呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

委託貸付の返済遅延が増加

2015年10月25日 | 日記

 中国では委託貸付という制度があります。貸金を行うことができるのは金融業者だけであり、非金融業者が単独で資金を融通することができないため、間に銀行を挟んで資金を融通する制度です。A社がB社に対して資金を貸し付けたい場合、A社が資金を銀行に預けて、B社は銀行から借り受ける、実質的にはA社からB社に貸し付けるのと同じことになります。私が銀行にいたころは関連企業間で行われるのが大半でしたが、あるころから非関連企業間でも行われるようになってきております。そして、中国企業間だと金利設定も10-18%程度とかなり高く設定されているのが一般的のようです。

 

 こんな高い金利で資金調達するくらいですから、調達企業は銀行から直接融資を受けることが難しい企業が多く、業種としては不動産業が多いです。2014年上半期で、上場企業だけでも国内委託貸付は2.51兆元で前年比100%も伸びています。そして、社会融資総規模(実体経済が金融体型より獲得する全資金総額)の中で、昨年の委託貸付の増加幅は商業銀行の人民元貸付規模の30%程度で、いわゆるシャドーバンキングの26%を占めると言われています。


 そして最近この委託貸付の返済延滞が増えているようです。実質的には企業間貸付ですが、間に銀行が介在してしまっているため、延滞した場合銀行が取り立てのお手伝いをする必要も出てきます。上述したように委託貸付で資金を借り受けるのは不動産業が多く、自ずと資金ボリュームも大きいので、不動産市況がおかしくなるとその影響も相応に大きくなるでしょう。過去にも委託貸付について書いたことがありますが、古いのは2008年に書いてます。不動産バブルもずっと言われてますが、この7年間無事でいられて、なおかつまだ値上がりしている物件があるという現象もすごいですね。


(参考:過去記事)

http://blog.goo.ne.jp/gomeiken/e/6da6f406e0b1be0156d9b6f1e7d29372

http://blog.goo.ne.jp/gomeiken/e/ff6a09a814d0ccfddc10a8865a122a18


中国の就業人気業界はインターネットと金融

2015年10月25日 | 日記

 CIERという指数があります。就職市場の良しあしを測る指標です。その指数の計算式は、

 CIER指数=市場募集ニーズ人数/市場求職申請人数

 つまり、この指数が1より大きいとき、就職市場は求人が多いということであり、1より小さければ就職難ということになります。下の表を見てみましょう。青線が求職申請人数、オレンジ線が募集人数、数値がCIERです。時間軸で右から3つ目がなぜか20111Q1となっていますが、これを無視して見る限り、2011年の時点と比べると大幅に上昇、ここ最近は下落傾向ということがわかります。

 

 

 

 これは2015年のホワイトカラーの一人欠員あたりの履歴書を受け取る平均数量の推移です。どんどん増加してます。相も変わらず転職希望者が多いのでしょう。

 

 

 業種ごとに数値の違いを見ていきましょう。求人が旺盛なのはインターネット、ファンド/証券、保険、教育、不動産、仲介サービス、物流、財務会計/法律、交通、農林牧漁と続きます。インターネットと金融の人気が高いです。中国不動産バブルがやばいと言われてもうかれこれ10年以上になるかと思うのですが、いまでもなお求人は旺盛ですね。一方で、求人が旺盛ではないのが、会計/監査、エネルギー、航空、リースサービス、電気、オフィス用品、検査/認証、学術/科学研究、物業管理、反響保護と続きます。

 

 

 募集ニーズの高いインターネット・Eコマース関連はなんと求人ニーズが65%も伸びており、Eコマースの勢いを感じさせてくれま

 

 企業規模別のCIER指数を見ていくと、零細企業ではその伸びが52%と最も多きく、指数自体は小企業が最も高く、起業規模が大きくなるほど小さくなっています。中小企業の人材不足は中国でも同じようです。

 

 

 以上を見る限り全体的には就職しやすい状況といえますが、個人的には人件費コストとそのパフォーマンスが釣り合っておらず(もちろんちゃんとこなしている人もいることは否定しません)、こちらの改善が望まれます。急成長している時期は人材の取り合いになるので人件費コストとそのパフォーマンスが釣り合わないケースが多いのはわかるのですが、CIER指数が伸びているとはいえ成長スピードも落ち着いてきた最近ではそろそろ人件費コストとそのパフォーマンスが程よくバランスする方向に移っていって欲しいものです。


(資料出所:中国経営報)