日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)は21日、東京地検特捜部に特別背任容疑で再逮捕されたことで勾留が長期化する見通しとなった。容疑を否認するとみられるが、特捜部の否認事件では起訴後も保釈が認められず、勾留が長引く傾向があり、数カ月に及ぶ可能性もある。

 最大20日間認められる公算大

 特別背任は、企業のトップや幹部が会社に損害を与えたとする悪質な犯罪で、事件の内容も複雑なことから勾留は最大20日間認められる公算が大きい。

 起訴された場合、弁護人から保釈請求が出されれば、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるといった例外を除き、裁判所は保釈を認めなければならない。だが否認事件では、特捜部が「証拠隠滅の恐れがある」などと主張して保釈請求が却下されるケースが少なくない。

 受託収賄罪などで有罪が確定した鈴木宗男元衆院議員は否認を続け、437日間勾留された。今年3月のリニア中央新幹線建設工事をめぐる談合事件でも、否認した大手ゼネコン2社の元幹部ら2人は今月まで約9カ月間勾留された。

 一方、村上ファンド事件の村上世彰(よしあき)氏が起訴の3日後に保釈されるなど、容疑を認めた場合は保釈が認められる傾向にある。

 来年1月に早期保釈の見方も

 否認事件では一般的に、公判前整理手続きで論点が明確になるまで勾留される場合が多いが、ゴーン容疑者の場合はどうなるのか。

 元検事の高井康行弁護士は「容疑を否認し、従来通りの扱いであれば、数カ月間勾留される可能性もあるが、今回はそうはならないのでは」とみる。東京地裁が2回目の再逮捕後の勾留延長を認めなかったこともあり、「裁判所が証拠隠滅の恐れの有無を厳格に判断するので、否認の場合でも事実関係を認め、評価を争うような場合は来年1月中に保釈される可能性もある」との見方を示す。

 今回の事件では、欧米メディアから「長期勾留」などと日本の刑事司法制度に厳しい目が向けられただけに、法曹関係者の中には「裁判所は海外世論を気にして早期保釈を認めるのでは」(元検事の弁護士)との見方もある。

 山下貴司法相は21日の閣議後記者会見で、海外からの批判について「逮捕・勾留は法の規定に従い、司法判断も経て適正に行われている。批判は当たらない」と反論した。