狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

埋蔵箱

2009-02-05 21:52:18 | 怒ブログ
            

所用があって、町内のYさん宅を訪問した。
所用といっても俳句会の月例会報を届けるだけである。丁度Yさんは、庭先の建て替えたばかりの車庫前で、何か片付けごとをやっていた。会報を渡して、すぐ帰ろうとしたら、
「物置の中から出てきたものなんだけど…。」と相談を持ちかけられた。
「埋蔵金?」
「そんなもの有るはずがないわ。」
 拝見すると、埃の集った昔の茶箱である。
 開けてみると、古い新聞紙に包んだ漆塗りのお椀のセットが詰まっていた。
「主人は早く棄ててしまえというのですが、勿体なくて…。でもどうしようもないし。誰か貰ってくれる人はないでしょうか?」
 昔は、(約半世紀近く前のことだろうなあ。)冠婚葬祭は、みな自宅でやったから、こういう漆器やお膳が何組もセットになっていて、組合や個人の所持品として土蔵のある家に保管して置いて貰ったものである。漆器の裏にY家の屋号が記されていたから、個人の所有物である。Yさん宅はおそらく大尽どんだったのだろう。 茶箱(お茶を作る農家も大尽どんに限られていた。)がしっかりしていたから、塗りは全く剥げたところはなく、まだ新しかった。
「埋蔵金」や仏像が盗まれる世の中なんだから、盗んでくれる人がいないかなぁと二人で笑ってしまった。

 古新聞は、沖縄返還交渉佐藤首相訪米の読売新聞だった。だから、入ったいたのは1971(昭和46年)頃の世相である。
 この時の交渉で、沖縄の祖国復帰の見返りに、本来米国が支払うべき土地の復元費用四百万ドル(当時の換算で約十億円)を、日本が肩代わりする密約があったとされている。
 当時の十億円は現在の兆単位の金額になるのではないだろうか。密約とは公開されないことが原則であるから、この費用も埋蔵金で支払われたものではないだろうかとふと思った。