老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『シクロ』 トラン・アン・ユン

2009-06-28 13:36:31 | 映画
先週買ったDVDは結局みんなベトナム出身の監督が撮った外国映画で純粋なベトナム映画はコウいうのを読むと衰退の一途をたどっているようだ。ハノイには映画館が6、7軒しかなくていわゆるシネコンみたいなのはココだけ。アメリカの安っぽい娯楽映画が中心でその辺はニッポンと似たり寄ったりだが映画産業自体は作る方も上映する方も風前のトモシビ状態。かと言ってテレビドラマのほうに流れが移っているかというとそういうわけでもなく、このクニの底の方に淀んでいる目に見えない制度によって何かを表現するエネルギーそのものが吸い取られている感じ。まあガイジンがそんなこと言っても大きなお世話なんだろうけど。

とりあえず記憶が消えないうちにコレを書いておくと、前の「パパイヤ」に比べてホーチミンの町中で撮影しただけあってリアルな雰囲気は出ている。内容もベトナムヤクザの勢力争いみたいな中で男女がくっついたり離れたり、ヘンタイ趣味のオッサンの前でオンナの人が・・・したり、はたまたマヤクでヨレヨレになってピストルでジブンを撃ったり、、ベトナムにもこういう闇の世界があるんデスかと心配になるような映画。ただコレでヴェネチア映画祭グランプリってのもヨーロッパ人の植民地思想的異国趣味によるモノとしか思えない。
だいたい話の流れが雑というか、そもそものギモンとしてなんでシクロの営業権くらいのことで家に火をつけたりリンチみたいなことをしなきゃいけないのか、その辺がヨーロッパ人のアジア人を見る、まるで野蛮な動物か何かを見るような見方がまる出しでイヤなモノを見せられたというようなあと味の悪さ。

ユン監督がベトナムの日常性を象徴化しているシクロというのは自転車の前の車輪が二輪になっていて普通の三輪車の前と後ろが逆になったような乗り物で、たぶん5、6年前くらいまでは一般にたくさん走っていたんだろうが今では観光客向けのイカガワシイ人たちだけが営業しているノリモノ。基本的に自転車なのでキワメテゆっくり走る。ニッポンの人力車みたいに観光地の文化保存的さわやかさもなく、ハタから見てるといかにもカッタルイ。その疑似的な日常性とその裏で進行しているベトナムの変化。ヤクザがハビこってひとびとの平和な生活が脅かされて、、そういう暗い社会のなかでも男女がたくましく生きていく、みたいなモノを作りたかったんだろうが、このクニにはもっとあからさまな血の社会みたいなのがあって、それがいろんなことの邪魔になっている、というようなところを撮らないとまったくもの足りない。

1995年、フランス・香港・ベトナム映画