老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

屋島界隈   (2)

2015-11-07 10:05:58 | 俳句

         ☆   秋行くとオリーブ林の銀の風    石田波郷



       ☆   お遍路やひた下りゆく裏屋島   鈴鹿野風呂

           野の起伏遍路うねりとなりて来る   葉

我が家から、屋島小学校と「まぶい」を抜け、上へ上へと登って行くと、八十四番札所 屋島寺がある。
屋島寺へ登る二、三のルートの中で最たる道である。
今では一気にドライブウェーを利用して、車やバスで登ることが出来る。
ケーブルーカー(今では廃止されている)が無かった時代のお遍路さんも大半がこの道を通ったと思われる。
屋島寺へ辿るまでには、お大師さまの伝説の場所が、沢山残されている。
三十分余りの、険しい坂道の途中には、今では休み場所もある。
疲れて思わず歩を休めて、来た道を振り返ると、屋島の裾の広々とした街並みがあり、一息を入れた後、最後の険しい坂に挑戦することになる。

私が、屋島に住んでいた時は日課として、屋島寺へ登った。およそ三十分かかる。寺へお参りした後は、山頂にあるうどん屋で、うどんを食べるか、飯蛸その他のおでんを食べて小腹を満たした、下山したものである。
きっと今は、とても三十分では、登れないであろう。膝ががくがく笑うに違いない。    


まぶいの店内。目を引く、木偶人形が飾られている。

     ☆   昼顔や木偶にはらわたなかりける   斎藤梅子

     ☆   髭左右に張り秋風の中の人形(でこ)   友岡子郷



洋服のコーナーがある。食器や、インテリアのコーナーがある。喫茶コーナーーがある。
注文した紅茶を飲みながら、眼下に広がっている街を望む。我がマンションを見る。
姫 も 殿 もいない夫婦だけの静かな営みの時代であった。窓辺に立って、四季の移り変わりゆく、屋島を見て飽きなかった。
その頃はまだ、ケーブルカーが運転されていた。
紅葉に染まった秋の山を、灯をともした最終便がゆっくりと降りて来る。
この景色が一番好きだった。



      紅葉かつ散る香煙をゆらす風

      月を待つワイングラスとぐい呑と

      ふつてわく縁談秋の日の眩し

      

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする