老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

KOSI   から(3)

2015-11-28 12:04:48 | 俳句


      ☆    山茶花の一樹にむすぶ庵かな   長谷川櫂

 山茶花の大きな木がある庵である。「一樹にむすぶ」は「一樹に暮らす」とも読める。石川丈山の詩仙堂が思い浮かぶ。
(大呂インターネット句会より)



「俳句自在」から
     ☆   朴落葉水面に浮きて動かざる   下村和生
「動かざる」がみえたこと、ここが立派だ。この一語は冬そのものの姿でもある。
     
     ☆   柿熟すおばも熟して九十七   野田省吾
おばあさんを熟柿にたとえた。このいい方が卓抜。

     ☆    間引き菜は洗うそばから流れ去る   真板道夫
この句の間引菜は人間界の比喩でもある。逆にいえば人間界を描くにはこうすらばいい。

     ☆    秋晴や人形焼の顔を選り   小池沙智知
     ☆    生れしより故郷にをり菊の酒   今村武章
ふと気がつけば、ずっと故郷にいる。そうした人の姿が目に浮かぶ。

     ☆    柿供へかへらぬ日々にまた涙    橋詰芳子
誰かを悼む句である。「かへらぬ日々にまた涙」という言葉の流れが自然。つまり型どおりではない。

     ☆    時かけて十字にひらく椿の実   諏訪いほり
「時かけて」というところが、年齢の賜物。


何年か前の古志のページを繰っていたら、特選句の選評があった。
何げなく読んでいたのだろう。今、読み返すと、いつも師が口を酸っぱく、言っていることが書かれている。
理屈はいけない。思いがこもっていなければ、、、形容詞以外の言葉で。
短い選評の言葉に、これらが込められていた。


        咲き満ちて山茶花に翳なかりけり   葉
コメント
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