呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

中国の喫煙族、受難の時代へ

2015年06月26日 | 日記

 中国の宴席の場でやたらと乾杯する光景はおなじみですが、たばこを相手に勧めるのもこれまたおなじみの光景です。こういう文化背景もあってか喫煙人口は非常に多いです。中国は世界最大のタバコ生産国であり消費国です。世界の喫煙人口のうち約3割が中国人といわれており、喫煙者人口数は3億人を超えています。15歳以上の喫煙率は28.1%で、男性だけだと52.9%にも上ります。たばこを吸わない男性のほうが少ないのです。

 

 このようなたばこ大国でありながら、最近では建物内禁煙というビルも増えています。しかし果たしてそれが徹底されているかというと疑わしいのが正直なところです。禁煙ビルでありながらトイレがたばこ臭い、禁煙シールが張っているレストランでありながら、灰皿はちゃんと用意されている、こんなダブルスタンダードが散見されるのです。

 

 しかし、このような現状を大きく揺るがす《北京市喫煙管理条例》という通達が北京で発表され、この6月からスタートしています。その中身はこのようなたばこ大国の現状を根本から揺るがせる内容となっています。

 

 まず、喫煙が禁止される場所として、公共場所、勤務場所の室内エリア及び交通工具内、そして次の公共場所、勤務場所の室外エリアも対象となっています。①幼稚園、中小学校、少年宮、児童福利機構等の未成年が主要活動群となる場所、②社会に対して開放している文化財保護単位、③体育場、健身場の試合エリアと座席エリア、④母子保健機構、児童医院、禁止される行為として、①放送、映画、テレビ、新聞、定期刊行物、図書、AV製品、電子出版物、モバイル通信、インターネット等の大衆メディアを媒介してたばこ広告を行うこと、②公共場所と公共交通工具にたばこ広告を設置すること、③屋外でたばこ広告を設置すること、④各種形式のタバコプロモーション、冠名の賛助活動、そして列に並んでいる場合も喫煙してはならないと定められています。喫煙者が上記のルールに違反した場合、最高で200元の罰金が科されます。

 

 また、喫煙禁止場所の経営者、管理者はその場所で喫煙道具を提供してはならず、たばこを吸う人がいる場合、それを咎め、それでも聞かない場合はその場を離れることを要求することまで定められています。これをちゃんとしないと5000元以上1万元以下の罰金が科される。なお、教師は中小学生の前で喫煙してはならないことまでが定められています。

 

 冒頭で喫煙男性がかなり多いと紹介したばかりですが、周りを見る限りどうも若者男性、特にスマートな雰囲気を持つ若者男性が喫煙率は上の世代よりもかなり低いように思えます。健康に対する意識も以前より強くなってきています。若い女性から見て中年男性が喫煙するのはしょうがないと思いつつも、若い男性がたばこを吸うことに対してはよい印象をもっていないことにも起因しているのかもしれません。

 

 これだけ喫煙環境が制限されると、これを機会に禁煙しようという人も出てくるのではないでしょうか。禁煙は何回でもできると言われているように、一回で終わらせることができない人が多く、自ずとリピーターも多くなります。まして、これだけの喫煙人口です。北京と同様の動きがおそらく今後地方でも見られるようになると思われ、そうなると禁煙グッズに対するニーズが急上昇することが十分に考えられるのではないでしょうか。果たして北京と同様の動きがどこまで拡散されるか、そしてそれを受けてどれだけの喫煙者が禁煙することになるのか、この動きを予想するのはなかなか興味深いですね。