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クルマに関する妄想集(+その他のことも少し)

選んだクルマが語ること

2008年12月26日 00時57分12秒 | Weblog
徳大寺有恒が、その著書「間違いだらけのクルマ選び '90年版」において、T12型スタンザ/オースターに対し、次のような批評文を書いている。少々長くなるが引用したい。

「…クルマなんて動けばそれでいいと割り切れる人なら、こいつを買うのもいい。買ったときから思いこみのないクルマは飽きることもないだろうし、少々傷がついてもこたえることもない。そういうクルマの乗り方も、けっして悪くはない。」

徳大寺有恒が優秀な自動車評論家かどうかはともかく、上記の彼の評論はなかなか真実をついていると思う。僕は言うまでもなくクルマ好きであるが、ときどき自分でも、自分のクルマ好き加減が鬱陶しくなるときがある。あるクルマを気に入って買い、日々それに乗りながらも、必ず他のクルマを気にしている自分がいるからだ。

そんなときは、この写真のV20型カムリのように、生活の伴侶としてよく出来た実用車を買って、そいつと淡々と長期間にわたり暮らすといったスタイルが妙にまぶしく映ることがある。とくに、この写真のグレードは、「1.8 XTサルーン」という、カムリのグレード体系における中位機種であり、最上級グレードを選ぶことで生ずる自分の生活観と所有するクルマとの間のズレを嫌ったオーナーの思いがうかがわれる。「自分の生活にはこのグレードがいちばん合っている」と冷静に判断したその見識には脱帽である。

この頃のトヨタ車は、カローラ、コロナ、カムリ、マークⅡ、クラウンと、どれも水平基調のボディデザインで統一されているが、中でもこのカムリは平凡な中にも磨きこまれた美しさと車格感があり、一人前の男が乗るクルマとして十分に納得できるものを持っている。したがって、生産終了から20年近く経った今日でも、このクルマのたたずまいはそう古びていない。写真のカムリ1.8 XTサルーンからは、華美になることを慎重に避けながらも、自分の人生に責任を覚え始めたひとりの男の選択の結果が反映されているような気がして、とても好感が持てる。
コメント
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