狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

越乃寒梅物語抄

2005-08-01 16:04:15 | Weblog
むかし広島に一人の勇ましい「やまと女性」がお生まれになりました。むかしと言っても伊邪那美命ほど遠い昔ではありません。昭和の御代のお話です。

ところで突然お訊ね致しますが皆さんに中に、『越乃寒梅』といわれて何のことかお分かりにならない方がおありでしょうか。
多分ないでしょうね。このお酒を初めて「酒」という趣味の雑誌に紹介したのがこの「やまと女性」だったのです。昭和42年のことです。古いでしょう。

《-たまたま2ヶ月ほどまえ、味わい深い純米酒を知ったのがきっかけで、私は各地の銘酒を捜し始めていた。新潟の酒造組合に雪の中訪ねて行ったのも『越乃寒梅』という酒をつくる石本省吾蔵元に紹介を頼むためだった。『越乃寒梅』といえばいまでは名酒の代名詞になったが、10年前は知る人ぞ知る〝幻の銘酒〟で、私もまだ飲んだことがなかった。》(日本の銘酒・稲垣真美 新潮選書 昭和59年発行)というような時代です。

このお酒は今ではボクたちだって購う事は容易ですが、《贋物を作って1升(1.8㍑)1万5千円といった高値で売る輩も出てきた。本当に情けない話である》(私の放浪記 法藏館 平成10年)でお分かりになると思いますが、新潟にコネでもなければ手に入らないように有名になってしまったのです。

そのころボクはまだ、この趣味の雑誌「酒」の実物を見たことがありませんでした。たまたまあるとき、親戚筋の葬式の斎場の忌中払いの折、隣り合わせた人が東京奥多摩の酒蔵(東京に酒倉があったんですねえ)の製造部長で「酒」誌を何部か持っているというお話を聞き、後日その1部を頂戴することが出来たわけです。それは彼が「酒」編集長との対談の記事が載っているものでした。

それまでボクは「酒」は鎌倉書房あたりから発行されているものとばかり思っておりました。実物を手にとって見ましたら「酒発行所」というこの勇ましい「やまと女性」の個人発行所の雑誌でした。

さてさて、広島出身の彼女は当時万年Cクラスに低迷していた「広島カープ」プロ野球球団に大きな喝を入れました。
「広島カープを優勝させる会」を結成したのです。
物語は「太陽が西から上がっても、カープが優勝するなんて絶対ありえない」と馬鹿にされていたカープが昭和54年リーグ制覇・日本1の座を手中に収めたという筋書きなのでありますが、この物語の主役むかしむかしのお方こそ後の高名な佐々木久子さんであります。

なお「酒」誌は平成9年から休刊になっております。
《鯉幟昭和も古くなりにけり tani》