老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『二人の高利貸しの21世紀』byイキウメふたり会

2010-03-05 09:37:49 | 演劇
今回ニッポンで見た、順番的には2番目の芝居は去年2つ見て2つともおもしろかったイキウメの特別企画。会場でもらったプログラムにはイキウメ俳優部が演出、と書いてある。俳優サンが二人ずつペアになって一つの脚本をそれぞれ別々の解釈、というか、「それぞれ自分たちの生活実感を手掛かりに」演じるというもの。土日に昼から始まって1日に4パターンで、ワタシとムスコが見たのは俳優ブチョーの森下サンと若いバリバリの窪田さんのペアによるもので、おそらくほかの人のも見ないとこの企画の面白さは理解できない。
とはいえ以前、テレビで見た「短編集 図書館的人生」の中の一編ずつよりはやや長めながらテンポよく話は進み、俳優という生身のニンゲンが目の前で演じることでソコに日常とは別の空間が出来上がるという芝居の面白さそのものを感じさせてくれた。

脚本はチェルフィッチュの岡田サンが10年前のちょうど21世紀が始まるころに書いたもので、二人の高利貸しが21世紀になろうとしているそのときに、借金の利子と引き換えにジンゾウとか目ん玉とかカンゾウとか心臓とか、売れそうなものを全部取っていってしまう借金取りをやっていて、シゴトが終わった後にブチョーのほうがこんなんで21世紀を迎えられんのかー、みたいに言っている。ソコに返してもらったおカネのなかにゲジゲジが迷い込んだんじゃないかという錯覚だか幻覚だかにとらわれて、ブチョーがそれを見つけて踏みつぶした後で、それがカミ様の化身じゃないかという妄想にハマってしまう。で、カミ様を踏みコロシてしまったからもうこの先、生きていけないと思っていたら、バリバリの若いほうがもう借金取りはやめて、もらってきたおカネをネコばばして宗教で稼ごうと言い出す。でもってその話にのっかったブチョーは妄想から解放されて21世紀に生きていこうとする、、みたいな話。

妄想とか迷いにとらわれている間はおカネの入ったカバンが重くて持ち上がらないのが、ソコから解放されたとたんに軽々と持ち上げられる。そのことで日常によくあるニンゲンのココロの中のもやもやしたものが本当はこんなモノなのだ、ということを言っている、のかな。。プログラムには「天気」いや、「転機」がテーマだと。でもってこのブチョーと若者のペアは「軽演劇」に挑戦したとある。となるとますますほかのは同じ脚本でどんなに違うのか、それぞれ二人だけで作り上げたというから出来上がったモノの違いには興味シンシンだが、芝居っていうのは見たい時にいつでも見れるってモノではないので、それがまた芝居だけのおもしろさでもあるのだが、次回は少なくとも二つは見てみないと、と思いマシタ。

それにしてもこんなふうに目の前2~3mのところで演じられたら、ソコに日常と非日常の裂け目がぱっくり口をあけて、見ているうちに完全にその中に落ち込んでしまうような気になった。当然、ヘタな人だったらシューチ心でいたたまれなくなるような状況。

2010.2.28 明大前・キッドアイラック・アートホールにて。時間があれば地下のブックカフェに今度。