
4月9日、コミュニティラウンジ「Benten103」にて、第175回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。
今回の講師は、「実践型パーパス経営ラボ」の勉強会でもご一緒させていただいていた、株式会社Three jobs代表取締役の矢間あや様。理学療法士や自ら著作物の広報・PRを手掛けられた経験から、現在睡眠事業、企業の広報・PR支援、一般社団法人睡眠body協会代表理事などを行っておられます。
過去175回のYMSの中で最長と言われるスライド数、おそらく通常3時間くらい要するのではないかという内容を1時間半にギュッと凝縮してお話しいただきましたので、以下それをまとめます。

1. 睡眠の重要性と企業への影響
睡眠不足は、経済に大きな影響を与えます。OECDの調査によれば、睡眠不足による経済損失は、世界全体で15兆円に達すると言われており、アメリカが最も高く、日本はその次に位置しています。ところが、睡眠時間という点で見ると、日本人は一晩で平均7.5時間と、世界的にも非常に短いのが特徴です。睡眠時間と幸福度には強い相関関係があり、幸福度が高い人ほど生産性も高いとされています。したがって、企業は従業員の睡眠について、福利厚生というよりはむしろ、企業活動に必須のビジネススキルの一つと捉えるべきです。
2. 睡眠不足がもたらすパフォーマンス低下
睡眠時間と幸福度と生産性に密接なかかわりがあるのであれば、睡眠不足は従業員のパフォーマンス低下に直結し、それは企業にとって深刻な問題です。その損失は一人当たり33万円/年、これはアルコールに次ぐと言われています。例えば、睡眠不足が原因でミスが増えることがあります。過去の大事故、例えばスリーマイル島やチェルノブイリでの原発事故や、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故なども、睡眠不足による判断ミスが引き金となったと言われています。起床後、覚醒状態のまま17時間を超えると、課題対応能力が血中アルコール濃度0.05%の酒気帯び運転レベルまで低下するそうです。また、徹夜もしくは5時間/日睡眠を1週間続けると、血中アルコール濃度0.1%相当のパフォーマンスレベルになるそうです。仕事での重大なミスや事故は、先に挙げた過去の大事故と同様、企業の信用問題にも発展しかねません。
3. 人的資本経営と健康経営やWellbeing経営の必要性
したがって、睡眠不足の問題は、単なる健康問題ではなく、企業戦略として捉えるべきです。現代の企業では、人的資本への投資が非常に重要であり、その一環として健康経営やWellbeing経営が求められています。人的資本経営では、企業の成長に必要なスキルや知識を持った人材を育成し、維持するための施策が必要です。そのために経営者が最も重要視すべきは、何よりもまず土台となる従業員の健康であり、特によく眠ることが、生産性向上に直結します。
4. 健康経営における睡眠の役割
健康経営では、アブセンティズム(欠勤/休業)ばかりでなく、プレゼンティズム(出勤はしているが、パフォーマンスが低下している状態)が企業経営に与える影響を考慮しなければなりません。プレゼンティズムの問題は、健康関連コストの約70%を占め、企業の成長を妨げる要因となります。睡眠不足を改善することで、従業員の健康が保たれ、結果として企業の繁栄に繋がるのです。また、こうした人的資本経営、健康経営やWellbeing経営に対する取り組みは、可視化し情報開示することも必要です。なぜなら、それがその企業に対する投資時の評価や人材確保につながるからです。つまり、このような情報発信は企業のあらゆる活動を支える土台であり、企業と内外のステークホルダーと高度な関係づくりを行うことが、真の意味での広報・PR(文字通り、パブリック・リレーションズ)だからです。
5. 睡眠の基礎知識と改善方法
睡眠には、いくつかの基本的なポイントがあります。まず、私たちの体には生体リズム(俗にいう、体内時計)が備わっています。このリズムは24時間より少し長いため、本来の24時間のリズムに正しく調整し直してあげる必要があります。そのために、規則正しい起床時間、起床時に日光を浴びる(2500~3000ルクス以上)が大切になります。
次に、睡眠には、記憶を整理する役割があると考えられており、また、十分な睡眠を取ることは老廃物を除去し、認知症予防にも効果があると言われています。さらに、睡眠不足による体調不良は、イライラや前述のように判断力の低下を招きます。こうした影響を避けるためにも、良い眠りが大切です。良い眠りとは、時間だけでなく「身体と脳に十分な休息を与えていること」、目安としては、寝つきが良いこと(すぐ寝落ちしてしまうのはむしろ気絶に近い、布団に入って5〜10分くらいで自然に眠れること)、夜中に目覚めない、朝すっきり目覚め、日中眠気やだるさがない(つまり、しっかり疲れが取れている)ことなどが良い眠りであると言えます
6. 現代の睡眠問題とその原因
現代の睡眠問題の原因として、便利な生活環境により、身体を動かさなくなったことが挙げられます。朝起きて光を浴びたり、体を動かしたりすると、前述のように体内時計がリセットされるとともに、俗に「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンがたくさん分泌されると考えられています。そして夜になると、体は眠りの時間だと判断し、昼に作られたセロトニンを材料として、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンを分泌すると最近の研究では考えられるようになっています。
つまり、昼間のセロトニン分泌が十分でないと、夜のメラトニンが不足し、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなると考えられています(など)。そうなると、脳の休息が不十分でエネルギーが不足するため、セロトニンを分泌する活動も鈍くなるという悪循環に陥るのです。そこで、先に挙げた以外にも、規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動が、良い睡眠のために重要になります。睡眠問題を解決するためには、これらを一つ一つ見直し、改善することが必要です。因みに、適度な運動とは、身体のパフォーマンスを上げる「トレーニング」ではなく、最上のパフォーマンス発揮のために身体を整える「コンディショニング」のことを指します。有史以来、人間は動物として体を動かすようにできているにもかかわらず、現代社会は体を動かさない社会になってしまった。そのことが、あらゆる心身の不調の原因としてあります。
7. 健康な睡眠を実現するための5か条
まとめとして、矢間さんは「良い睡眠を実現するための5か条」を提案されています。
1. 一定の時間に起き、朝日を浴びる。
2. 軽い運動をする。
3. バランスの取れた食事を心がける。
4. 昼寝を取り入れる。
5. 正しい姿勢を心がける。
これらを実践することで、良い睡眠を得ることができ、結果としてより良いパフォーマンスが発揮できるようになります。よく寝る人は幸福であり、まず自分が幸福であるから人を幸福にでき、そして幸福な人は良く寝られるという好循環が生まれます。Wellbeing(心身ともに満たされた状態)のために何より睡眠が大切である所以です。
8. 個人的課題
最後に、公に書いてしまってよいものか?今回のお話の中から抽出した僕自身の個人的課題をまとめます。僕はまさに前述の1日5時間睡眠を続けています。すなわち、僕のパフォーマンスレベルは血中アルコール濃度0.1%、酒気帯び運転で捕まる3倍相当のようなのです。そして、確かにお話にあった以下のような症状があります。
・疲れが取れない、一日中だるい
対処:寝不足と運動不足が原因。軽く身体を動かす積極的休息を行う
→これは、最近早朝ウォーキングを始めたので、解消を実感しています。
・筋肉量が少ない(深部体温の低下により睡眠に影響する)
対処:運動せよ。
・食欲が止まらない(食欲を抑えるレプチンが減少し、食欲を増進させるグレリンが増加する。セロトニン不足も食欲増進の一因)
対処:「寝ろ」としか…。
・夕食を食べてすぐ寝る
対処:最低2時間(理想は4時間)空ける。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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