第68回NHK杯テレビ将棋トーナメントの藤井聡太七段(15)―今泉健司四段(45)戦が15日、放送され、今泉四段が勝った。史上最年長でプロ入りした異色の棋士が、快進撃を続ける高校生棋士に先輩の貫禄を見せた。

 50人が出場する本戦の1回戦で、6月に収録があった。1手30秒未満で指す「早指し」の対局は、大混戦の末、159手の長手数で今泉四段が制した。「諦めていたわけではないが、自分の勝つ確率は1割ぐらいだと思っていた。『窮鼠(きゅうそ)猫をかむ』という気持ちで指した。勝った後は、実感が湧かなかった」。本人にとっても予想外の勝利だった。

 棋士になるには、養成機関の「奨励会」で規定の成績を挙げる必要がある。今泉四段は2度にわたって在籍したが、プロ入りは果たせなかった。2014年、編入試験に合格して、戦後最年長の41歳で棋士の座をつかんだ。会社員や介護の仕事も経験した「苦労人」だ。

 今泉四段によると、双方に悪手が出た戦いだったという。「最後にミスをしたのが、たまたま藤井七段だった。内容は良くなかったが、自分の人生観が出た会心の将棋だった」と話した。(村瀬信也)