政府が再任の人事案を提示した日銀の黒田東彦総裁は2日、衆院議院運営委員会の所信聴取に臨み、大規模金融緩和を手じまいする「出口戦略」について、「2019年度ごろに検討し、議論しているのは間違いない」と述べた。黒田総裁が出口の検討開始時期を明言するのは初めて。「新生・黒田日銀」にとって、金融市場に混乱を与えずに着実に出口に向かうことが最大の使命となる。

 日銀は現在、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に抑えるため、国債の買い入れを続けている。今の日本経済の状況について、黒田総裁は「もはやデフレではない状況であることははっきりしている」と述べた。好調な海外経済の追い風も受けて、実質国内総生産(GDP)成長率は8四半期連続プラスとバブル期以来の長期成長が続く。

 黒田総裁は「再任されれば、引き続き政府と連携しながら日本経済のデフレ脱却への総仕上げを果たすべく全力で取り組む」と表明した。

 総務省が同日発表した労働力調査によると、1月の完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月から0.3ポイント低下し、24年9カ月ぶりの低い水準に改善した。雇用の改善は賃金・物価の上昇に直結する。

 第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「労働市場の改善はまだ続きそうで、日銀にとっては間違いなく追い風となりそうだ」と話す。

 黒田総裁が出口検討開始時期に言及したことを受け、この日の金融市場では、長期金利の目安となる新発10年債の利回りは、一時、前日終値より0.030%高い0.080%に跳ね上がり、市場が日銀の出口戦略を警戒していることが浮き彫りとなった。

 衆院議運委は5日に副総裁候補の若田部昌澄早大政治経済学術院教授と雨宮正佳日銀理事に対する所信聴取を行う予定だ。