借金ではなく預貯金と錯覚か 「銀行カードローン」の甘い罠
近年、銀行が一般消費者に無担保で融資する「銀行カードローン」の貸出残高が急増している。銀行カードローンは都市銀行や地方銀行、ネット銀行などが提供しているローン商品だ。
かつては消費者向けローンといえば消費者金融など貸金業者の独壇場だったが、規制強化でその貸付残高は大幅に減少、その一方で銀行カードローンの残高は増え続け、2014年には貸金業者を逆転した。多重債務者などの家計相談を受ける生活サポート基金相談員の清原公美子さんは言う。
「銀行のATMから現金を引き出すと、まるで預金を下ろしているような錯覚に陥る。借金している感覚がなくなってしまうのです」
それまで減少を続けていた自己破産件数も2016年に前年比増加に転じ、銀行カードローンとの関連が指摘されている。なぜ、銀行カードローンが増え続けているのか。「銀行のブランド力が、ローン利用のハードルを下げている」と清原さんは解説する。
「消費者金融には悪いイメージを持っていても、銀行には抵抗を感じない人は多い。どこで借りているか尋ねると“変なところは使っていません!”と胸を張る人もいるほど。相手が銀行でなければ借金することはなかったのでは、と思える人は多くいます」
利息や返済期間を意識させない
企業イメージだけでなく、金利面でも銀行は消費者金融より若干有利ではある。上限は14%前後で、消費者金融の18%前後を下回ってはいるが、高金利であることには変わりがない。たとえばあるメガバンクで14.6%の金利で50万円を借りる場合、月々の返済額を1万円に設定することも可能だ。一見、返しやすいように思えるが、返済期間は6年半、支払う利息の総額は20万円を超える。
生活困窮者の支援などを行う弁護士の森川清さんは、手続きの簡単さも利用を後押ししていると言う。
「最初は一度だけのつもりで少額を借りる。それがあまりにも簡単で便利だったために、ついまた借りてしまうというパターンは多い。それでも月々の返済額は1万円とか2万円といった少額のままで済むので、総返済額や高金利を意識することなく借金が膨らんでしまうのです」
銀行や金額にもよるが、一般的にはスマホや電話などで申し込みをして、運転免許証など本人確認できる書類の写真をスマホカメラなどで撮って送信すると審査がなされ、最短で翌日にはお金を引き出すことができる。使い道について聞かれることもない。
ファイナンシャルプランナーの鴇巣雅一さんは、一度手を出すとやめられなくなる理由についてこう話す。
「借りる人が決めるのは月々の返済額だけ。そのうち利息はいくらだとか、返すまでに何年必要かといったことに意識が及ばない仕組みになっています」
しかも、きちんと返済を続けている「上客」には、電話やDM、メールなどで借入限度額の増額を提案されるのだ。
「評価されたようでうれしく、借りる金額が増えると金利を下げてもらえるので、もっと借りた方が得するような気になるのです」(鴇巣さん)
※女性セブン2019年1月1日号