窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

東日本復活5年計画

2011年03月25日 | その他
  京都大学の藤井聡教授による緊急提案「東日本復活5年計画」を読みました。わずか6ページの中に、この国難から復活を遂げるための具体的施策が大変読みやすく凝縮されています。お勧めです。

http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/presentation/20110323fujiilab_plan.pdf

  最も柱となるのは、長年のデフレによる資金需要の落ち込みによって推計151兆円に上るといわれる預貸ギャップ(預金超過額)を活用し、震災復興国債を発行することで復興費用を調達するというものです。ただし、国債供給量が需要量を超過し長期金利が上昇する可能性も考慮し、政府と日銀が密接に協調しながらこの施策を進めていく必要を付け加えています。

  よく囁かれる国債発行によるハイパーインフレ発生の懸念は、現在のようなデフレ下においては極めて可能性が低いと思われますが、同提案では万一の場合に備え、適正なインフレ水準をあらかじめ想定し状況に応じて適切な措置を施すことで対応すべきとしています。ただしその場合、経済の回復基調が安定的でないにも関わらず、財政緊縮や増税によって景気の足を引っ張り、今日まで続く長期デフレを招いた阪神大震災後の教訓を忘れてはなりません。

  また、この復興計画を阻害する要因として、現時点での増税と過激な自由化政策であるTPPへの参加は何としても回避しなければならないという点として強調されています。

  まず増税ですが、仮に今回の震災がなくても、デフレによって需要が低下しているところに増税を行えば、さらに需要を縮小させデフレを悪化させるであろうことは想像に難くないと思います。税収確保のためにやむなしという意見もありますが、消費のさらなる悪化で税収はむしろ減るという逆選択の可能性すらあるのです。痛みは確実に伴いますが、それに見合う成果が得られる保証はありません。どうしても増税をというなら、デフレを脱却し、過剰なインフレが懸念される段階でインフレ抑制策の一つとして行うべきでしょう。

  次にTPP参加ですが、TPP参加の主な理由はデフレによる供給超過を海外市場に振り向けることで、デフレギャップを解消しようというものです。しかし、先日ご紹介しました『TPP亡国論』では、残念ながら輸出を拡大することができない理由が詳細に述べられています。しかも今回の主たる被災地である東北地方は、第一次産業の割合が高い地域であり、TPP参加によって海外からの安い農産物が流入してくれば、同地方の農業は復興はおろか壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。

  デフレという供給過剰状態は、このような時こそわが国の「底力」として活用すべきであり、これを被災地に振り向けることは同地域にとっても長期デフレに苦しむ日本経済全体にとっても最善の策であると思います。それに何より、生き残った私たちが復興に全力を投入し、さらに強靭な国として再生させてこそ、犠牲となられた方々への最大の鎮魂と言えるのではないでしょうか。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
  ブログをご覧いただいたすべての皆様に感謝を込めて。

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