老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『麦の穂をゆらす風』

2006-12-16 22:32:51 | 映画
これは必見
イギリスに支配されていたアイルランドで、誇り高い、独自の文化を持ったアイルランドの普通の人たちが、イギリスの兵隊にひどい目にあっていた頃のはなし。やがて独立したものの、イギリス側から押し付けられた独立の条件をめぐって国内が分裂し内戦に向かっていき、最後はまあ、予想通りの最悪の結末を迎える。
これ以上の悲惨な物語はないだろうというくらいの内容なのだが、、これはニッポン人にはわかりにくい映画なんだろうと思ったわけだ。

というのも、これを見に行くことにしてふと思い出したのが、ポール・マッカートニーがWingsをやっていた頃の曲で、“Give Ireland back to the Irish” というのがあって、これが日本では『アイルランドに平和を』という題になっていたことだ。
それがどうした、といわれると、英語の題名には平和なんて言葉はひと言も使われていなくて、ただ『アイルランドをアイルランド人に』といっているだけなのに、日本題になると、一気に平和愛好ソングになっていることに、この映画を見て深く納得したということを言いたいだけなんデス。
つまり、コイズミやアベシンゾー見ればわかるように、ニッポン人の場合、魂売ろうがカラダ売ろうが、平和ならとにかく何でもいいという考え方があるのに対し、アイルランド人は魂売るくらいならコロサレたほうがマシで平和は二の次、という考え方で、この数百年間、イギリスと戦ってきて、それの1920年前後の、アイルランドにとっては重要な数年間を切り取ってタンタンと見せてくれたのがこの映画だということなのであーる。宣伝のキャッチコピーも、「愛する人を奪われる、、なんたらかたら、」で、やっぱり平和ボケだなあとつくづく思ったシダイ。

最近の愛国心モンダイも、アベシンゾーがニッポン人に対してやろうとしているのは、クニのためにヨロコンで死ぬ人間をいかにつくりだすか、ということだが、それはもう、ホントに話がイカサマ、いや、逆さまで、この国が命をかけて守るに値する国かどうかってことをまず考えなければいけないわけだ。そしてもちろん、今のこの、ヤクニンが好き勝手なことをやって、政治屋はみんな親の七光りで、コクミンの苦労なんか知ったこっちゃない、という国に対してそんなキモチをもてるのは、成人式でハカマ着て、今日から悪い大人の仲間入りっていって酒飲んで暴れる、ああいうスナオな人たちくらいなものなのだ。

もっとわかりやすく言えば、この映画に描かれている「愛国心」とは、ドイツワールドカップで、ナカタ選手が見せてくれて、ほかの代表選手が見せてくれなかった、そしてその結果完敗して、そのキモチの違いに愕然として引退までしてしまった、あの「愛国心」であり、昨日の教育基本法改変法案が成立したことに対して、一つの私立学校の校長が反対であるということを堂々と社会に対して述べ、それにすべての教員が同調した、あのような人々の持つ「愛国心」なのである。

まあ、そういうわけで、、なかなか書けない間に終わってしまうかと思ったら、あと1週間やっているようなので。
俳優はアイルランド人またはアイルランド系の人たちで固められていて、主演のキリアン・マーフィーが素晴らしい。オーラ・フィッツジェラルドも、美しく、魂がこもっていた。
ケン・ローチ監督。

12/10、川崎チネチッタにて。