がんで余命2か月の38歳女性 夫に「本人には伝えないで」と頼まれたが…
10/10(木) 12:13配信
読売新聞(ヨミドクター)
鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」
10歳の娘がいる38歳の女性患者。明るい性格で、下町で夫と営む文房具店を切り盛りしていた。2年前に大腸がんと診断され切除手術を行い、その後、抗がん剤治療を続けてきた。手術後1年たった頃から、腸閉塞に何度か見舞われ、がんの再発も見つかり、入退院を繰り返すようになった。夫は夕方の数時間、店をアルバイトに任せ、子どもと共に面会に訪れることが多かった。子どもには「お母さんのおなかのなかにある悪いものを取った」と説明していた。
主治医は、がんが再発したこと自体は患者に伝えていたが、夫から「深刻なことは妻に言わないでほしい」と頼まれていた。
引き続き行った抗がん剤治療の効果はなく、腫瘍は大きくなり、全身状態も徐々に悪化していった。主治医は看護師同席のもと、「予後は2か月程度で、緩和医療を中心にしていくのがよい選択だろう」と夫に伝えた。そして、「これからの大切な時間の過ごし方を考えるためにも、奥さんに今の病状と予後について伝えたほうがよいのではないか」と提案した。しかし、夫は考えを変えず、「妻には黙っていてほしい。そんなこと聞いたら落ち込んでしまう」と強く要請した。
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「伝えないままでは、家族との大切な時間を過ごせない」
担当の看護師は、患者に判断能力があることから、「予後を伝えないままでは、子どもや夫と過ごす大切な時間を逃してしまう。子どもにしてあげたいこともあるかもしれない」と考えました。つらい現実を伝えないことが、本当に患者にとってよいことなのか……。生命倫理の授業で、大学院生(看護師)が語った事例です。
担当看護師は、自らも同年代の子どもを育てており、日ごろから患者とお互いの育児の話をするなど、良い関係を築いていました。実際、患者は「治療ができないって言われちゃうと、『あきらめられた』と思ってしまうから、最期まで言わないでほしい。希望を残してほしい」と話してくれました。この患者の言葉をうけて、医療チームは余命を本人に知らせず、「苦痛の緩和を最大限に行い、状態が改善したら治療を再開しよう」と伝えたそうです。その上で、患者が、子どもや夫が面会に来る時間に、身体的にも精神的にも良い状態でのぞめるよう、薬剤やケアを調整していきました。
余命の予測は不確か
「予後」とは、病気や手術などの経過や終末についての医学的な予測、または病気が治癒した後の経過を意味します。「余命」は、これから先、死ぬまでの命の長さを意味します。予後という言葉自体は、一般の人にとってなじみが薄いでしょう。がんのステージや転移の状況などをふまえた「病気の見通し」という意味で使う場合もあれば、このケースの主治医のように「2か月程度」などと、余命の意味で使う場合もあるようです。
余命の予測は不確かで、実際はそれを上回る場合も、その反対もあります。しかし、患者や家族にとって余命という言葉は、大きな衝撃をもたらし、かつ確定した情報であるかのように伝わってしまう懸念があります。
授業では、四つのポイントについて話し合いました。
(1)夫の「妻に黙っていてほしい」という理由は何なのか
なぜ夫は、余命を本人に伝えないでほしいと頼んだのでしょうか。妻と生活を共にしてきた経験から「妻には現実を受け止めるのは難しい」と思っているのか、それとも、妻本人が「知りたくない」と思っていることをキャッチしているのか、など。いま夫は、仕事も子どもの世話も一人でがんばっている状況で、これから先の生活に不安を感じ、子どもとの向き合い方に悩んでいるかもしれません。子どもへの支援を並行して考えていくことも大事で、病院によっては「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」(CLS:Child Life Specialist)(注)がいて、親などががんと診断された時から、子どもの支援にかかわっていくことがあります。
(注)医療において子どもと家族が困難な状況に直面したときに、子どもの発達やストレスへの対処をふまえ心理社会的な支援をする専門家
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(2)患者は余命について何も感じとっていないのか
がんが再発したと聞いたら、皆さんはどのように感じるでしょうか? 平静ではいられないかもしれません。自分の命の長さについても、意識せざるをえないと思います。
この患者に関しても、「自分の余命がそう長くはないことを、まったく感じ取っていないなんて、そもそもあり得るのだろうか」と議論になりました。自分の病名や再発については、医師から説明されており、身体の状態が悪くなりつつあるのも身をもって感じていることでしょう。「余命を伝えなければ、患者は何も感じとっていない」という前提は、疑う必要があります。
(3)余命を伝えた方がよりよい時間を過ごせるに違いないのか
看護師は、「余命を伝えることで、子どもや家族と有意義な時間を過ごすことができた」という例をいくつも経験していたため、「伝えた方が患者にとってより良いに違いない」と思い込んでいるのではないか、という指摘もありました。
たとえ長く入院している患者であっても、看護師がすべての行動を知っているわけではありません。このケースでも、患者なりに子どもとの過ごし方を考え、意識して「大切な時間」を生きていたのかもしれません。看護師は、余命を知らないで過ごすのは患者にとって不利益だと考えていますが、大事なのは、限りある時間を、その人らしく過ごすことです。また、不確実である余命を伝えることが、患者や家族に与える影響も十分考慮しなくてはなりません。
(4)何のために余命を伝えるのか
最後に、授業では、「余命を伝えるか、伝えないか、という二者択一で物事を考えがちであることも、大きな問題ではないか」という話になりました。
大事なのは、伝えるか否かではなく、患者が自分らしく生きることを支援すること、つまり、患者の希望を最期まで大切にし、患者のQOL(生活の質)の向上を目指すことです。予測される身体症状、抗がん剤治療の中止、緩和ケアの希望、最期はどこで迎えたいのかなど、終末期にかかわる話し合いを進める中で、「余命の伝え方」も検討されるべきでしょう。
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読売新聞社
鶴若麻理(つるわか・まり)
聖路加国際大准教授(生命倫理分野)、同大公衆衛生大学院兼任准教授。
早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講予定。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)がある。
しょこ***** | 2時間前
父は体調不良で大きな病院にかかってたまたまガンが見つかりました。
本人に告知するかは家族と相談しますと言ったのに、席をはずしたときに医者が告知しちゃったんです。
その医者、謝るどころか自分のポリシーだと正当化しましたよ。
結局治療のかいなく緩和ケアに移ることになったときは、緩和ケアの先生に絶対に余命は言わないでくれと何度も頼みました。
ガンの告知を受けたときの父の焦燥っぷりをみてられなかったから。
余命を知った方が残りの人生を充実させられる人もいれば、父のように絶望してしまう人もいます。
こういうことは医者が決めるのではなく、家族が決めていいと思います。
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tom***** | 26分前
消化器内科勤務の時に一番辛かったのは「患者の死」でしたがその中でもガンの告知から死までの流れで やはり家族によっては本人に告知しないで欲しいと願う方もいたり 医師が本人と家族へすんなり「癌です」と言ってしまったことで問題になったり…
でも抗がん剤を使用するには原則本人への説明が必要で末期でも初期と説明したりはありましたが 初めはかなり落ち込むけれども 病気を受け入れ、今のうちにやりたいことなど前向きに考えると「がん患者の看護」の教本に載っている通りに患者は変化し 最期は思い残すことなくとか 覚悟ができて亡くなられるのをみて 頑張ったね!と思うことが多かった気がします…
でも人それぞれで十人十色 難しい課題です、、、
sal***** | 2時間前
我が家は両親が同時期に癌になりました。
これまで色々話し合い、全て話して欲しい、
延命治療はいらないと確認しあってきました。
先日、母に病状を伝えましたが覚悟が出来て
いたようでした。
ただ、この記事のように患者さんが若いと
話し合う機会もないしお子さんがいるので
夫さんの負担を考えると難しいです。
tenntenn | 22分前
母は、3ヶ月の余命を知らされないまま、9ヶ月頑張った。
半年、一年の余命なら、計画的に手紙を出したい人には手紙を出し、会いたい人には会い、行きたい場所には行き、食べたいものを食べ、小さな孫を誰にも遠慮なく抱き締められるように、余命を伝えただろうが、やりたいことを全部やるには3ヶ月では時間が無さすぎると判断した。
完治を信じた母は、孫のために、激痛を伴う治療に時間を費やした。自宅に戻る度に吐血し漏尿し惨めな思いをさせた。
骨転移で真っ黒なレントゲン写真を見たあとに向かった病室で、余命を伝えていない母を、泣きながら見舞ってしまった。
お母さん、やりたいこと、たくさんあったよね。母の死の10日前に産まれた二人目の孫にも、たくさんお手紙を残してくれたはずだよね。子供や孫がこんなに愛しい存在であることを、若かった自分には、まだ分からなかった。
お母さんの最期をメチャクチャにして、ごめんなさい。
mcn***** | 51分前
義父のケース。
主人、義兄(婿)、私は余命を把握、義父、義姉(娘)、義母は末期の癌だとさえ知らされず。
何度も私は言うべきだと伝えたのですが、あの人達にこの時期を過ごすのは無理だとの主人と義兄の判断のまま看取りました。
はい、かなり責められましたよ。
義姉は、それならお父さんともっと過ごしたかったと。
義母は、私は平気でおれんかったから、それで良かったわ〜とは言ってましたが。
けど、誰もが本人に言ってない事は触れず…
けど、義父は長くないとは分かってたと思います。
泣いてた?って事もありましたから。
家族にバレない様に普通に振る舞う、最後の最後まで。
義母は、お父さん、知らんで良かったな〜って言ってますが、いえ、あなた方の為に知らないふりをしてたんだと思います…って心の中で叫びました。
今となって残された人がそう思えるのなら、それが義父にとって一番だったのかな…と思えてきました。
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awr***** | 52分前
この場合で言えば再発、症状が悪化を身をもって感じることができているので、ご本人が余命を知ろうと思えば問い詰めることもできる状況と考えまので伝えるべきだとは思えません。また、伝えることがすべて良いとも思えません。絶望する人もいるからです。余命としてかなり時間がある場合、体に事由がある場合には伝えても良いかもしれません。ただ、お年寄で体の自由が利かない場合は、その限りではないと思います。
ネコノメ※※※ | 3時間前
母はずっと喘息だと言われ薬を飲んでいた。私や弟が喘息なので、薬が効かないのはおかしいから病院を変えてくれと頼んだ。
大きな病院に行き、血液検査でその日のうちに余命1週間…。
言われても本人には告げられなかった。
1週間、母だけでなく私たち家族も頭が追い付かない、とても短い時間。
頭を整理するだけでもあっという間に過ぎる時間。
抗がん剤、無菌室とニュースやドキュメンタリーを見ていたら想像がつくとは思うけど、本人は何も言わず頑張った。母は余命宣告を知らないまま一生懸命戦い半年生き抜いた。
わずかな外泊では、私の成人式の準備や一緒に旅行先も行った。
その後意識がなくなって話すら出来なくなった。
言えなくて申し訳ないという気持ちもある。だけど、考える時間がなかった。1週間って言葉に翻弄されたのかもしれない。
bel***** | 1時間前
昔は告知するかしないかという話はよく聞いたけど私の母親は普通にガンを告知されてから手術後2年で転移、ステージ4になって使用できる抗がん剤の選択肢がなくなった時ホスピスを紹介されたので今は本人の意思と関係なくもうそういう流れなのかと思っていました。本人としてはどちらが良かったかは分からないけれど、見送った側としてはもっとしてあげられた事があったのではないかと後悔ばかりです。モルヒネで意識朦朧としてる中『私は良かったよ』と言っていた事を一年たった今でも思い出します。
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viv | 4時間前
⁇。不思議だなあ。私の病院では、余命含め患者の病状は個人情報なので本人の許可がない限り家族にだけ伝えることはないって、1番最初に言われたけど。
奥さんが「自分は知りたくない」とでも病院側に伝えてないとこの記事のような状況は起こらないと思うけど...
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ftz***** | 1時間前
私は、ステージ4の罹患者で、先の見えない治療を続けてますので、ぜひ余命は告知して欲しいです。
と言うか、知る権利が有っても良いのではないでしょうか。
終わりの見えない治療をダラダラ続けられるより、患者本人の治療方針の希望を伝えることができると思います。
ius***** | 3時間前
13年前に私も主人が余命宣告を受ける大腸がんに犯されました。
主治医は本人に告知するかしないかは奥さんに任せますと仰った。
めっちゃ悩んで考えて苦しみましたが、私は言えませんでした。
もし私ならと考えた時に完治しない病気の為に
抗がん剤のキツイ治療や色々な辛い治療を受付中たくないと思ったからです。
途中から主治医は『ご主人にも知って貰って覚悟をして貰った方が奥さんも楽ですよ、此のままだと最後迄奥さん1人で抱え込んでしんどいですよ。』って仰って下さったけどそれでも告知は拒否しました!
何故ならガン告知を受けた時に病院の長ベンチで人目もはばからずに背中を丸めて泣いてた主人に
余命宣告なんて出来ないと思ったし私が出来る主人への最後の癒しだと思ってたので…。
全部私のエゴかも知れないけど私にはそれしか出来なかったです。
xgf***** | 2時間前
実母と叔母を癌で亡くしました。
実父は、亡くなっていて、叔母も家族がいないので、私が最期まで看取りました。
母は常日頃、余命わかったら死刑をまつ囚人と一緒だよなんて話していたので、癌とは言いませんでした。叔母もしかりです。
結果、亡くなる少し前まで、普通に過ごせたので私は後悔していません。
助かる見込みがあるのなら告知は賛成ですが、安楽死が認められない日本では、自分には耐えられないと思います。
mar***** | 2時間前
うちの父親はあっさり告知されましたよ。肺がんステージ4だと。「あぁ、今は家族に相談しないんだ」と少し驚きましたけど、これって告知しないでどうやって治療するんですか?抗がん剤や放射線治療など患者に説明すると思うんですが、嘘の説明するんです?