親による子供への体罰を禁止し、児童相談所の体制強化を柱とする改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が19日、参院本会議で可決、成立した。一部を除き来年4月から施行される。親権者に必要な範囲で子供を戒めることを認めた民法の「懲戒権」については施行後2年をめどに検討するとしており、山下貴司法相は20日の法制審議会の臨時総会で見直しを諮問する見通し。

 昨年3月に東京都目黒区で5歳の女児、今年1月には千葉県野田市で小学4年の女児が死亡するなど悲惨な事件が続いたことを受けた法改正。児相などの不手際が相次いで明らかになり、抜本的な対策強化を求める声が高まっていた。

 改正法をめぐっては、今国会で確実に成立させるため、与党が野党との修正協議に応じ、再発防止のために虐待をした親権者らに医学的・心理学的な知見に基づく指導を行うよう努めるとする規定など、野党側の求めた項目を取り入れた。

 改正法では、親権者や里親、児童福祉施設長による「しつけ」としての体罰禁止を明文化。児相が子供の安全確保を躊躇なく行えるように、子供を一時保護する「介入」と保護者の相談などに乗る「支援」という機能に応じて担当職員を分け、介入機能を強化する。

 転居時にも切れ目のない支援を続けるため、転居先の児相や関係機関と速やかに情報を共有。ドメスティックバイオレンス(DV)の対応機関との連携を進めることも盛り込んだ。

 野田市の事件では、市教育委員会が虐待被害を訴える女児のアンケートの写しを父親に渡していたことが問題化したため、学校や教委、児童福祉施設の職員に守秘義務を課す。

 対応に当たる専門職「児童福祉司」は人口や対応件数を考慮し、体制を強化するとしている。