強く噛
み締めていただきたいものだと切に思います。

 失礼なことばを最後にあえて付け加えます。あなたたちに「世の中を変えたい」と
いう思いがほんとうにあるのならば。                     
………………………………………………
東本高志@大分
taka.h77@basil.ocn.ne.jp


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1 コメント

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Unknown ()
2013-08-20 10:42:48
昨日の裁判、被処分者の会のチラシになかったので忘れた。
 都教組はどうしてるのか?
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