老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『魔法の万年筆』

2007-06-05 08:12:45 | 演劇
稲垣吾郎チャン主演で会場の9割は女性。オヂサンは10人もいなかったが、ワタシのめあては鈴木サンの作品そのもので、呼吸困難になるくらい笑い、また重たいものが心の中に残った。

1920年代のニューヨークがとりあえず舞台。それを持つと名作が次から次に書けるという魔法の万年筆をめぐって、富と名声を求める若者や偉大な父親の亡霊から逃れられない兄妹が偽りの人間関係でつながりあう。若い男は成功と引き換えに本当に愛する女性を捨てるが、最後にすべてを失ったときに、得たものの薄っぺらさと捨てたものの重さに気付く。。ってな話。
オトコは何のためにがんばるか、というようなことがテーマで、それはやっぱり誰かに褒めてもらいたいため、というのが話のスジになっている。父親とか、愛する女性とかに。だからそれを失ったとき、力尽きるわけだ。

で、鈴木作品の重たいところは、ワタシがまったく同世代ということもあるが、やっぱりジンセイの後半に差し掛かって、これまでいろんな悪いことをしてきたと後悔の気持ちが底のほうにあって、それを爆笑ネタで包みながらも終わってみるとその重たいものがずしりと感じられるところだ。
ワタシもジブンの成功につながると少しは考えて、一人のオンナの人を捨てたこともあるし、逆に自己満足のために利用されたこともある。いろんなことがあったとしみじみと考えてしまう。短いようで長い時間が過ぎたと。そういう深いところでつよく共感した作品だった。

吾郎チャンはなかなか存在感のある芝居をしていたと思う。捨てられたオンナ役の西牟田恵、父親の亡霊に怯えるダメな息子役の河原雅彦など、共演者もみんなよかった。

鈴木聡 脚本・演出
パルコ劇場にて