老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

文化の日

2015-11-03 14:43:26 | 俳句

     


☆     文化の日誰も癒えよと言い去りぬ    石田波郷

      
石田波郷の哀しみがひしひしと伝わってくる。
文化の日は、波郷が清瀬の療養所にいた頃から、すでに休日だったのだろうか?
お休みのこの日、勤めを持っている人が、入れ替わり立ち替わり、波郷の元に、お見舞いに訪れたのだろう。
皆さん、帰りぎわには、早く良くなって下さい。きっとお元気になりますよ。とか、優しい言葉をかけて、帰ったに違いない。
あの頃の、結核は今の癌のように、恐い病気であった。不治の病に近かった。常に病気と闘いながら、完治したい、退院して、家で不自由でもいい小康状態になって、思う存分に、俳句を作りたい、と思いつつ、このまま悪くなってゆくのではないのかと、一末の不安が頭の隅にきっとあったのであろう。いや、将来の自分が見えていたのではないだろうか。
良くなって下さい。癒えますよ。波郷は砂を噛むような、虚しさで聞いていたのではないだろうか?
病気を抱えた無念が、哀しみが、推し測れる一句である。読んでいて私も悲しくなる。



       ☆    山畑の高みに励み文化の日    馬場移公子

       ☆    路地に住む人間国宝文化の日    日比野睦子

       ☆    婆ひとり臼を廻せり文化に日    五所平之助

市井に住む普通の人々は、文化の日だと言って、特別に変わったことをする日でもない。黙々と、その日の仕事に精を出して、平穏な一日が暮れてゆく。 



昔は 明治節 と言い、明治天皇の誕生日であった。
昭和二十一年に「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ためにと制定された、文化の日となっている。
常に精進して学んだ、書画や、工芸品を、展覧する、文化祭がどの町でも開催されているようである。

         枇杷咲けりいつものやうにさりげなく

         着ぶくれて色気もあつたもんじゃない

         べんがら格子昼を灯しぬ秋時雨

         合歓は実に里に一機の水車

         どぶろくをお飲のみなされと札所宿
コメント
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