コロナ禍で愛人と“おこもり”したタイ国王 国民は前代未聞の王室批判を展開

2020年05月27日 | 旅行

コロナ禍で愛人と“おこもり”したタイ国王 国民は前代未聞の王室批判を展開

5/27(水) 5:59配信
デイリー新潮

「ラーマ10世」ことワチラロンコン国王

 猛威をふるう新型コロナは、“微笑みの国”として知られるタイも襲った。5月26日現在、感染者数は累計3045人で、死者は57人。が、タイ国民にしてみれば、この騒動によって国王の奇行が世界に喧伝されてしまったことが、なによりの禍(わざわい)かもしれない。東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏がリポートする。

【写真】東南アジア王室「隠し子騒動」「側室収監」

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 3月末、タイのチャクリー王朝10代目「ラーマ10世」ことワチラロンコン国王(67)の振る舞いが、世界を仰天させたのをご存じだろうか。舞台となったのは、タイから約9000キロ離れたドイツ。国王は、側近数百人を引き連れ、アルプスを一望できる有名リゾート地・バイエルン州のガルミッシュ・パルテンキルヒェンにある高級ホテル「グランド・ホテル・ゾンネンビッヒル」を貸し切り、“コロナおこもり”ともいえる自主隔離生活を送っていたことが発覚した。第2次世界大戦時にはナチスの野戦病院としても使われていた歴史ある施設だ。スクープしたのはドイツ紙『ビルト』である。

 いうまでもなく、世界は新型コロナパンデミックの真っただ中。ドイツでも大規模な検疫が実施され、国境が封鎖されていたにもかかわらず、ドイツ当局はタイ国王の入国及び滞在を特別に許可していた。さらに驚くべきは、国王ご一行の中には、愛人20人を伴っていたという事実。コロナ禍の最中に、ドイツで“ハーレム”状態にあったというのだ。

 2016年12月に就任した国王は、3度の離婚歴の持ち主でもある。昨年5月には4人目の妻となるスティダー王妃と結婚している。ところが今回の自主隔離に、この新妻は同伴せず。『ビルト』は、「ドイツに同伴した国王側近のうち119人が新型コロナ感染疑惑でタイに送還された」と報じている。

『CEO WORLD Magazine』などによると、タイ国王は“世界一リッチな王”で、資産は約430億ドル。英エリザベス女王の個人資産の約80倍にも相当するという。日本のメディアでは報道されていないが、今回の大胆すぎる“自主隔離”について、英紙『タイムズ』が「コロナパンデミック中、どうやら国王は、2月から海外で“自主隔離中”のようだった」と書いたほか(ドイツ以前にスイスのチューリッヒでも目撃談があったそうだ)、英紙『インディペンデント』、仏紙『ル・モンド』、米紙『ニューヨーク・ポスト』といった世界の主要メディアが報じているのだ。

 タイは、中国・武漢在住者から最も人気の旅行先とされ、昨年12月からの春節休暇期間中には、およそ2万人が訪れていた。1月13日に国内で初の感染者が確認され、国王の“自主隔離”が発覚した3月末には、感染者が1500人を超え、死者十数人の非常事態宣言下にあった。ロックダウン措置もとられ、予測されていた失業者数は1000万人。生活苦による無理心中なども発生し、まさに国家的な危機的事態にあった。

 当然、タイの国民の怒りは爆発。タイ語で「我々はなぜ、国王が必要か」というハッシュタグが登場し、ツイッターには国王を批判する150万件以上の投稿が寄せられた。このタグは、一時タイ国内の「Twitterトレンドワード」トップになったほどだ。

 厳しい批判を受けた国王は、歴代国王を恭敬する重要儀式のため、4月6日の「チャックリー王朝の日」に一時帰国したものの、翌日、ドイツにトンボ返り。5月1日になって、タイ政府は「国王が見守る中、スティダー王妃が国民に配布するマスクを縫う写真」を公開した(ちなみに日本のJUKIミシンを使用)。コロナ禍で失業者が相次いでいる中、国民の怒りの矛先は政府へと向かっている。写真公開は批判をかわす目的だったろうが、SNS上に巻き起こる非難の声は止まらなかった。

 しかし、タイ国内でこうした国王批判が展開されるのは異例のこと。タイには、国王や王妃、王位継承者、さらには国王の愛犬の“ロイヤル・ドッグ”までも対象に、批判や侮辱を厳しく罰する「不敬罪」(刑法112条)が存在しているからだ。これまで、例年、平均で数十人単位が逮捕・起訴されてきた(ちなみにロイヤル・ドッグを侮辱し、86日間拘留されたケースがある)。

 こうした厳しい法律があるだけに、国民は王族批判を公には行えなかった。それだけに、今回の批判噴出は前代未聞といえるのだ。


ヌードパーティー映像が流出

新国王即位で、タイではラーマ10世の顔が施された新紙幣が発行されている(筆者撮影)

 タイ国民を唖然とさせた現国王の振る舞いは、実は今回が初めてではない。国王は皇太子時代からタイの王室行事には参加せず、1年の大半を王室が所有するドイツ・ミュンヘンの“別宅”で過ごしてきた。今回のスクープを放ったドイツ誌『ビルト』は、そんな国王の奇行ともいえる振る舞いをたびたび報じてきている。例えば、16年に撮影されたドイツ・ミュンヘン空港での一枚。深々と頭を下げる王室スタッフを横目に、当時まだ皇太子だった国王は、おへそが丸見えの超短い女性用のタンクトップ、シニア男性用とは思えないタイトジーンズをはき、女性用サンダルをつっかけている姿だった。ほぼ半裸といえる上半身には、カラフルな色で描かれたタトゥ―風のペインティングが施されていた。

 国王就任以降の17年4月には、やはりドイツのショッピングモールで愛人と買い物に興じる姿が激写された。前述と同様の独特のいでたちで、前方には、靴を履いたロイヤル・ドッグが闊歩。さらに、銃を構える王室警備員が随行。彼らはタイ国軍とは別に存在する5000人規模の軍隊だ(BBC報道、2016年12月)。

 遡れば07年には、タイで目を疑うようなヌードパーティーの動画がSNS上で拡散された。この映像は、英紙「デイリー・テレグラフ」の視聴数ランキングでトップに躍り出たこともある。

 これは、まだ皇太子だった国王の3番目の妻で、元ストリッパーともいわれるシーラット皇太子妃が王族を招待した30歳の誕生日パーティーで撮影されたもの。客人を前に、妃はティーバックだけのほぼ全裸で、傍らにはロイヤル・ドッグのプードル犬「フーフー」(タイ空軍の大将位を授与されている)を従えている様子が収められている。

 ちなみに国王については、日本を巡るこんなエピソードも――1987年、両国の修好100年の記念式典参加のために来日した際、タイ側から日本側の対応を「非礼」だと批判する声が上がった。

 当時、タイ側の意見を代弁しているとされた現地紙『タイ・ラット』が書いた「非礼」の点は、「鎌倉訪問時、皇太子を乗せた車の運転手がトイレに行くために停車した(タイ側に許しを得て停めたと後藤田官房長官=当時=は釈明)」「名古屋で行われたラーマ5世銅像除幕式で、引き綱を地面から拾い上げさせられた」といったものだった。

 結果、タイでは反日運動が展開され、事態収拾のため、当時の中曽根首相が謝罪を強いられることとなった。もっとも、タイで発禁処分となった『国王は決して微笑まない』(2006年、米イェール大出版、日本未訳)の著者、ポール・ハンドリー氏は、当時皇太子だった国王を“暴力、スポーツカー、うさんくさい取引を執拗に好むわがままな男”として書いている(『NYタイムズ』書評より)。この本の中では、“日本の一件も国王が招いたものだ”とするCIA機密文書の存在が紹介されてもいる。


王室めぐる政治事情

「国父」と敬愛されたプミポン国王(ラーマ9世)の時代もそうだったが、立憲君主制のタイでは、現国家元首にあたるラーマ10世の肖像画が国のいたるところに飾られている(タイの警察署にて 筆者撮影)

 国王のスキャンダルが報じられるのには、ややきな臭い事情もありそうだ。16年10月に88歳で崩御した前国王は、「国父」としてタイの国民から深く崇拝され、敬愛されてきた。前国王を含め、歴代のタイ政府は、国王を神格化し、政治利用してきた歴史がある。

 法政大学の浅見靖仁教授は、「国王の神格化に最も積極的だったのは、軍事政権だ」と分析しているが、06年と14年には、それぞれタクシン・チナワット氏、実妹のインラック・シナワトラ氏を首相とした政府が、軍事クーデターによって倒された。

 クーデター政権は、前国王の承認を得て成立している。王室は、軍事政権の正当化に利用されている節があり、ゆえに反軍事政権側(タクシン派)としてみれば、継承者である現国王および王室の権威失墜は、軍事政権打倒の活動の一環でもあるのだろう。ゆえに一連のスキャンダル発覚の背景には、タクシン派の思惑があるとの見立てもある。

 実際、先に紹介したハッシュタグによる批判運動も、発端はパリで暮らすタクシン派のタイ人のフェイクブック投稿であるといわれている(英『インディペンデント』報道)。こうした亡命タクシン派の知識人は日本にもおり、京都大学東南アジア地域研究研究所の准教授、パビン・チャチャバルポンプン氏もそのひとり。汚職で有罪判決を受けて国外逃亡中のタクシン元首相の来日に尽力した氏だが、昨年、京都の自宅で就寝中に、何者かに襲われ負傷する被害にあった。「タイの軍事政権が関与している」(米外交筋)との説が有力である。

 さらに、スキャンダルが暴露される背景には、王位継承の事情もありそうだ。タイは王位継承に関し、日本と同様、男系の長子優先であるが、国王が後継者を指名することもでき、女王が誕生する可能性がある。

 先述のヌードパーティの動画流出には、当時皇太子だった彼を、国王に就かせまいとする勢力の仕業だという説もある。その勢力とは、当時、国王の後継者として国民に人気の高いシリントーン王女(65)を推す一派だ。現国王の妹であるシリントーン王女は庶民派として知られ、国父と称えられたプミポン国王の事業を全面的に支援、活動を共にしてきた。ちなみに未婚である。

 現実問題として現国王には3番目の妻との間に生まれた男児がおり、彼が後継者として考えられている。しかし、国王には女性スキャンダルを始めとした暗い影が取り沙汰されている。“世界一の資産”を巡り、現国王の流れを王室が継承していくことを快く思わない勢力もいるのだ。

 タイでは5月2日から3日間にわたり国王戴冠1周年を祝う記念行事が予定されていたが、国王はドイツで自主隔離中のため、欠席。母国を顧みない国王によるこうした行動は、王本人や王政、背景にある軍事政権へのタイ国民の怒りをあぶり出した。タクシン派と反タクシン派、さらに親国王派・反国王派の複雑化した対立構図も渦巻く。5月21日には、5月末までとされていた非常事態宣言を1ヶ月延長する方針が明かされた。これについても、感染拡大防止を建前に軍事政権は反政府活動を抑え込もうとしている、との見方もある。

コロナ禍が今後のタイの民主主義復活にどう影響するか、予断は許さないだろう。

末永恵(すえなが・めぐみ)
マレーシア在住ジャーナリスト。マレーシア外国特派員記者クラブに所属。米国留学(米政府奨学金取得)後、産経新聞社入社。東京本社外信部、経済部記者として経済産業省、外務省、農水省などの記者クラブなどに所属。その後、独立しフリージャーナリストに。取材活動のほか、大阪大学特任准教授、マラヤ大学客員教授も歴任。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月27日 掲載



cha***** | 1時間前

王室に敬意を払うタイ国民が批判するんだから、それだけのことということだろう。先代はすごく尊敬されていたが、今の国王は就任時にも脂質に疑問を持つ人もいたようだし・・・。

返信0

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yunkun13 | 56分前

街のあちこちに国王の写真がある国、国王を尊敬していると口を揃えて話していたのが懐かしい。
この国も変わる時が来た。人徳のある人が国王就任すると限らないのはどこの国にも言えるから

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ten***** | 34分前

列強から独立国家としてタイ国を守った、故プミポン国王の最大の不思議な決断は、後継者の選考にあったと思う。現国王の奇行は以前から海外に知られることであり、国王の職務を務める事は、無理な事は誰しも言わないまでもわかっていたと思う。私は今でも本当に不思議な決断だったと思う。

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cby***** | 1時間前

東南アジア諸国で感染者や死者が世界各国よりも比較的少ないのは、やはり高温多湿が関係しているのかな。日本もこれから梅雨に入って真夏へと移り変わる中で感染者数も減っていくだろうけど、秋から冬にかけてまた感染が拡がりそうだ。
今は洗えるマスクで凌いで、不織布のマスクは温存しておこうと思う。

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bch***** | たった今

ワチラ、国王就任以来2年間静かに王位継承なんてできるわけ無いと思っていたが、ついに発覚したか、
即位までのオンナグセや、王室の財産はほしいが王位にはつかないとか、タンクトップ事件とか、必ずまたやると思ってたが、
案の定やってたな
タイ国民による厳格な処分が必要だ。

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sed***** | 21分前

超絶わがまま坊ちゃん王は中国のラストエンペラーを彷彿とさせる。

まず、周りが見えないか見えなくさせられている、 軍部となぁなぁ、守ってもらう代わりに好き放題

「微笑みの国タイ」は実は軍事傀儡政権である事は有名

王室批判すると秘密警察に逮捕されるとも聞いています

本当は怖くて逃げ回っている弱虫国王なんでしょうね。

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tjm***** | 32分前

思わず調べて空港やパーティの写真見てしまった。 浮世離れしてるんだろうけどこのファッションセンスはどこから? 場所違えれば 警官がくるレベルだ!

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cnc***** | 1時間前

日本の皇室もどうなるのだろう。

男子継承優先ではなく、尊敬されるひとに継いでいただきたい。

憲法では主権は国民で天皇陛下は国民の総意でとなっているのだから。

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yam***** | 28分前

国王が、必要なのか?
国王の資産は、国民からの長年の搾取だろう。
国に没収して、象徴国王が良いと思います。

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chi***** | 15分前

タイって発展途上国としていろんな援助うけてる? 
国王が税金を吸い上げすぎなんじゃないか? 不敬罪なんてなくしてもっと国王らしい生活させれば国も発展すると思う。



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